CULTURE 2025.11.20

[Wandering Osaka]#03 サカモトタイチと巡るVOYAGE KIDS、club daphnia、tamutamucafe

Photography_Masahiro Yoshimoto, Text_Yuka Muguruma, Edit_Michika Kuriyama, Takuya Nakatani
EYESCREAM編集部

音楽、アート、ファッション、フード、スケボー、グラフィティ、そしてなによりもストリートカルチャー。いつもなにかおもろいことが起こっている、熱気に満ちた大阪の街にフォーカスする連載シリーズ「Wandering Osaka(ワンダリングオオサカ)」の3回目。街を知るには街の重要人物(もしくは街で遊びまくっている人!)に訊くのがイチバン、てことで今回は、大阪・新世界のカルチャースポット、VOYAGE KIDSのサカモトタイチさんにガイダンスしてもらった。

Recommender of the Month
サカモトタイチ

ZINEを中心とした大阪・新世界のアートギャラリー、VOYAGE KIDSのオーナー。お隣のカルチャースペース、matonariも運営しており、ポップアップやワークショップなどを開催。ZINEを全国に普及する活動も行なっている。

VOYAGE KIDS

インディペンデントなZINEが勢揃い
ディープな下町からアートの魅力を発信

大阪のランドマーク、通天閣にほど近い新世界市場の一角にあるVOYAGE KIDS。幼い頃からストリートカルチャーにどっぷり浸かってきたサカモトさんが、「自分の周りにいる“表現する人”をフックアップできる場所を作りたい」と立ち上げた一軒だ。自身も関わりの深いグラフィティカルチャーを軸に、国内外のアーティストが手がけたZINEやグッズが並ぶ。なかでも、サカモトさん自ら声をかけ、アーティストと一緒に制作するZINEコーナーは、ここにしかない個性派揃いのラインナップに好奇心がくすぐられる。手に取りやすい価格帯のリソグラフのポスターもあり、「なんかええやん」でジャケ買いする楽しさも。日常に溶け込む気軽なアートが、いつもの景色に彩りを添えてくれる。

Recommender’s Comment

「以前、この場所に住んでいたおばちゃんに、『ここでなんかしてみいひん?』と誘われたのがお店を出したきっかけ。洋服を手に取るようなラフな感覚でZINEやアートに触れて、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。10周年となった2025年は『ZINE SWAP MEET CAMP』にて1年間で47都道府県をツアー形式で巡回する『全国制覇 ALL CITY』を実施!」

表紙を眺めているだけで想像力が膨らむZINE、アートブック、写真集がずらり。キーホルダーやグラスといった雑貨の販売も。

屋号をグラフィックに落とし込んだリンガーTシャツ4,400円は、ブランドBlue Boyz Sports Clubを手がけるタイのグラフィティライターBEKOSとのコラボレーション。

VOYAGE KIDSの刺しゅうをあしらったWHIMSY SOCKSとのコラボソックス3,300円は、絶妙なくすみカラーがコーディネートのアクセントに。

壁面には、グラフィティ、イラストレーション、抽象画など、さまざまなスタイルのアートワークをディスプレイする。

多彩なアーティストのZINEを集め、軽トラで日本中を行脚しながらゲリラスタイルで出店する「ZINE SWAP MEET CAMP」の活動も行なっている。各地でいろんなつながりが生まれているそう。

INFORMATION

VOYAGE KIDS

大阪市浪速区恵美須東1-21-14(新世界市場内)
営業時間:13:00–19:00 / 休:木曜、不定休
Instagram:@voyage_kids
Instagram:@zineswapmeetcamp

club daphnia


街の喧騒を離れた黒い扉の先で
音の世界に没入する非日常体験を

多様なカルチャーイベントが行われる大阪・北加賀屋の名村造船所跡地のすぐそば、夜はひっそりと静まり返るエリアに、どこからともなく重低音が響いてくる。それが、このエリア唯一のクラブ、club daphniaだ。東心斎橋のCLUB STOMPを経た小坂良佑さんと浅原丞さんが、「音漏れを気にせずパーティーができるハコを作りたい」と、解体から設計、内装、機材の選定まですべて自分たちの手で築き上げた。共に会社勤めという事情もあり、オープンは週末が中心。市内の中心部から離れているという立地を生かして、ときには深夜から翌日夕方まで続くイベントも。ふたりがこだわり抜いた低音のうなりに体を揺らしつつ、酒を片手にゆったり音に浸るのがおすすめだ。スペースの拡大も計画中とのことで期待したい。

