MUSIC 2021.04.21

Interview: Crossfaithのシングル”RedZone / Dead or Alive”と2021年に向かうバンドの方向について

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

Crossfaithが4月7日に自身のレーベルSpecies Inc.設立後2枚目の作品リリースした。今作は 「RedZone / Dead or Alive」は両A面シングルとして発表されており、「RedZone」はアーケードの大人気シリーズ「ガンダムエクストリームバーサス」シリーズ最新作「ガンダムエクストリームバーサス2クロスブースト」の主題歌。 「Dead or Alive」は国⺠的漫画「ワンピース」の1000話を記念して行われている、世界規模のキャラクター人気投票のテーマソングでもある。この超強力なタイアップを携えた新作発表に際し、楽曲の話はもちろん、配信ライブを映像作品かした付属DVD「SPECIES VIRTUAL WORLD TOUR – OPEN THE DIMENSIONS」のこと。合わせて、今のバンドの状況などについて、Koie(Vo)とTeru(Programing/Vision/Compose)をインタビューした。ど頭にSpotifyを埋め込んでおくので楽曲を聴きながら読んで欲しい。

オファーをいただいたときは「ついに、きたか」と
ーKoie

互いの存在を掛け算して良い作品を作るのがタイアップ
ーTeru

ー今回のダブルA面シングルは2曲ともタイアップ。しかも「RedZone」は「ガンダム エクストリームバーサス2クロスブースト」の主題歌、「Dead or Alive」は「ワンピース」の世界規模のキャラクター人気投票のテーマソングということで、超強力な作品になっていますね。お2人にとって、それぞれのアニメ・漫画はどんな存在ですか?

Teru:ガキの頃から親しんできた2作品で、もはやDNAに組み込まれているほど大きな存在なんですよね。どっちの作品も大ファンなんですよ。

Koie:オレもそうですね。ガンダムは父親がプラモデル好きで自分も一緒になって組み立てたりしていた記憶があります。もちろん映像作品も観ていますね。ガンダム作品のメッセージ性ってすごく強いじゃないですか。戦争の本質を描いていたり、主人公が1人の人間として成長していく過程を描いていたり。もう、自分が生きていくうえでの糧になっていますし、確実にルーツの一部なので、バイブル的な存在なんです。今回のお話をオファーいただいたときも「ついにきたか」と。自分のバンドの音で、自分の声がガンダムという作品の一部になれるというのは夢のような気持ちでした。ただ、それだけ好きな作品で内容を知っているからこそ、歌詞をどう表現すればいいのかは悩む部分はありましたね。1曲にどれだけメッセージ性を詰め込むのかが難しかったです。かなり力を入れて書きました。

ータイアップということで各楽曲ともに意識した部分はありますか?

Teru:楽曲を制作するにあたって、タイアップとはいえ、それを意識し過ぎて自分たちの持ち味がなくなってしまったら意味がないと思っていたんです。タイアップは、お互いの存在の掛け算になるからこそ魅力的なものになるはずなので、自分たちらしい表現を活かすということは大前提としてありました。そのうえで、「RedZone」はガンダムらしい世界観、パイロットの心情を意識して作って。ワンピースのタイアップでもある「Dead or Alive」はオレらも海賊になりきった気持ちで、ルフィが戦っているようなシーンをイメージしながら制作を進めていきました。

ー各楽曲ともに、何か楽曲の内容に関する指定やオファーなどはあったんですか?

Teru:どちらもバトルのシーンをイメージしてほしいというオファーがあって。このオファーは楽曲の世界観を描くにあたってすごく助かりましたね。というのも、ワンピースもガンダムも、作中には様々な人間ドラマが描かれていて非常に深い内容じゃないですか。それを1曲にまとめるなんて不可能に近いので、バトルシーンという要望があることで、「RedZone」と「Dead or Alive」の方向性を明確にすることができたんですよ。

ー先ほど、Koieさんが仰っていた歌詞についてですが、作品に寄り添った部分はピックアップするとしたら、どんな部分になりますか?

