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BEHIND CULTURE VOL.08 Amazing JIRO
◼︎Amazing JIRO
https://www.instagram.com/amazing_jiro/?hl=ja
◼︎au Shortについて
話題のドラマ・アニメ紹介/ヒット曲MV/動物など、10,000本以上の様々な動画コンテンツを視聴できるサービス。累計DL数は660万人を突破している。
https://aushort.auone.jp/lp/index.html
作品が生まれ、シーンとして広がっていくまでの裏側には無数の判断と選択、そしてそれを担う人たちの仕事がある。「BEHIND CULTURE」は、KDDI「au Short」サポートのもと、音楽・映像・ファッション・アートといったカルチャーの現場で、その“裏側”を支えてきた担い手たちに光を当てる連載企画だ。職業や肩書きの紹介ではなく、思考や判断の基準、そして次の時代のカルチャーをどう見ているのか。執筆は、カルチャーのさまざまな側面に光を当てるジャーナリスト/研究者の竹田ダニエル。
『国宝』や『地獄に堕ちるわよ』、そしてNetflixシリーズ『ガス人間』。話題作のスクリーンで、俳優たちの表情や佇まいに圧倒的なリアリティと驚きを与え続けている特殊メイク/造形アーティスト、Amazing JIRO。
藝大などで美術の基礎を修め、「何でも作れるようになりたい」という初期衝動から特殊メイクの世界へと飛び込んだ彼は、単に型を取り造形物をあてがうだけの技術者にとどまらない。監督や俳優との密な対話から潜在的なアイデアを引き出し、時には“観客に気づかれない中間の変化”までも緻密に設計することで、現場に臨場感をもたらし役者の演技を極限まで引き立てる。
CGやAIの技術が急速に進化し、表現のデジタル化が進む現代において、なぜいま「アナログな手仕事」の価値が再評価されているのか。「BEHIND CULTURE」第8回は、海外の最前線を知りつつ日本独自の表現を切り拓く彼に、制作の知られざるプロセスと、ものづくりが持つ根源的な魅力について訊いた。

──特殊メイクという仕事を始めようと思った原点について教えてください。幼い頃から、人を変身させたり、ものを作ったりすることに関心があったのでしょうか。
Amazing JIRO:小さい頃は、別に自分が変身したいと思ったり、誰かを変身させたいと思ったことはなかったです。ただ、0歳から4歳までアメリカで過ごしていて、その頃はやっぱりヒーローに憧れていましたね。バットマンとかスパイダーマンとか、超人ハルクが好きでした。超人ハルクなんかは変身するし、そういうキャラクターに何かしら興味を持っていたとは思います。
ただ、それを仕事にしようなんて当時は思うわけもなくて。高校2年生くらいの頃、進学校でしっかり勉強していたんですけど、いろいろな仕事がある中で、自分は将来何を選ぶんだろうと思っていました。
そんなとき、たまたま学校の進路適性検査を受けたら、普通はみんな「職業」が書いてあるのに、僕だけ「美術・体育・音楽」って科目が書いてあったんですよ(笑)。みんなと見比べても僕しかいなくて。でも、もともと絵は得意だったので、「せっかく適性が美術と出たんだったら」と、美術予備校に行ってみたんです。そこからですね、アートの道が本格的になってきたのは。
その後、美大に2校行きました。1年間、多摩美でガラスを勉強して、東京藝大では金属工芸を勉強したんですけど、材料に縛られたものを作るということが、自分には向いていなかった。いろいろな道具や素材を使って、何でも作れるようになりたいという欲求が出てきたんです。
「それを叶えられる仕事って何だろう」と思っていたとき、たまたまテレビで特殊メイクの特集をやっていて。「リアルな人間を作れる技術なら、何でもできそうだな」と思って、そこから特殊メイクに一気に切り替えました。

──Netflixシリーズ『ガス人間』についてお聞きしたいです。現実には存在しないものをリアルに成立させる必要がある作品だと思いますが、脚本や世界観に触れたとき、最初に思い描いたことや、表現するうえで大切にしたことはありますか。
Amazing JIRO:基本的には脚本家がいて、監督がそれをディレクションして、ある程度見えてきたところで僕たちに発注が来るので、まずは監督が想像しているものや、その意向、イメージに沿わせます。
ただ、それを具体的にビジュアル化できないからこそ僕らが頼まれるわけなので、そこに対して僕なりに何かしらの要素を足したり、提案したりしていくような感じですね。