Recommender’s Comment

「音の良さも含め、最も居心地がいいと感じるクラブです。周囲には飲み屋もなく、あるのはコンビニ一軒だけ。明日のことは考えず、音に身を委ねて朝まで楽しむのがこの場所の流儀です。毎年、年末にはここでVOYAGE KIDSの周年パーティーをしています。今年は10周年を記念した特別なイベントになるので、ぜひチェックしてください!」

浅原丞さん。CLUB STOMPに勤務後、ドイツ・ベルリンに渡り音楽について学ぶ。PCとシンセサイザーを活用した音楽制作も行なっている。

小坂良佑さん。ベルリン帰りの浅原さんに誘われる形でclub daphniaをスタート。普段はWebディレクターとして勤務している。

ふたりが愛するダンスミュージックをメインに、テクノ、ハウス、レゲエ、トランスなどを掛け合わせた実験的なイベントを開催している。

INFORMATION

club daphnia

大阪市住之江区北加賀屋5-5-1 音ビル1F
営業時間:イベントにより異なる / 休:不定休
Instagram:@club_daphnia

tamutamucafe


音と食が交差し、お腹も心も満たされる
街の音楽好きがこぞって集まるオアシス

「アベチカさん(写真右)の料理が最高」とサカモトさんが太鼓判を押すのは、“おいしいごはん。おいしいおと。”をコンセプトに夫婦で営むダイニングバー。音楽イベントへのフード出店が多く、DJやバンドマンの常連客も。不定期で投げ銭ライブやDJパーティーを開いており、「音楽好きが集まるコミュニティセンターみたいなものですね」と店主の浅井さん(写真左)は笑う。アベチカさんがその日の気分で作る料理は、和食から韓国、台湾、エスニックまで幅広く、お酒が進むアラカルトが満載だ。玄米のおにぎりも人気で、主菜と副菜を組み合わせた“マイ定食”も楽しめる。気さくなふたりとの音楽談義とおいしい料理に心がゆるみ、つい長居してしまうのだ。

Recommender’s Comment

「tamutamucafeが音楽イベントでフード出店をしていたときに何度か食べてファンになり、そこからお店に通うようになりました。メニューは日替わりなので、訪れるたび違うものが味わえるのがとっても楽しいです。アベチカさんの料理はどれも好きですが、特にタイ料理がお気に入り。チャイなどもおいしいので、お酒を飲まない人も楽しめますよ!」

知り合いに協力を仰ぎつつ、タイルをあしらってDIYしたカウンターテーブル。「円形をきれいに作るのが大変でした」とアベチカさん。

グループで利用できるテーブル席もあり。くすみピンクの壁面やカラフルなインテリアが気取らない心地よさを演出する。

取材時は、アベチカさんの地元、島根の食材を取り入れた一品が豊富にスタンバイ。コーヒー、チャイ、スムージーなどノンアルメニューも充実し、お酒が飲めない人も安心して訪問できる。

ゲストが持ち寄ったショップやイベントのフライヤーを集約。直近のイベントは手に取りやすい位置に置くなど、日々入れ替えを行なって見やすくしているそう。

大阪拠点のアーティスト、UC EASTのドローイング(写真左)と、現在はオランダを拠点とするタトゥーイスト、ameの作品(同右)。交流のある作家が手がけたアートが、温かみのある空間をピリッと引き締めるスパイスに。

世界各国の紙幣をランダムに貼り付けて、遊び心のあるアクセントに。

DJブース&レコードの販売コーナーを設置。機材が揃っているので、試聴してから購入できるのが嬉しい。

INFORMATION

tamutamucafe

大阪市中央区日本橋2-18-6
営業時間:19:00–24:00LO / 休:不定休
Instagram:@tamutamucafe

【Wandering Osaka】

#01 岩井祐二と巡るCity Lights : Donuts、LIGHT YEARS OSAKA、Family Tree Bottles
#02 植杉友恵と巡るTOLMA、su、洗濯と喫茶 廻廻

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