MUSIC 2021.01.27

[Interview]Snowk
新雪のダンスミュージックは儚く舞う
ベテランふたりが挑む新時代へのニューステップ

Photography_Ryuichi Taniura, Text_Keita Takahashi
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

SnowkYutaka Takanami a.k.a NamyFuminori Kagajoによるクラブミュージックユニットである。ハウスミュージックの分野で長く活動したふたりの新たな試みは、両者が育ってきた雪国のヴィジョンを現代的なダンストラックの枠組みに落とし込むということ。2019年、2020年とシングルリリースに集中してきた彼らは、パリのKitsuné Musiqueとのライセンス契約などを経て、2021年、満を持してのアルバム『Powder』をリリースする。本作ではJ.LAMOTTA すずめ、J.O.Y、Lee Wilson、Froyaら気鋭のシンガーを起用し、叙情とポップネス、そして現代性を掛け合わせた充実の成果を聴くことができる。世はストリーミング全盛の時代。すでにベテランと言っても過言ではないふたりがどのようにこの音楽聴取スタイルの過渡期をサバイブしたのか。EYESCREAMによる独占インタビューをお届けしよう。

-まずはSnowk結成に至る経緯から伺おうかなと。どのようにおふたりが知り合って、このプロジェクトを進めていったのか教えてください。

Fuminori Kagajo:Namyさんとはもともとハウスミュージックのフィールドで知り合って。おたがい海外に向けてクリエイティヴな作品をリリースしていくっていう志しの部分で存在を認識し合ってたという感じですかね。で、Namyさんからイベントへの出演オファーがあり、初対面。その後、2018年に僕からも地元である札幌で開催するイベントへのオファーをしたんです。でも、そのイベントが吹雪で直前に中止になってしまって。それで偶然ではあるけど、ふたりで何時間も膝を突き合わせて話をしたんです。そのなかで生まれたのがSnowkのアイデアでした。いまだからふたりが表現できる音楽があるんじゃないかと。おたがい雪国出身だし、雪が持ってる儚さや哀愁だったりを、ハウスミュージックをベースにせず、もっといろんな音楽のファン層にアプローチできるユニットをやってみようという話になったんですよね。

Fuminori Kagajo

Yutaka Takanami:そうですね。そこから僕が住んでいる新潟と彼の住んでいる札幌間でオンライン、週1回ペースでミーティングをして。

-Snowkにおいてのおふたりの役割分担は?

Fuminori Kagajo:全体の舵取りはNamyさんですね。僕らもまぁまぁいい年齢なので、信頼できるところは100%任せるという感じ。そういったおたがいの信頼関係ができていて。なのでNamyさんのディレクションに沿って、僕がさらにイメージを付け加えていくという流れで作っています。

-“ハウスミュージックをベースにせず”とお話しされてましたが、それはより現代的なダンスミュージックにフォーカスを当てるということでしょうか?

Yutaka Takanami:はい。ふたりともネオソウルなんかも好きだったので、若い世代のR&Bシンガーをフィーチャーした楽曲などもやってみたいなと。ただ、彼/彼女らにいきなり“ハウスで歌ってくれ”と言っても、なかなか乗せづらいと思うんです。だからもっとBPMを落とした曲だったらすんなり歌えるんじゃないかなという。

Yutaka Takanami

-それこそニューヨークハウス……ソウルフルな歌ものハウスの旨味を通ってきているがゆえに、現代でハウスをやる難しさも同時に感じているんじゃないかなと思っていて。

Yutaka Takanami:まさに。それは仰る通りですね。

-となると、Snowkの音楽性に関して、具体的にリファレンスになるようなジャンルやアーティストはいたんでしょうか?

Fuminori Kagajo:強いてアーティストを挙げるとしたらSG Lewisとかかな。

Yutaka Takanami:あとは自分たちが契約しているフランスのレーベル、Kitsuné Musiqueに所属している若い世代のアーティストたちと情報共有したりしていて、そういうところから受けた影響はあったかもしれません。

-ちなみにKitsuné Musiqueとはどういう経緯で契約に至ったんでしょうか。

Yutaka Takanami:僕らがはじめて作った「Catching Feels」というシンガポールのMARICELLEっていうボーカリストをフューチャーした楽曲をKitsunéのスタッフが聴いてくれたらしく。おそらくSpotifyの“Fresh Finds”という70万人くらいがフォローしているインディーズのプレイリストにピックアップされたので、そこから聴いてくれたんだと思うんですが。それでSoundcloud経由で直接メールが来てそのままリリースの話、という感じで。

-おふたりともキャリアがあるので、Snowk結成以前からあるコネクションだったのかと思いきや。

Yutaka Takanami:そうなんですよ。デビューからいきなりだったので、すごく不思議というか。でも海外のA&Rたちは常々新しいアーティストをチェックしていて、楽曲さえよければすぐに声をかけるってことをやってるんだなって。

-Snowkのスタイルを考えたときにボーカリストの選定というのはかなり大事な作業なんじゃないかなと思っているんですが、その点においての必須条件はありますか?