──今回の作品ではCGも使われていますが、CGだけに頼らず、プラクティカルエフェクトを使うことになったのはどういう経緯だったのでしょうか。
Amazing JIRO:日本に関しては、もちろんいろいろなCG技術が発達していますけど、まずアナログ的な表現をある程度やって、それを助ける形でCGを使うということが、わりと多いと思うんです。それが日本の文化的なものなのかはわからないですけど。
──日本を代表する俳優の方々と仕事をされ、Netflixシリーズの仕事も増えています。特殊メイクによって俳優の顔を大きく変えることもありますが、演技や作品の世界観を引き出すために、現場ではどのようなことを意識していますか。
Amazing JIRO:『ガス人間』の前には『地獄に堕ちるわよ』があって、戸田恵梨香さんを細木数子さんに変えるということもやりました。老化させていくときは、役者さんの演技がちゃんと生きるというところも、すごく重要視しなきゃいけないんです。
あれはマスクを貼り付けているんですけど、その厚みであるとか。たとえば戸田さんを細木数子さんに変えるとなったときに、「もう少しふくよかにしたほうがいいんじゃないか」という話もあったんです。でも、若い頃からずっと戸田さんが演じているわけなので、その流れを考えながら、シリコンマスクの厚みはかなり考えましたね。役者さんに寄り添って、役者さんの意見も聞きますし、もちろん監督の意見も聞く。その中でベストをチョイスしていったという感じですね。
──役者さんによって、「表情をもっと動かしたいから薄くしてほしい」といった要望も違うのでしょうか。
Amazing JIRO: 『国宝』のときも『地獄に堕ちるわよ』のときも、最初に僕が思い描いていたものは、年輪を刻んだようなシワがもう少し深かったり、多かったりしたんです。でも、テストを重ねていくうちに少しずつ減らしていきました。
それは役者さんの要望もありますし、ストーリーの中で「美しく老けさせたい」という思いもある。いろいろな考えを集約しながら、最終的に形にしているという感じです。
──『ガス人間』の現場で、特に印象に残っていることはありますか。
Amazing JIRO:たとえば『ガス人間』でいうと、竹野内豊さんは一番バズっているというか(笑)、全然別のキャラクターになったので、あれは特殊メイク冥利に尽きますね。メイクだけでいうと、実は目から上と歯しか変えていないんです。でも、その部分的なパーツに役者さんがなりきることによって、キャラクターって完成していくと思うんです。
そういった意味では、たぶん皆さんが持っているイメージとは全然違う竹野内さんが出てきた。僕らとしても特殊メイクをやった甲斐がありますし、役者さんにとっても本当に別のタイプの人間を演じられる。そのために僕らの特殊メイクはすごく必要だったんじゃないかなと思います。

──ウィッグなども含めて、実際にすべて身につけて演じることで、役者さん自身も鏡を見た瞬間に「そのキャラクターになっている」と感じられる。それは大きいのでしょうね。
Amazing JIRO:CG用のポイントをつけて演技しているよりは、その場の臨場感というか、役への入り込み方は違うような気がしますね。
──俳優や監督からさまざまな要望を受けるなかで、「ここだけは譲れない」という特殊メイクに対する信念はありますか。
Amazing JIRO:どうだろう。どちらかというと、僕はサービス精神でやっているようなところもあるんです。もちろん見てくれるお客さんに向けて、というときもありますけど、基本的には一緒に仕事をしている監督や俳優がいるので、その方たちの意見や意向はなるべく汲むようにしています。
ただ、僕らには、監督たちがイメージしていないような専門的な知識もあります。たとえば老化でいうと、人が老けていくということがどういうふうに成り立っているのかは、僕らが研究して勉強している部分でもあるので、そういった専門的な部分については意見を出したりしますね。
──「作る人」は、一人でこもって制作するイメージもありますが、実際にはかなりコミュニケーションが重要な仕事ですよね。
Amazing JIRO:そうですね。この業界、そこが苦手な人は結構多いと思うんですよ。作ることに集中する人が多くて、外とのコミュニケーションが苦手というタイプも多いと思うんですけど、僕は意外とそこが好きですね。自分の世界や自分の思惑だけでやっていくというより、いろいろな意見を聞きながら、それに応える。そもそも「人を驚かせたい」「サプライズを提供したい」というのが始まりで、そのために何でも作りたいという欲求があったので。そういう意味では、人の意見や感覚を自分に取り込まないと、それが表現できないと思っています。
