ART 2020.11.19

ノイズを描き出す岡田舜の個展『砂嵐』。デジタルとアナログの中間を探る絵画表現、これは生で観たい

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

今や失われつつあるアナログノイズやファミコンのバグなど初期のデジタル現象に関心を持ち、デジタルとアナログの中間を探るような絵画表現を行っているアーティスト、岡田舜の個展『砂嵐』が11月20日から幡ヶ谷gallery communeで開催される。

コロナ禍のなか、ノイズ作品を描くことで、不安な思考や行動を払拭していったという岡田舜。その思いは、同展に寄せた以下のコメントに詳しい。

アナログ放送から地上デジタル放送への移行に伴い、徐々に消えていったテレビの砂嵐。正式にはスノウノイズと呼ばれる、モノクロの無数のザラサラした点が揺れ動くこの現象。ホラー映画の演出などで採用されるように、どこか恐ろしいイメージを持つこのノイズに対して、私は怖さよりもどこか瞑想的で心落ち着く感覚を覚えていた。

そんな私がかつて一時的に鬱状態となっていた時、縋ったのがノイズだった。

初めて描いた時、写真のように描き写すのではなく、ただ白と黒の絵具を作業的に画面に乗せた。描き終わった後に現れたのは白と黒が均等に並ぶ単調な画面ではなく、ノイズのような”揺らぎ”を持つ複雑な画面だった。

アナログテレビは受信するチャンネルが存在しない時、空間に漂う微弱な電波を受信し、増幅させノイズとして表示する。それはありとあらゆる動きの残波であり、その中にはビックバンの際に発生された宇宙マイクロ波背景放射という残波も含まれているという。自分の作品に現れた”揺らぎ”を考えた時、自身が受信機となり、自分の周りに存在する様々な物事の微弱な残波を”揺らぎ”として表したのだと考えた。これはテレビではなく、人間が受信して発生させたノイズだ。

今回、再びノイズ作品を描こうと決めたのは、コロナ禍で誰もいない街が停波したテレビのように寂しいものに感じられたからだ。その寂しさはデジタルテレビのようにプツンと画面が消えてしまうようなものではなく、停波しながらも微弱な信号を受信し、画面が揺らぎ続けるノイズのように、人々が個々に不安や孤独と戦う複雑さも内包していたのだった。

現在、街は徐々に活気を取り戻しつつあるが、社会の混乱は収まる兆しを見せていない。その中で多くの人が懸命に生きている。混沌とした状況の中で個々に生きる一人ひとりの残波を絵具に込めて、私はキャンバスに”出力”し続ける。

岡田 舜

INFORMATION

岡田舜展 『砂嵐』

会期:2020年11月20日(金) – 12月2日(水)
会場:gallery commune(東京都渋谷区西原1-18-7)
14:00 – 18:00(土日祝は13:00 – 18:00) ※木曜休廊

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