DJ・モデルとして活躍するLicaxxxと、バンドWONKのリーダーである荒田洸が送る鼎談連載。音楽活動はもちろんのこと、その周辺を取り巻くさまざまなカルチャーにまつわる活動している二人が、リスペクトしている人や、とにかく会ってみたいと思う人にインタビューをしていく。
第一回は、ヒップホップ的言葉遊びやブラックミュージックの要素を取り込むシンガーソングライターのiriをゲストに迎えてお送りする。iriのライブツアーのオープニングDJをLicaxxxが務めたり、iriのバックバンドとして荒田洸が参加したり、と普段から交流の深いこの三人。音楽を始めたきっかけや歌詞のインスピレーション、これからどんな音楽を作りたいかなどなど、近い距離感で掘り下げていった。
鎌倉で飲む!
Licaxxx:いきなりですけど、iriさんはよくお酒飲むんですか?
iri:めちゃくちゃ飲みます!
荒田:飲みっぷり最高ですよね! 以前、福岡の伝説の夜を俺、目撃してますよ!(笑)
iri:ツアーファイナルの打ち上げのときに、芋焼酎を飲み過ぎて、首がすわらなくなって、そのまま潰れたことがあります(笑)。
Licaxxx:でも飲みに行っているイメージないんですよね。なんだろう、あまり生活の実態とか見えない感じ。
iri:いやーめちゃくちゃ飲みに行ってますよ。鎌倉とかで飲みますね。
Licaxxx:逗子に住んでいて鎌倉で飲む! いいですね〜。
iri:そうです。逗子と鎌倉なんてすごい近いので、終電逃すくらいまで飲んでも、良きタイミングで帰れますしね。
荒田:だから都内で見ないわけだ!
iri:東京では飲まないですね。
荒田:都内のクラブにも遊びにきたらいいのに。
iri:全然行かないですね。どこかおすすめのところってありますか?
Licaxxx:THE ROOMとか、iriさんに合うんじゃないですか? 元々、沖野(修也)さんとかがDJをしていて。ジャズやハウスがメインで、お酒もおいしい。
荒田:シブめの、大人なイベントしてますよね。
Licaxxx:しっぽりもできる。
iri:そういう意味では、Licaxxxさんのプライベートもめっちゃ気になります。
荒田:じゃあ教えてください!
Licaxxx:飲む、DJする、レコ屋行く、仕事する。
iri:レコ屋はどこ行くんですか?
Licaxxx:テクニークが多いですね。家からも近くて、テクノやハウスの新譜がよく入ってくるので。
荒田:いつも何時に起きるんですか?
Licaxxx:仕事によって、ですね。仕事が朝からなら朝に起きるし、夕方からだったら昼くらいに起きて。
iri:めっちゃ忙しそうに見えます。
Licaxxx:そうでもないですよ。めちゃ寝てます。今日は12時くらいに起きて、打ち合わせをしてから、ここに来ました。
荒田:昨日は飲んでたんですか?
Licaxxx:朝4時半くらいまで飲んでました(笑)。
荒田:こういう仕事って休みも不規則で。体調管理むずかしくないですか?
Licaxxx:忙しいほうが体調管理されてないですか?
荒田:わかるわー。忙しい時期が終わった瞬間に体調崩しますよね。
初めて買ったCDは、ジャニーズ
荒田:今日は、iriさんの小さい頃からを聞きたいなって。生まれはどちらですか?
iri:生まれは世田谷区で、育ちは逗子です。このあいだ判明したのは、高木完さんが(逗子の)同じ中学出身だった。
Licaxxx:それはすごい。
荒田:小学校の頃は何してたんですか?
iri:小学校の頃は…なんか、男の子っぽかったですね。男の子に混じってサッカーしたり。木登ったり。
荒田:男子ですね(笑)。「変わってるね」って言われてましたか?
iri:いや、「変わってるね」というより「なんだコイツ」みたいな(笑)。
Licaxxx:歌うようになったきっかけは何でしたか?
iri:小学生のときに家でMTV、スペシャとかばかり見ていた影響ですかね。元々はアニメのチャンネルが好きで、その隣のチャンネルが音楽チャンネルだったから、その流れでアニメと音楽を行き来するようになって。そこで大きいステージで歌い上げる人を見ているうちに、気づいたら憧れるようになっていました。
荒田:ちなみに初めて買ったCDは何ですか?
iri:タッキー&翼の「Venus」ですね。あれは即買いしました。ラテン調なんですよ。皆さんは何ですか?