──『国宝』のように現実の人間の時間の経過をリアルに見せる作品と、『ガス人間』のように非現実的な存在をリアルに成立させる作品では、アプローチも違いますか。
Amazing JIRO:もちろん変わりますね。キャラクターを作るうえで、監督が何を重要視しているのかというところは汲み取ります。リアルに長い人生を経てきている人物なら、その人の人生観みたいなものが、老けメイクの一つのシワにも出ていると思うので、そういったことをしっかり考えます。
逆に、ファンタジー的に何かを作らなきゃいけないときは、登場したときの印象ですね。見た目の印象というか、その瞬間的なものを意識します。

──CGやAIの技術が進化する一方、アメリカではアニメーターをはじめ、技術によって仕事が変化することも議論されています。日本では制作費の問題もあります。そうした状況のなかで、特殊メイクだからこそ生み出せるリアリティとは何だと考えていますか。
Amazing JIRO:CGやAI技術というのは、アナログにとって脅威だったりすると思うし、実際に仕事を奪われている人もいると思います。でも僕自身は、デザイン画ではAIなんてもう使いまくっていますし、CGによって特殊メイクをフォローしてもらうことで、できる表現もすごく多い。だから、むしろ手を組むというか、仲良くなっていくことが重要だと思っています。
その中でも、アナログで作ったものを役者さんが実際につけて、そのキャラクターに入り込めるという状況は、特殊メイクだから叶えてあげられることだと思うんです。
CGの場合は、演技したあとにキャラクターを作っていく作業になるじゃないですか。でも特殊メイクなら、演技をする前から「自分がどういうキャラクターになるのか」を見られる。カメラマンや監督もそれを見た状態でものを作り込んでいける。それは本来、すごく正しいやり方だと思うんですよね。そういう意味では、特殊メイクが活躍する場はまだまだ続くんじゃないかなと思っています。
──技術が進化しても、支持される作品を見るとプラクティカルな表現が多く使われていますよね。見る側も、そうしたものを求めているのかなと感じます。
Amazing JIRO:そうですね。たぶん、どんなものでも新しいものが出てきたときにはそれが流行るんですけど、絶対に原点に回帰する瞬間があったり、そこからまたミックスされた「新しい常識」みたいなものが生まれたりすると思うんですよね。僕はそこを信じています。あとは、これから育っていく人たちは、創作に関わるときにみんなデジタルから入っていくと思うんです。でも僕らは、アナログを追求してきた最後の世代だと思うので、それをもちろん後進にも伝えていきたい。
これからアナログの価値がどんどん上がっていく状況が生まれてくると思うので、そこを僕は信じてやっていこうと思っています。
──海外から見ても、手描きの時代のスタジオジブリ作品や昔の特撮など、日本のアナログな表現にロマンを感じる人は多いですよね。
Amazing JIRO:そうですね。希少価値はどんどん上がっていくと思うんですよ、アナログ技術の。それを誰が継承していくのかというと、担える人はどんどん少なくなっていく。特殊メイク造形に関しては、その役目を僕が担っていこうかなと思っています。
──特殊メイクは、観客に「特殊メイクだ」と気づかせないほど優秀な場合もありますよね。これまで携わった作品のなかで、観客には気づかれなかったかもしれないけれど、実はすごく力を入れた、あるいは誇りに思っている仕事はありますか。
Amazing JIRO:それは言わせてもらえると助かりますね(笑)。
『国宝』でいうと、最後の吉沢亮さんの老けメイクはみんな注目して見てくれるんですけど、実はそれ以外の役者さんも老けていっているんです。寺島しのぶさん然り、皆さんそうです。
横浜流星さんも、少年から青年になって少し年齢を重ねたくらいのタイミングで、実は特殊メイクをしています。吉沢亮さんも、一度ちょっとだけほうれい線が深くなって、この辺(顎のあたり)にお肉が足されている。
あれはたぶん誰も気づいていないんじゃないかなと思っていて。ただ、それくらい自然に伝わってくれたら嬉しいし、ああいうところでも実は特殊メイクの力が使われているということは、こういう機会なので伝えさせていただきたいですね。
──一気に老けさせてしまうのではなく、観客が気づかないような中間の変化を作ることも必要なんですね。
Amazing JIRO:一気に老けちゃうと、見ている人も少し違和感を感じると思うんです。それが自然につながって見えたのであれば、その中間にある、「バレていない特殊メイク」というものが必要だったのかなと思います。
──制作工程そのものにも美しさや楽しさがあると思いますが、そのなかで一番好きな工程、「この瞬間が一番面白い」と感じるものはありますか。