Yutaka Takanami:なんだろうなぁ。もちろんトップラインのよさというのは前提で、Snowkらしい哀愁感を具現化できるシンガー……儚さや気だるさみたいなものを持ち合わせてるシンガーをピックアップしてる気がしますね。加えて、洗練された都会的な雰囲気も持ちながら、あんまり粘っこくなく、サラッとしてるけど印象に残るR&Bをやってるアーティストが好きなんですよね。で、いいと思ったらそこから直接コンタクトを取って、僕らのトラックを聴いてもらう。そこを経て、おたがいにリスペクトできるとなれば制作をはじめる、といった流れですね。もちろん振られるケースもあるわけなんですが。

-楽曲の制作工程の話も伺いたいと思います。Snowkでの制作はどのような過程を通過して完成に至るんでしょう。

Fuminori Kagajo:もちろん楽曲によって違いはありますが、ボーカリストを最初に選ぶというのが多いパターンかもしれません。その打ち合わせをして、そこからどういう方向性のトラックを作ろうかという話をする。その方向性に沿って僕がデモを投げて、って感じでブラッシュアップしていきます。ある程度完成したタイミングでそのデモをボーカリストに聴いてもらって。で、そこからボーカリストとのやり取りを経て、最終的にミックスエンジニアにお渡しするという流れですね。

-その意味で今回のアルバムにおいて難産だった楽曲を挙げるとするなら?

Fuminori Kagajo:やっぱりJ.LAMOTTA すずめさんとの“Under The Moon”ですかね。ここでSnowkのスタイルがひとつ見えたというか。どんなスタイルを提示するかという点ですごく試行錯誤した曲だったと思います。時間もかなりかけて作ったぶん、自分たちの手応えもすごくありますね。

Yutaka Takanami:そうですね。彼女も普段だったらジャズヒップホップ系のトラックでやることが多いけど、“Under The Moon”はよりエレクトロニックで、フューチャー感のあるダンストラックだったので。で、それを彼女自身も新鮮に感じてくれたので、ある種の化学反応が生まれたのかもしれません。

-おふたりがSnowkで制作するにあたって、このユニットだからこそできるニューステップみたいなものは具体的になんだったと思いますか?

Fuminori Kagajo:すごく極端な言い方をすると“いかに個性を出さないか”という点ですね。僕らはソウルやブラックミュージックがベースになってたりするんですが、そこをアピールしすぎちゃうとSnowkっぽくないなっていうのは共通認識としてあって。そういうルーツや影響は滲み出る程度に抑えたほうがいいんじゃないかなと。それは同時にすごく苦労する部分でもあるんですよ。ちょっと油断するとハウシーなものを作っちゃうんで。そこのディレクションはNamyさんが客観的にしてくれるので助かってます。いかに自分たちのバックグラウンドを見せずに感じてもらうか、というのが自分のなかでは新鮮だったなと。

Yutaka Takanami:そのあたりは自分もだいぶ意識していると思います。Snowkとして目指してるところは上音やボーカルをうまく聴かせつつ、あまりキックやベースの印象に持っていかれないという楽曲性かなと思うので。それはこれまでやってきたハウスミュージックのセオリーから考えるとつねに実験しているような感じというか。

-アルバムを聴いて、自分もニューヨークハウスの明快さの部分……それはメロディーや音色からだと思うんですけど、そういったものを感じていて、いま仰ったことに膝を打ちました。ちなみにおふたりはハウスのフィールドを長く見てきているわけで、その観点から現状のダンスミュージックの流れに対してどのような所感があるのか気になっていて。

Fuminori Kagajo:これはDJとしてもクリエイターとしても感じることですが、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの中間が厚くなることが業界全体の活況につながるなということは常々思っていて。クラブミュージックにおいてはここ10年くらい両極なケースがすごく多いなと。

-そうですね。オーバーグラウンドはEDM、アンダーグラウンドではダークなテクノ、みたいな。もちろん中間はなくはないけど、やはり全体の割合でいうとそのどちらかがすごくシェア率が高いような。