Koie:「RedZone」に関しては、自分が観てきたガンダム作品のメッセージの中で心に残っているものを確認しながら、自分がガンダムのパイロットになったような気持ちで書きましたね。そこでテーマになったのが”共鳴”です。

ー「RedZone」のリリックには”Resonant”=”共鳴”というワードが実際に出てきますよね。

Koie:はい。ガンダムシリーズにはニュータイプという概念が出てくるじゃないですか。彼らは作中で共鳴し合うんですけど、これって自分もバンドをやっていて感じるんですよ。例えば、ライブ中にアイコンタクトだけでメンバーの気持ちがわかったり、お客さんと一体になる部分があったり。そういった意味で”共鳴”を核として、Crossfaithがガンダムを歌うのであれば、どんな内容が適しているのかをイメージしながら書いていったんです。絵が想像できる部分と、その奥にある自分の頭でイメージしたディープな部分を捉えられるような内容にしましたね。

ーサウンド面に関してはガンダムを意識した部分はありますか?

Teru:SF作品の要素を表現するために、ギターリフとシンクロさせたシンセの音をいれて未来感を演出したり、作曲しているときに実際にガンダムを観ながら作中に流れている効果音などにインスパイアを受けた音を盛り込んでいます。サンプリングではないんですけど、自分たちなりの遊び心を試したいた感じですね。「RedZone」のイントロができたときも「コイちゃん(Koie)、これどんな感じ? 発進できる?」とか聞いて。

Koie:「うわ! ガンダム、発進するわ!」なんて言い合ってたよな(笑)。「RedZone」に関しては、昨年から続くコロナ禍にあって、落ち込んだ人を引っ張り出してあげるために共鳴する、みたいな意味合いも同時に歌詞に込めていますね。この時代の中で自由に行動できないのは、あなただけではないよってことを表現したつもりです。


タイアップ楽曲のシングルだからこそライブの映像も合わせて届けたい

ーなるほど。今回のダブルA面シングルには2020年9月に開催されたバンド初の配信ライブ「SPECIES VIRTUAL WORLD TOUR – OPEN THE DIMENSIONS」のフル映像も収録されていますが、このライブについても改めて教えていただけますか?

Teru:リキッドルームで演奏した配信ライブの模様が収録されているんですが、あのときは生のライブの劣化版ではなくCrossfaithらしい配信でしかできない方法を探そうっていうのが軸にありました。その具体策としてMV「Endorphin」に出演してくれたダンサーにも参加してもらったり、「None of Your Business」にはJin Doggがライブハウスに入ってくるようなシーンを入れたり、という演出を入れたんです。映像としても1つの作品として完結させたいという思いがあったんですよ。

Koie:あの配信ライブは、なんなら有観客のライブより緊張しましたね(笑)。ライブはお客さんとのコミュニケーションで成り立つ部分が大きいので力んでいる感がありましたよ。しかもTeruが言うように映像作品を作る感覚でいたので、一層でしたね。いざ始まっちゃえば緊張なんて吹き飛んじゃいましたけど。セトリを考えるにしても普段は選ばない曲を積極的にいれようってメンバーと話し合ったりしていました。あの当時はライブがどんどん配信に切り替わっていくんじゃないかって流れもあったので、自分たちにとっては1つの希望の光になればいいと思ってやったんです。実際に観てくれた人からも良い反応が得れたし、自分たち的にも、それがきっかけでメンバーが集まることができたり。バンドって能動的に動かないと止まったままになってしまうので、自分たちのためにも動き出すためのきっかけになったライブでした。

Teru:この配信ライブはオレらもKoieの家で同じ時間に観ていたんですけど、お客さんがリアルタイムでコメントをくれるのが自分たちと同じ反応だったりして、一緒になって「そうやろ? わかってるやん!」とか言い合っていたんですよ。こういうことは普段は絶対できないことですから、そういう楽しさもありました。

ーこのタイミングで映像作品としてリリースしようと思ったのは?

Teru:今回のシングル「RedZone / Dead or Alive」はどちらもタイアップ楽曲ということもあって、まだオレらのことを知らない人も手に取ってくれる機会があると思うんですよ。そこでCrossfaithのライブ映像もセットでパッケージすることで、より強力な刺激を与えることができるんじゃないかって。

Koie:そうやな。多分、日本のワンピースファンとかびっくりすると思うんですよ。「ワンピースってこんな激しい楽曲使う作品だったっけ???」って。そこで、普段は激しい音楽を聴かない人にもCrossfaithのライブから自分たちの魅力をちゃんと届けたいと思ったんです。

これをやるために生きているんだって感じたライブ
ーKoie

オレらから受け取るメッセージがポジティブなものであってほしい
ーTeru

ーわかりました。先ほどKoieさんはコロナ禍におけるメッセージについての発言がありましたが、昨年末、Crossfaithは『JAPAN TOUR 2020 – SYNTHESIS -』を東京と大阪で開催されています。実際に今の時代にライブをやってみて、何を感じられましたか?