Amazing JIRO:デザイン画ですかね。僕はずっと美術をやってきたので、デッサン力というのは自分の中で武器だと思っています。ある程度デッサンやデザインを起こしたときに、皆さんが思い描いているイメージとそれが合っているのかどうか、そこで結果がわかると思うんです。そのタイミングが一番楽しいというか。
デザインさえうまくいけば、その後の工程はそれを形にしていく行為になってくる。だから「作り出す」「生み出す」という意味では、最初のデザインは僕にとってすごく大事ですし、楽しいポイントですね。
──実際に顔につけてテストするなど、試行錯誤を何度も重ねる必要もありますよね。
Amazing JIRO:苦しいこともあります。どうしても期間が決まっている中で、「もっとこうしたかった」ということが後悔として残る作品もあります。
時間をかければかけた分だけ、テストも何度もできると思うんですけど、ハリウッドに比べて、日本は正直、予算と期間が少ない。そういう意味では、やっぱり後悔が残ることもあります。
ただ、何回かテストをやるうちにブラッシュアップされて、より良くなっていく。その過程はすごく楽しいですね。


──キャリアの初期にはハリウッドなど海外の現場を見て技術を吸収し、日本に戻ってその技術を伝えてきたと以前のインタビューでお話しされていました。当時と現在を比べて、日本とアメリカ、特にハリウッドとの違いをどのように感じていますか。
Amazing JIRO:昔は技術的な差もあったと思うし、かけられる予算というところでも、日本では表現しきれないものをハリウッドでは実際に表現している。そのことへの憧れはありました。でも今は、技術的な差はまったくないと思っています。
逆にいうと、日本は映画以外の仕事でも特殊メイクを活かせる分野をかなり広げてきた。僕自身もそうですけど、それによって対応できる表現の幅も広がったかなと思っています。
ハリウッドは、かなりCGに偏り始めて、アナログが減ってきている現状もあります。だからもう、ハリウッドを模倣して特殊メイクをやるというより、日本オリジナルの特殊メイクの使い道というか、そういうものをどんどん改革していく。それは僕らにしかできないのかなと思っていて、そこは楽しい部分ですね。
──今インタビューをしているこの場所は、スタジオであると同時にスクールでもあります。次世代への技術の継承にも取り組まれていますが、映像制作を取り巻く環境が国内外で大きく変わるなか、これから特殊メイクやものづくりを目指す若いクリエイターには、どんな力が必要だと思いますか。
Amazing JIRO:SNSがどんどん普及して、いろいろな表現が多様化しています。うちがスクールを立ち上げた18年前は、「映画の仕事がしたい」「ハリウッドに憧れている」「SFをやりたい」「ホラーをやりたい」みたいな、いわゆる特殊メイクという仕事そのものに憧れている人しか来なかったんです。
でも今、うちのメインの仕事はCMだったりするし、ビューティーやボディペイントなど、いろいろな表現をミックスすることでジャンルを広げてきました。それによって、今入ってくる生徒たちは「ビューティーメイクを勉強してきました」とか、「普段はビューティーメイクの仕事をしているけど、そこに特殊メイクの技術を取り入れたい」とか。あるいは映画以外の仕事が将来の目標としてあって、そのために特殊メイクが必要だから学びに来るという子も増えています。
そこの可能性は、僕自身もどんどん背中を見せていくというか、実践しながら広げていきたいなと思っています。


──SNSによって「表現の多様化が進んだ」というのは、具体的にはどういうことでしょうか。
Amazing JIRO:僕が昔、たとえばハリウッドの最先端の技術を学ぼうと思ったら、現地に行くしかなかったんですよ。今はSNSを見ればその技術が公開されていたり、画面上ではありますけど、アーティストに簡単に会える。現場の第一線で働いている方とつながることもできる。昔はできなかったことが、今はできるようになっています。
さらにいうと、自分が興味のなかった世界までどんどん入ってくるわけですよね。そういった意味では、専門性が薄れているというか、何でも入ってくるし、何でも見られる状況になっている。ある意味では厳しいと思うんですよ。狭い世界の中で何かを極めていくほうが、本当は楽なのかもしれない。でも、いろいろなものが見える以上、いろいろな表現に対応しなきゃいけないという状況も生まれてきていると思います。
SNSはそういった意味ではメリットもあればデメリットもあると思いますけど、これから表現という部分ではすごく広がっていくと思うので、いろいろな方向性に進む生徒たちが増えてくれたら、僕も面白いなと思います。
