現在実施しているスペースシャワーTVの“POWER PUSH!”とのコラボ連載でフォーカスしたバンド、OddRe:が自身初となるワンマンツアー『CODA』を7月上旬に実施し、東名阪のクワトロを大いに沸かせた様子。さすがである。
このツアーでは、ライターとフォトグラファーがバンドに同行し各日の模様を記録している。その密着レポートがEYESCREAMに届いたので掲載していく。3ヶ所を巡ったツアーなのでレポートも全3回! 2回目は梅田クラブクアトロ編をどうぞ。
7月2日 梅田クラブクワトロ
昨日の正解は、今日の正解じゃない
名古屋公演を終えた一行は、その日のうちに大阪へ移動した。
12:47
AirAとサダが楽屋へ入ってくる。SOIは少し遅れるらしい。その話をすると、2人は前夜ホテルへ向かう途中の動画を見せてくれた。深夜に大阪へ着き、空腹を我慢してホテルへ戻ろうとしていたAirAとサダ。その横でSOIは「俺は今日頑張ったからラーメン食べる!」と言い残し、一人で夜の街へ消えていったという。動画には、取り残された2人の後ろ姿が映っていた。
「今日は絶対ラーメン食べるから!」
サダはケータリングのカップ麺を見つめながら宣言する。
初日を終えたことで、楽屋には少しだけ余裕が生まれていた。

14:11
SOIが会場へ到着する。昨日とは打って変わって、どこか満足そうな表情を浮かべていた。
理由は、新しく手に入れたガットギターだった。
名古屋公演を経て、「もっと良い音が出せる」と感じたSOIは、朝からレーベルスタッフと楽器店へ向かったという。試奏を重ね、約20万円の1本を購入してきた。
昨日ライブで感じた違和感を、翌朝には新しい道具へ変えてしまう。SOIの中では、名古屋公演はすでに次のライブの材料になっていた。しかし、新しいギターを喜ぶ時間も束の間、吉田が3人を集める。始まったのは、名古屋公演の振り返りだった。
「昨日は初日として勢いのあるライブだった。でも、勢いで誤魔化している部分もあったと思う」
曲ごとの表情をもっと見せられること。流れではなく、1曲ずつを丁寧に届けること。勢いだけで終わらせず、ライブそのものの完成度を上げていこうという話だった。
SOIも前日の映像を見返しながら、MCの位置、曲への入り方、観客の反応が大きかった場面と届き切らなかった場面を整理していく。
「今日はディテールを詰める日にしてもいいかも」
ツアーは、同じライブを場所だけ変えて繰り返すものではない。昨日という実例があるからこそ、今日のライブを変えられる。初日の熱狂に甘んじることなく、課題を客観的に見つめ直してすり合わせる時間。そうして緻密に向き合ったからこそ、彼らの視界は一気にクリアになっていた。

15:08
前日とは違い、確認したい場所は最初から的確に絞られていた。やるべきことが明確になったからだろうか、ステージに立ったSOIは、フロアにいるスタッフに向けて「こんにちは!」と声を掛けるほど晴れやかな余裕すら見せる。迷いの消えた彼が新しいガットギターをひとたび鳴らすと、昨日よりも明らかに繊細で、くっきりとした輪郭を持つ音が会場の隅々まで響き渡った。
「めっちゃ音いい。抜けがいい」と興奮するサダに、SOIも「ガット楽しい!」と笑う。すると今度はAirAにも新しいウクレレを買わせようという話が始まった。
「今が一番安くて、今が一番若いから。人生でやるライブの回数って限られてるのよ。早く買ったほうがいっぱい使える」
もっともらしい理屈を並べるSOIに、サダやスタッフも加勢する。
「一回一回のライブに命懸けなきゃ。一個一個のライブで楽器買おう」
もはや詐欺師のような勢いに、AirAは「怖い……」と後ずさった。
冗談のような会話だったが、「人生でライブができる回数は限られている」という言葉に嘘はない。一つひとつのステージへ懸ける熱量がそういう形で表れてしまった、とここは都合よく解釈して書き残しておくことにする。
リハーサルは名古屋よりもスムーズに進む。SOIは前日の映像を見ながら照明を調整し、サダは新曲のベースを黙々と練習する。AirAはお立ち台へ腰掛け、2人の作業が終わるのを待っていた。確認事項が整理されたことで、ふざける余裕も生まれていた。それでも、ただ慣れただけではない。スタッフを含め、全員が同じ課題を共有していた。

18:39
開演まで約20分。
3人は鏡の前へ並び、恒例の「やる気あるよ」写真(AirAのX参照)を撮る。
AirAは衣装へグッズの缶バッジやキーホルダーを付け、緊張を紛らわせるように小さく踊る。サダは「楽しくなってきた」と言いながら落ち着きなく身体を動かし、SOIは廊下で歌を口ずさんでいる。同じルーティンを繰り返しながら、昨日とは違うライブへ向かっていた。

