Ren Yokoiによるマンスリー対談シリーズ「Motivators」。2017年を締め括るゲストには、東京・世田谷発のヒップホップクルーKANDYTOWNよりRyohuとKEIJU as YOUNG JUJUが登場。90年代にお茶の間にまでヒップホップを響かせたRenの父、Zeebraの魂をリスペクトしながら、自らのオリジナリティを追求し、かつての隆盛を超えんとする勢いで盛り上がるヒップホップ新時代を代表する二人だ。ハウス〜テクノの方面で活躍するDJであるRenとは畑こそ違うが、高校の頃に出会って以来、強い仲間意識で結ばれている。ジャンルの壁を越え、というかそもそもそこに壁を持たない三人が見据える、音楽やクラブカルチャーの今とこれから。
―まず、三人の出会いから聞かせてもらえますか?
KEIJU as YOUNG JUJU(以下、YOUNG JUJU):出会ったのは高校生のとき。で、そのあと俺はサンフランシスコに行って、そこでも会ってるんですけど、ちゃんと連絡を取って遊ぶようになったのは、そのもうちょっと後。20歳くらいのときだったような。
―RenさんとYOUNG JUJUさんは同い年ですよね?
Ren Yokoi(以下、Ren):そうです。で、Ryohuくんが2つ上。
―RyohuさんとRenさんはどこで出会ったんですか?
Ren:確か俺の家だったよね?
Ryohu:俺が20歳でRenが18歳のときかな。YUSHI(※今は亡きKANDYTOWNの中心人物)を介して。朝まで「熱く生きようぜ」みたいな話をしたよね。
YOUNG JUJU:俺もRenの家に行った思い出があるなあ。有名な人たちからお中元がいっぱい届いてて、そこでRenの親父がZeebraさんだって初めて知った。アメリカにいるとき、英語もそんなにわからないままで、例えば夜なのに昼の曲とかかけてたらシャバいじゃん。「あいつわかってねえな」って。だから日本の音楽を聴いてるほうがしっくりきてて、Zeebraさんの曲をめっちゃ聴いてたから、ちょっと複雑というか、びっくりした。
Ren:そのときは冷静だったじゃん。
YOUNG JUJU:人の家で「マジで!」とか反応するのもね。一応、東京出身の都会人なんで(笑)。ヒップホップであれだけ成功して今も前線で活躍してる人っていないから、そりゃテンション上がるよ。
Ren:俺もその感覚、実はちょっとわかる。俺の親父は親父で、Zeebraに関してはもはや別の生命体。俺もいちリスナー。
YOUNG JUJU:なるほど。
Ryohu:俺も小学生のときに、知り合いの兄ちゃんにKGDR(キングギドラ)の「最終兵器」を聞かせてもらって、「こういうのがあるんだ」って衝撃を受けた。でもRenの親父がZeebraさんだって知ってどうこうはなかったかな。それこそYUSHIもいたし。
Ren:俺はYUSHIにシンパシーを感じてた。境遇が近くて「なんかヤバい奴がいるぞ」って。
―YUSHIさんのお父さんは草刈正雄さんで、ご兄弟も合わせて芸能一家ですよね。
Ren:いわゆる二世ですね。
YOUNG JUJU:俺はRenがYUSHIにシンパシーを感じてることを感じてた。YUSHIもそうだったんじゃないかな。Renのこと「あいつはおもしろい」って言ってた。
―YUSHIさんはどんな方だったんですか?
YOUNG JUJU:ほんと変わった奴で。
―例えば、どういったところが?
YOUNG JUJU:うまく言い表せない…。会ってもらったら早いんですけど、それはもう叶わないことなんで。
Ren:もう同じ人間じゃないくらい、考える次元が違った。ある意味、天才的。
YOUNG JUJU:誰よりも音楽が一番って奴だった。みんなでダラダラとゲームしたりもするんだけど、YUSHIがいると、ずっとガンガン音楽鳴ってるから、みんな自然と音楽やろうってムードになる。
Ren:俺も、初めて同世代で何かを作ったのがYUSHIだわ。遊びに行ってジャムしてただけだけど。
Ryohu:俺もKGDRからヒップホップにはまって、中学に上がってYUSHIやB.S.Cと仲間になれたことは大きかったな。
―そこからKANDYTOWNという形ができたのはいつ頃ですか?
YOUNG JUJU:元々は2つのグループだったんです。YUSHIやB.S.CやRyohuくんがいたBANKROLLは、俺が中学のときからあって、高校に入った頃にGOTTZやDIANたちとYaBastaを結成して。その頃からなんとなく雰囲気はありましたね。というのも、BANKROLLはBANKROLL内で、YaBastaはYaBasta内で、メンバーのあいだにライバル意識があったから、BANKROLLの誰かはYaBastaの誰かとのほうががよく一緒にいる、みたいなことがあって、結果的にみんなでなんかやろうって
Ryohu:で、KANDYTOWNって名前が付いたのは、俺が高校卒業した後かな。
―ここで改めて聞きたいのが、KANDYTOWNとはどういったグループなんですか?
YOUNG JUJU:音楽をやることが当たり前だったから、「音楽やろうぜ」とはならないですね。俺たちはただの友達。何かやりたいことがあって、それに適した奴を探すとか、そういうものではなくて、公園で遊んでる延長。チーム感はありますけど、仕事感はないですね。そこは周りの人に対して、ちょっと申し訳なく思うこともありますけど。でも撮影してても曲作っててもツアーに出ても、ほんと楽しく仕方がない。
Ren:KANDYTOWNって名前がいいよね。ただ単に“街”で、みんなそこの住民。
Ryohu:誰が名付けたのかわからない。メンバー内でも諸説あるから(笑)。
―街に住む仲間同士。ということは、解散するとか、そういう概念はないということですか?
YOUNG JUJU:そうですね。例えば誰かが不動産屋になってもKANDYTOWN。KANDYTOWNって名前が出てない奴でも、そこにいたらKANDYTOWN。だから解散とか、そういう話にはならないですよね。
Ryohu:だね。不動産やりはじめても、焼肉食べに行って、そのノリで曲作っちゃうみたいなね。
―すると、Renさんがメンバーでも全然おかしくないと。
YOUNG JUJU:はい。俺らはいつでもいいぜ。DJ名のあとに(KANDYTOWN)って付けなよ。
Ren:書いちゃおっかな(笑)。
―Renさんから見たKANDYTOWNの印象は?
Ren:なんですかね。見たことある同世代の奴らが集まったって感じ。みんないろんなことをやれるし、アーティストコレクティヴなイメージもあります。
YOUNG JUJU:言わんとしてることはわかる。俳優やってる奴もモデルやってる奴もいるし、いろんなことをやれる仲間が集まって、さらにいろんなことをやろうとしてるというか。
Ryohu:それぞれ個性的なメンバーが調和してるよね。それは急にはできないことで、やっぱり友達なんだよね。
Ren:打ち合わせとかするの?
YOUNG JUJU:みんな三日坊主だから、例えば「火曜日だけは集まろう」ってなっても、二週目からは誰もいない。で、「集まらなかったね」みたいにすらならない。でも前よりは打ち合わせみたいなの、ちゃんとするようになってるよ。ライブで会ったときとかだけど。
―それで制作とかちゃんと進むんですか?
Ryohu:まあやるときはやりますよ。
YOUNG JUJU:でも”曲作り”っていう名目で集まることはないですね。飯食ったあととかのノリでやるんで。あらかじめビートとかリリック用意したことも、1回もないんです。