──以前、「新しい常識を作ることが自分の仕事」と話されていました。今、更新したい「新しい常識」はありますか。
Amazing JIRO:常識にとらわれないということ自体が、もう自分の日常になってきているので、特に「ここを変えてやろう」とは考えていないんです。
ただ、さっき言ったように、SNSでいろいろな情報が手に入りやすくなった状況で、「新しいものを作り上げるのはすごく難しい」と感じる人も多いと思うんです。でも、そうじゃなくて。情報はつながっているけど、カテゴリー自体はまだ明確に分かれていると思うんですよ。
たとえば僕が特殊メイクをやっている中で、ビューティーメイクを少し勉強してみると、まったく違う材料を使っていたり、違う表現をしていたりする。同じメイク業界でも、そこには垣根があったんです。でも、それを壊すことで新しい表現が生まれる。
だから「常識を壊す」というよりは、カテゴリーを壊して、違う分野と結びつくことで生まれる新しいものに、日頃から結構興味を持っています。

──人力で、フィジカルなものを作っているからこそ、ほかの表現者とのコラボレーションによって生まれるものもありそうですね。
Amazing JIRO:そうなんです。たとえばパフォーマー、ダンサーだったら、関節って手首と肘と肩じゃないですか。そこにもう一個関節を増やすことって、僕にしかできないと思うんですよね。でも、関節が一個増えることで、ダンスの幅が広がるかもしれない。
そうやってフィジカルで表現している方たちに対して、僕がアナログで対応することで、CGやAIを超える瞬間もあるだろうし、そういうところはこれからも探していけたら面白いかなと思います。とはいえ、AIの速さ、スピード感だったり、自分にはないイメージが参考になったりすることもすごくある。だから僕は、そういった意味では何でも取り込んで、いろいろなものに対応できるようになっていきたいと思っています。
特殊メイクに限っていうと、実はいろいろな作業があるんですよ。デザインをする、マケットを作る、実際に彫刻をする、型取りをする。その彫刻したものを型取って素材を流し込み、それを渡したら今度は実際にメイクをする。
ハリウッドは、実は分業制なんです。それぞれに専門の人がいる。だから時間もかけられるし、お金もかかるんですけど、よりいいものを作れる状況があります。
一方、日本のアーティストは基本的に全部こなせないといけない。そこは結構大きな違いですね。
ある意味、昔は分業制に憧れることもありました。でも今となっては、僕はもともと「何でも作りたい」というところから始まっているので、すべての作業を自分でできるという強みを活かして、いろいろなジャンルに対応できる。今はその状況が楽しいし、やりがいがあります。
でも、気持ちいい瞬間もあって。たとえばイギリスも分業制なんですけど、この間、大きなイギリス映画の仕事で、現地のアーティストと現場でコラボしたことがあったんです。
特殊メイクを貼り付けて、メイクすることを専門にしているアーティストが来て、「どんなもんだろう」と思ったわけですよ(笑)。
そのときはテストメイクだったんですけど、時間がないから「半分ずつやろう」と言って一緒にやったんです。そこで、クオリティは絶対に負けていなかったというか。めちゃくちゃ意気投合して、向こうも「リスペクトしている」と言ってくれて、今でもやり取りしています。
専門的にずっとやってきた人と、そこで実力を交わして、一緒にやり合えた。それは自分にとっても、すごく自信になりました。
──Netflixのようなグローバル企業とも仕事をされる一方で、個人のアーティストともコラボレーションされています。相手によって仕事の違いや醍醐味、そこから得られるものはありますか。
Amazing JIRO:企業であれ個人であれ、いろいろな方とコラボすることによって、毎回、相手によって自分の立ち位置が変わるんですよ。デザインからやるときもあれば、デザインをいただいてそこに応えることもある。一緒にフィフティ・フィフティで物事を考えていく場合もある。そうやっていろいろな対応ができるということが好きなんです。そもそも僕は飽き性なので、自分が何者にでもなれる状況ってすごく好きなんですよね。
今は「特殊メイクアーティスト」という名前がついていますけど、僕自身はその肩書きに縛られるつもりもなくて、いろいろなことをやっていきたいと思っています。
いろいろなジャンル、企業であれ個人であれ、コラボしていくことはこれからもやっていきたい。それは僕にとって、もともとの「何でも作りたい」というところからつながって今があるので、すごくいい環境だなと思っています。

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