この日のステージでは、名古屋の勢いを失うことなく、一曲一曲の表情がより濃くなっていた。3人が顔を見合わせる場面も増え、演奏にもMCにも少しずつ余裕が生まれていく。

SOI ANFIVER(Gt/Comp/Trackmaker)
新曲では、それぞれがより深く世界観へ入り込み、後半のダンスフロアを思わせるブロックでは、演奏と照明、観客の動きが前日より滑らかにつながっていた。

ユウキ サダ(Ba/Vo)
名古屋公演を経て、さらにフロアとの一体感を高められるよう、照明や見せ方の調整も加えられている。曲の始まりを音だけではなく視覚でも伝えることで、フロアの温度が自然と上がっていく。前日の課題が、目の前の反応として回収されていた。
初日の経験を糧に、ディテールを極限まで突き詰めて挑んだこの日のステージ。フロアの熱量を鮮やかに回収していく中で、彼らは自分たちの音楽が観客の深いところまで届いている確かな手応えを、その身体で引き受けていた。だからこそ、アンコールでのAirAの言葉には、いつも以上の切実な体温が宿る。

AirA(Vo)
「音楽に救われてきたからこそ、今度は誰かを救える音楽を届けたい」
彼女がそう静かに語りかけると、客席からは「救われてるよ」という声が自然と返ってきた。それは単なるファンからの温かい掛け声というよりも、彼女自身がかつて一人のリスナーとして音楽に救われていた頃の記憶と、OddRe:のフロントマンとしてステージに立つ今が、目の前の景色を通して地続きに繋がった瞬間でもあった。自分が受け取ってきた音楽の力を、今度は自分の声で手渡せているという確信。まだ10代の彼女が紡いだ等身大の言葉は、この2日間の試行錯誤を経て、間違いなく目の前のリスナーの心を震わせる本当のメッセージになっていた。
ライブを終えて楽屋へ戻ると、SOIは汗を拭きながら大きく息を吐いた。
「いやぁ、あっちーね!」
「マジで熱かった」とサダも笑う。
ステージから降りてすぐの楽屋は、大阪のフロアが放っていた凄まじい熱気の余韻で満ちていた。その興奮の中で、SOIは確かな手応えを噛み締めていた。
「今日は冷静だった。ちゃんと聴かせられた。明らかに演奏内容が良くなった!大阪最高だった……あぁ!!!!!」
思わず大声を上げるSOIに、その場にいた全員がびっくりと肩を震わせる。しかし、メンバーが肌で感じていたその演奏のコントロール感には、実は音響的な理由もあった。
「実は今日の会場、名古屋とは音の響き方が大きく違ってて」
吉田が種明かしをするように口を開く。
「昨日がスーパーウェットで、今日の会場はスーパーデッドなんよ」
残響が豊かに残るお風呂場のような名古屋の空間に対し、大阪は音が響かず綺麗に吸音される環境。そのデッドな響きだからこそ、一音一音の輪郭がくっきりと見え、自分たちの演奏が冷静に耳に届いていたのだ。SOIも「だからいい意味で、ちゃんとショウとして構築できたんだと思う」と深く頷いた。吉田は続ける。
「始まる前に言ってあげたらよかったなって。音が響かない分、昨日より歓声が小さく聴こえる可能性もあったけど、そういう会場だから。客席はしっかり動いていたし、初日の課題がちゃんとクリアされてた」
歓声の聴こえ方は違っていたかもしれない。それでも、自分たちが向き合ったディテールの修正は100%フロアに届いていた。
スタッフからも「ちゃんと課題をクリアできたね」「AirAの歌が繊細で、ちゃんと歌詞の世界が入ってきたよ」と声が掛かる。AirAは「嬉しい……みんなのアドバイスのおかげです」と頷いた。名古屋で見つけた課題は、一日で確かな手応えへ変わっていた。
それでもSOIは、もう次を見ていた。
「正直、明日東京やっちゃいたい」
昨日を超えた今日があるなら、東京ではもう一度それを超えられる。
3人の視線は、自然とツアーファイナルへ向いていた。

INFORMATION
OddRe:
OddRe: JAPAN TOUR 2026
“UNDERGROUND MIRRORBALL”
2026年10月30日(金)
東京・LIQUIDROOM
開場18:15 / 開演19:00
2026年11月1日(日)
北海道・cube garden
開場17:00 / 開演17:30
2026年11月12日(木)
福岡・DRUM Be-1
開場18:30 / 開演19:00
2026年11月14日(土)
広島・SIX ONE Live Star
開場17:00 / 開演17:30
2026年11月26日(木)
宮城・MACANA
開場18:30 / 開演19:00
2026年12月11日(金)
愛知・THE BOTTOM LINE
開場18:15 / 開演19:00
2026年12月12日(土)
大阪・BIG CAT
開場17:15 / 開演18:00
【追加公演】
2027年1月8日(金)
東京・Spotify O-EAST
https://oddre.jp/