Teru:正直、不安も感じている時期でもあったんですけど、同じメンバーでステージに立てる。目の前にお客さんがいる。その1つ1つがただただ嬉しかったですね。ライブ前に靴紐を結ぶ、だとか。そんな些細なことですらありがたく感じました。

Koie:そうやね。

Teru:(ガイドラインによって)モッシュやダイブができない、なんてことは全然関係なくて。ただただ、こんなにもライブが大事なんだってことに気づかれたツアーでもありましたね。

Koie:初めてライブしたんちゃうか、くらいのテンション感というか。抽象的な言い方ですけど「生まれたー!」みたいな爆発感があったんですよね。これや、これをやるためにオレは生きてたんだっていうテンションに大袈裟な言い方でもなく本気でなりました。コロナ禍になって以降、多くの人が限界を感じる部分があると思うんですよね。色んな制限がある中で、自分の限界値が変に定まっちゃっていた気がしていて。でも、ライブをしたときは限界突破するんですよ、自分の中でも。普段はできないことがステージで出来ていると思うし、観ている側もそうだと思う。きっとオレらのライブを観て忘れていた感情を思い出すきっかけになったんじゃないかと思うんです。あの場所にいた人にしかわからないことだと思うんですけど、お客さんとも言葉はなくとも繋がっていると感じたのを覚えていますね。モッシュだとかフロアに突っ込まなくても心と心は繋がれるんだなって改めて感じました。

Teru:今もまだライブをやるにあたってのガイドラインがあるし、Crossfaithも海外ツアーに行けなかったりと、色々行動に制限がある時代でもあります。でも、この時代を超えた夜明けに向けて、オレらなりの最強の武器を作りたいと今は思うんですよ。絶対にコロナのせいにしたくないってい気持ちがあるし、それじゃ腑に落ちないんですよね。今の状況があったからこそ、これができたっていう何かポジティブな方向に持っていきたいんですよ。それは絶対にできると思っていて。その1つとして、リミックスコンテスト(ENDORPHIN REMIX CONTEST)を行っていて。みんなにとって、創作することが、この状況を打破する手助けになればいいなと考えているんです。自分たちも創造することによって救われているので。

ENDORPHIN REMIX CONTEST : http://crossfaith.jp/KIDS_MAKE_A_NEW_ACID/
※期間は5月9日23:59まで

Koie:Teruが初めてロジックを扱い出した頃、ナイン・インチ・ネイルズがリミックスコンテストを開催していたんですよね。あれはすごく楽しかったし、楽曲がどうやって構成されているのかをデータで見ることができるのは単純にテンション上がるだろうと思って。それをもう1つ違うものにクリエイトするっていうのは楽しいことだと思うんですよ。このリミックスコンテスト1つとってもそうなんですけど、本当に自分たちの行動はすべてが繋がっていて、前に進んでいくためのオレらなりのアプローチ、表現方法としてやっています。

Teru:ま、楽曲のデータを公開するっていうのは、バンドからしたらちょっと恥ずかしいんだけどね(笑)。

Koie:ソロテイクとかね。でもすごく面白いと思うんですよね。オレらとしては「いいリミックスを待ってるぜ」って感じです。

ーリミックスコンテストの一件もそうですが、この時代下にあってもCrossfiatは常に前を向いてパワフルに活動していると感じます。

Koie:パンデミックになって1年が経ち、昨年の今頃よりも心身共に疲れてしまった人も増えている状況だと思うんですよ。そんな中で、今こそ音楽ができることの真価が問われているフェーズに入ったんじゃないかと感じています。状況が次々に変わっていますが、常にCrossfaithの音楽を聴いてくれる人の心に寄り添ってハマるような音楽を、これからも作っていければと考えています。

Teru:オレらのやり方で強烈なやつを届けたいですね。聴いてくれる人を良い方向に運ぶような劇薬のような音楽を作って、そこから受け取れるメッセージがポジティブなものであってほしいという気持ちもあります。どうしてもネガティブな話が多い時代ですけど、オレらが無理矢理にでも心の感覚だけでも、広い外の世界へ引っ張り出してやりたいです。それに、Crossfaithは今年で15周年を迎えますから。色々とプロジェクトを立ち上げて進めていこうと計画しています。

Koie:そして、ライブがしたいですね。Crossfaithに求められるのはライブだと思うんですよ。その声が圧倒的に多いと感じていますし、それに応えていきたいと思います。もちろん世間の状況を確認しながらですけど、タイミングを見計らいながらライブをやっていこうと考えています。

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