Fuminori Kagajo:そうなんです。だから中間がもっと厚くなったら、もっといろんな客層を取り込めるんじゃないかなっていう感覚はずっと持ってて。だからこそSnowkでもなるべく極端な方向に振らないというバランス感は考えていたかもしれません。そしてボーカル楽曲に関してはやっぱりメロディーが大前提。そうではあるんですけど、その背後で鳴ってるシンプルなシンセの音も重要だと思っていて。それこそ若いリスナーが聴いてる音楽ってシンプルなものが多い印象があって、シンプルになればなるほど音を削ぎ落とさなきゃだし、ひとつひとつの音のクオリティってものすごく重要になってくるんです。それが主旋律とあまりケンカしないようにバランスを取りながら調整していくという。ボーカルも立たせつつ、うしろで鳴ってるシンプルなループだったりも印象に残るように仕上げるというのが命題だと思います。

Yutaka Takanami:たとえば2000年代で活躍したFreeTEMPOやAKさんみたいな、美しいメロディーは取り入れつつディープにも聴ける感覚というのは、いまのシーンではあまりないかもしれない。そこをSnowkで狙っていきたいという意識はあるかもですね。現代では低域に重点を置くより、ボーカルと上音やハットのグルーヴさえマッチすればOKという感覚があって。もちろんダンスミュージックを通ってきた我々にとってその逡巡はあるんだけど、若いリスナーにとってはそれがいいバランスだという。ここを入り口に次の世代のひとたちが昔のハウスとかに興味を持って掘ってくれたらうれしいですけどね。

-ストリーミング時代の音楽の体感の仕方というのはあるかもしれませんね。では若いサウンドクリエイターに関してはどういう印象を持ってますか?

Fuminori Kagajo:まず僕が制作をはじめたころとは時代が違いすぎますよね。もう機材からなにから。2万円弱のDAWソフトを買えばとりあえず曲が作れちゃう時代じゃないですか。安価でもすごくいい音が出るソフトシンセもいっぱいあるわけで。そして若いアーティストに関しては良くも悪くも制作がスピーディー。自分だったらひとつひとつの音にすごいこだわっちゃったりして、そこにどうしても時間を割いちゃう。それに比べて若いひとたちは本当にすごいテンポで曲を作るっていう印象がありますね。

Yutaka Takanami:加えて、自分たちはレコードを掘っていく文化で育ってきたけど、若い世代は掘るというよりすべての音楽を並列に聴いて、そのなかから自分にとっていい音楽だけを拾っていける。だからこそ昔だったら通じた王道パターンみたいなものもなくって、感覚的に好きな音を採取して取り入れられるんですよね。それができちゃうのがおもしろいなと感じます。音楽の聴き方自体が変わったおかげで、作り方もルールを逸脱できるという。

-そういった状況を踏まえて、若いアーティストとの差別化としてできる部分ってどんなことだと思いますか?

Fuminori Kagajo:やっぱり滲み出る部分でしか勝負できないですよね。極論、DJだってだれでも3日あればある程度のことはできますから。とはいえ、それがいまの時代の流れなので、否定ばかりしててもしょうがない。時流を受け入れつつも、たとえば昔のビンテージシンセの音を隠し味的に使ってたり、懲りずにハード機材を使って録音したりだとか。やっぱりそういう細部のこだわりに違いが出るんじゃないかな。今回の制作でも基礎はDAWソフトで制作するんですけど、Nord Leadの音色を足してみたり。ビンテージシンセではないんですが、ずっと使い続けてるシンセのひとつですごく好きですね。あとはKORGのMS-2000はよく使ったんじゃないかな。

-PC上だけで完結という手法も間口が広がるという意味では素晴らしいと思いますが、やはりハードや生楽器には作り手のこだわり、これは執念と言っていいかもしれませんが、そういったものが感じられるというか。それはそのまま音楽の説得力にもつながるんじゃないかなと。

Fuminori Kagajo:その通りですね。そういうのが伝わるとすごくうれしいです。

-実質的な制作の話とは別に、マーケティング戦略の話も伺いたいと思います。というのも、おふたりともレーベルや会社を運営されていて、“楽曲のよさ”とは別機軸で“どう広く伝えるか”ということに関しても一家言あるのではないかなと。Snowkの活動においてどのようなプランニングで戦略を練ったんでしょうか。

Yutaka Takanami:とはいえSnowkでは本当に純粋にやりたいことをやっているんですよね。なので、売上を立てるということよりも、最初は投資として海外レーベルのディストリビューションやPRを狙いにいこうと思って。Kitsunéとの契約に関しても、最初はライセンスフィーもそれなりに%を持っていかれるし、振り込みも年に1回とかで、本来だったらデメリットでなくもない。でもそれが最終的にSnowkのコアリスナーの獲得につながればいいなと思って。なので最初からそういった話が転がり込んできたのは喜ばしいことだった。自分たちのレーベルでしっかりと楽曲を作って、クリエイティビティの高いリリースにさえ一点集中すれば、フォロワーが少なくても、おのずと海外レーベルからの引き合いはあるんじゃないかなとは思っていました。その思惑がぴったりはまったんじゃないかな。

-一方、ドメスティックなマーケットへの展開に対してはいかがでしょう?

