MUSIC 2021.05.21

[Interview]ちゃんみな
痛みを知るちゃんみなが解き放つ“美”の呪縛
from EYESCREAM No.178

Photography—Masaki Sato Styling—Risa Kato Hair&Make—Yuko Nozaki Text—Yuichiro Fuse
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

現在発売中の雑誌EYESCREAMより、“ミレニアル世代の代弁者”ちゃんみなのインタビューを掲載する。4月14日にリリースされた彼女の3rd EP『美人』。そのリード曲「美人」で歌われているテーマは、デビュー前から彼女を取り巻いてきた美の概念に対する違和感や疑問、そして痛みを経たポジティブなメッセージだ。ちゃんみなの骨太なラップが、美の呪縛を解放し、美の真髄に光を当てる。

ー新曲「美人」は、これまでのどの曲とも違うハードさと、ある種のダークさも併せ持ったビート感の強いヒップホップチューンに仕上がりましたね。

そうですね。サウンド感でいうと、私は同じものを作りたくないので、毎回、違った色味や表情を見せられるように常に進化させていて。そのうえで“美”をテーマにした曲を作りたいと思ったのが、去年の8月頃。いろんな方向性の曲を作ったんですが、テーマにフィットするサウンドとメロディが出てこなくて。それで結局、10曲くらい作った末に、ようやくこれだと思えるものが出来ました。歌詞にも出てくるように、4年前、私が17歳の頃に作っていた曲調と近い感覚もありつつ、当時よりも尖ったサウンドにできたと思っています。

ー“美”というテーマに至った過程は?

私は小さい頃からピアノやバレエを習っていて、ステージに上がる機会が多かったので、昔から「美しい/美しくない」と見た目をとやかく言われることが多かったし、それに慣れていました。そんな私も、成長するにつれて自我も出てきて、中学生からメイクを始めたりもするんですけど、高校時代にはその何倍もの時間を音楽に費やして、必死で練習をして、全国高校ラップ選手権にも出ました。ところが当時私がリリースした楽曲に対する世間からのコメントのほとんどが、私の見た目に対する批判だったんです。もちろん私は、尋常じゃないほど傷つきましたし、絶望しました。その時に言われたすべての言葉が忘れられないし、絶対に許せなかった。大切に育ててくれた両親にも、私を美しいと思ってお付き合いしてくれた男性にも、私の友達にも、とにかく私の周りのすべての人たちに申し訳なくて。でも、そんな世間の声に一度も反論せず、歯を食いしばって、いつかこのテーマをちゃんと曲にしようと考えていたんです。

ドレス参考商品/95 JIEUN(95 JIEUN mail_ 95jieun.tokyo@gmail.com)、中にきたブラトップ¥38,500/PINKO(サン・フレール tel_03-3265-0251)、ヘアアクセサリー¥8,250/Vintage Hollywood(ワールドスタイリング tel_03-6804-1554)、シューズ¥20,680/YELLO(YELLO url_ info@yelloshoes.com)

ーそれを今、歌おうと思った理由は?

当時から私、16kgほど痩せたんですよ。すると今度はコメントの9割が、私の見た目を絶賛する声になって。その変わった瞬間がすごく気持ち悪かったんです。

ー気持ち悪かった、のですか?

そうなんです。私の外見を揶揄していた人たちって、私の周りからはいなくなったけど、絶対に他の人のところに行っていると思ったし、そうしたことが、すごくバカバカしく感じたんです。私だけでなく、コメントをしていた人たちまで、皆がこれほどまでに“美”に対して、支配されていることが。そうした一連の流れを垣間見たことで、やっと今、このテーマを曲にできると思ったんです。

ーそれを言葉、つまり歌詞にする際、どれくらいの時間をかけるのですか?

今は1時間くらい。スタジオに入って、メロディをつけてその場で歌詞も書き上げます。それを持ち帰って、後日、気になった箇所だけを直します。以前は“宇宙語”で歌ったものを持ち帰って、4〜5日ほどかけて歌詞を書いてたんですけど。

ー書きかたを変えた理由は?

メロディが浮かんだ時に出てきた言葉の方が、やっぱり生きているんですよ。言葉が息をしている。ただその瞬間って、催眠状態のような感じで衝動的に言葉を発する分、後から聴くと、その時の自分の感情が分かりづらいところもあって。だから、それをより伝わりやすいように、歌った時の自分を助けてあげるイメージで、最終的に言葉を微調整していきます。あと、「美人」ではセクションごとに声色を使い分けていますが、それはメロディを作る段階で決めました。

ー結果、「美人」はデビュー当時のテイストをアップデートしたようなハードさとラウドさを兼ね備えた作品となりましたが、こうした自分の内面から生まれる表現を、リスナーにどう届けたいと考えていますか? デビュー当時のインタビューで、「好きなように聴いてください」といった主旨のコメントを読んだ記憶を鮮明に覚えているのですが(笑)。

えっ、私、当時からそんなことを言ってました!? 今もまったく一緒です(笑)。ただそれには理由があって。例えば、自分が気持よく車を運転している時に、友達から「Bluetooth繋がせて!」って今はあまり聞きたくない音楽をかけられると、ものすごくストレスを感じるんです。だから私自身、「この曲聴いて!」って思わないんです。音楽って、聴きたいタイミングで出会うべくして出会うものだと考えているから、今回の新曲も、必要な時に出会って、その時に聴いてもらえればという感覚です。私は集中して、全力で音楽というモノ作りをすれば大丈夫と思っているので。

ーそのモノ作りのために、この一年間で一番大きかったインプットは何でしたか?

ステイホームで休む時間がもてたことです。私って、終わりのないことを突き詰めて考えてしまいがちなんですよ。例えば、「本当のエロスって何だろう?」とか。だから、それが本当の正解でなくとも、納得できる答えを自分の中に置いておく作業が好きなんです。気になったことがあれば、すぐに本を読み漁って調べますし、そうしたことを通して、自分は何をカッコいいと思い、何を楽しいと思うのかをインプットしていけたように思います。

ー探求心が強いというか、いろんなことに貪欲なんですね。

できるだけ自分を知っておきたいんですよ。よく、「30〜40歳になって、やっと自分のことが分かってくる」って言われますけど、でもその年齢で自分が分かっても、既に培ってきたものが多すぎてキャパオーバーしちゃう気がしていて(笑)。だからできるだけ自分を日々アップデートして、「22歳の私はこんな感じ」とファイルに保存するように、自分の中に一度しまっておきたくて。そうした方が、新しい感覚に出会った時により敏感に気付くことができるし、新しい感情に出会った時にちゃんと感動できると思っています。

INFORMATION

ちゃんみな
3rd EP『美人』

発売中
1. 美人
2. Needy
3. Morning mood
4. ダリア

THE PRINCESS PROJECT 5
開催中
東京公演:5月25日(火)
@中野サンプラザ
1部 OPEN 15:15 / START 16:00
2部 OPEN 18:15 / START 19:00

大阪公演:6月15日(火)
@大阪オリックス劇場
1部 OPEN 15:15 / START 16:00
2部 OPEN 18:15 / START 19:00

Official HP:https://chanmina.com/
Instagram:@minachanxx
Twitter:@chanmina1014

POPULAR