Yutaka Takanami:国内展開に関しては時間をかけるということは考えていました。海外レーベルとの契約だったりを経てから、アルバムのタイミングまではじっくりプロモーションするという。あんまり消費されないようにしたいですからね。

-ボーカリストとのコラボレーションで生まれるシナジーも、プロモーションに影響すると思いますか?

Yutaka Takanami:あると思います。Snowkも最近フォロワーが一気に伸びて、内訳を見ると海外のリスナーが8割なんです。どういうところでフォローしてくれたのか調べてみると、参加したボーカリストを入り口にしてファンになってくれてることが多いようで。

-なるほど。ここまで話を訊いてきて、おふたりは音楽的にも伝え方にしても現代的なアプローチに挑戦しているなと感じているんですが、それこそもはや10代のときのような吸収力で音楽が摂取できなくなったり、時代に合わせたマーケティングに対応できなくなったりすることってままあると思うんです。そんななか、おふたりはどのようにして同時代的な音楽制作に向き合えたのか、その秘訣を教えていただきたいなと。

Fuminori Kagajo:どうでしょう。でもやっぱりいま自分が30代だったらこの流れに否定的だったかもしれないですね。そういう時期もやっぱりあると思うんですよ。ずっと続けていくなかで、自分がやってることが正しい、ほかのヤツはわかってない、みたいな時期はあったりするでしょう。それが落ち着いてきて、もっといろんな音楽を知っておもしろがれたほうがいいなって思えるようになった。そのきっかけのひとつになったのはストリーミング。ストリーミングの時代に入って、音楽が変わる潮目だなって思ったんです。聴き方も売り方も全部変わるなっていう。そこがターニングポイントだったかもしれない。

Yutaka Takanami:最近はコロナ禍でなかなか動けてないですけど、自分はこれまでアムステルダムで開催されているダンスカンファレンス(ADE)に何度も参加していて。その折にニューヨークハウスのパーティーにも毎回顔を出してるんですが、ハウスミュージックのレジェンドが出演してるような場所は自分含めて、おじさんが多い。場所を変えて、SG Lewisや20代のDJ/プロデューサーたちが出演してるパーティーに行くと世代交代が激しいし、EDMのパーティーだって循環してるわけですよ。ことニューヨークハウスに関してはそういった新陳代謝が悪かったのかなと思う経験があって。時代はEDMを経て、そこにディープハウスやフューチャーハウス、トラップが合流したりして、つねに変わってるというのを目の当たりにするわけですが、そういう現場ではアーティストはおたがいの楽曲をSpotifyで聴いて1分で“いいね”ってなって、年齢や国籍、レーベルも関係ないコミュニケーションを取っている。ここ数年それは自分のなかでは大きかったと思います。とはいえ、もちろんキャリアも大事だと思っていて、ADEでは若いアーティストもルーツや歴史も含めてリスペクトしてるひとがいっぱいいるんですよね。そういった若いアーティストとの交流で生まれる相乗効果も楽しいなと思って。

-その環境を自分たちで作って、まわりに新しい才能が生まれやすい状態をキープするというのは大事なことですね。

Fuminori Kagajo:Snowkにしかできないという部分では、現在の若手アーティストとのコラボレーションはすごく重要なキーワードになると思うので。どんどんそういった取り組みをやりながら、あとは自分たちがいかに楽しめるかが大事かなと。

-そういった話を踏まえて、本作以降のSnowkの動きに関してはどう考えていますか?

Yutaka Takanami:今後もリリース予定の楽曲がだいぶあるので、引き続き順を追って発表できればと思ってます。なかなかイベントなどができない現状ですが、音源でおもしろいアーティストをピックアップして紹介できるようにしていこうかなと。あとは今回のアルバムをアナログでリリースというのも考えていて。自分たちがアナログレコードに対して愛着があるというのもあるし、レコードならではの音像とアナログサイズのジャケットで、Snowkで具現化したかったイメージをさらに補完できるかなって。そういったものも含めて、今後の動きを楽しみにしててもらいたいですね。

INFORMATION

Snowk『Powder』

RELEASE DATE: 2020.01.22
GENRE: R&B / Electronic / House
LABEL: Namy& Records
https://snowk.lnk.to/Powder
TRACK LIST :
01. Aura
02. Under The Moon / J.Lamotta すずめ
03. Catching Feels / Maricelle
04. Margarita? / Froya
05. This Is Good / Miraa May
06. Forever / Ari De Leo
07. Good Love / Lee Wilson
08. I’m Lost / J.O.Y
09. It’s Real / Lee Wilson
10. Miyanomori_/ Froya
11. Sunrise / Shigge,Froya
12. Matsuzaki
13. Back To Love / Lee Wilson

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