Licaxxx:親に買ってもらった初めてのCDが嵐で、自分のお金で初めて買ったのがストロークス。
荒田:俺は小3の時にクーリオっていうギャングスタのラッパーのCDを買いました。
Licaxxx:キャラが出るなあ(笑)。iriさんは、音楽を始めた頃ってブラックミュージックっぽい感じではなかったんですか?
iri:そうですね。ギターの弾き語りをしていたので、七尾旅人さんがすごく好きで、そういった影響もありますかね。
荒田:それは中学生くらい?
iri:中学生のときは、テニス部でした。みんなやっぱりあの服装、スコートとサンバイザーに憧れるんですよ。でも、元々小学生の頃からヒップホップダンスをやっていて、中学生のときもダンススクールに通っていたんですよね。そこからヒップホップというものへ少しずつアプローチしていきました。
Licaxxx:ヒップホップへのアプローチもありつつ、それでも弾き語りっておもしろいですね。
iri:自分で曲作ろうって思ったら、やっぱり音のなるものが必要じゃないですか。そのとき母のギターがあったので、まずは手探りで弾いてみて、好きな音を見つけたり、録音してループさせてみたり。それが18歳くらいですね。
荒田:そのあとは?
iri:大学通いながら、二十歳くらいのときに受けたオーディションでグランプリをもらって、その特典みたいな感じで、ニューヨークに二週間行きました。ライブを見たり、セッションに参加したり。
荒田:セッションはヤバい。
iri:セッションはすごかったですね。キャロル・キングが昔、弾き語りしていたライブハウスでセッションをしたり。日本人は全然いないなかで、(Maroon 5の)「Sunday Morning」のカバーを、現地のミュージシャンとセッションしたりしました。
Licaxxx:それは度胸つきますね。
デビューアルバムから今の曲作り
Licaxxx:デビューアルバム『Groove it』のときは、どういうものを作りたいと思っていましたか?
iri:うーん、けっこう手探りで作った感じですね。そのなかで、自分の好きなトラックメイカーさんに参加していただいたりしました。STUTSさんとか、Dorianさんとか。
Licaxxx:Dorianさんかあ! 割とディスコ系の四つ打ちとか好きなんですね。
iri:やけのはらさんが大好きで。元々は七尾旅人さんからやけのはらさんを知って、そこからDorianさんに辿り着いて。すごく好きになりました。それで実際に『Groove it』に参加していただいて。
荒田:じゃあトラックメイカーはけっこうつながりがあるということですかね。
iri:そうですね。ヒップホップだけど、ゴリゴリのギャングスタという感じじゃない方々だったり。元々、自分が好きで聴いていたというのもありますね。
荒田:今の曲作りの話になりますが、やはりヒップホップへの意識は強いですか?
iri:はい。でも、自分がラッパーという意識やラップをやるという感覚はないですね。ラッパーからしたら、こんなのラップじゃない、と言われてしまうかもしれませんね。自分が気持ちいいように曲にのせる感じです。
荒田:現在のiriさんの楽曲のように言葉をつめていくスタイルはいつ頃からですか?
iri:弾き語りを始めた頃に、スリーコードのループを録音して歌をのせていたんですよ。それで自然とこういうスタイルになっていきましたね。
荒田:日本語の歌を弾き語りで歌おうとすると、日本語の特性として、あまり細かく詰めていく、というのはなかなかならないんですよ。だから「自然と」というのはすごい。じゃあ、歌詞のインスピレーションはどんなところから湧きますか?
iri:インスピレーションという感じはあまりないかもしれません。そのときに考えていることや思っていることをそのまま歌っていますね。ああしよう、こうしようって伝えるよりは、「自分はこうなんだよね、この感じわかる?」という(笑)。
荒田:誰かに向かってなにかを伝えるっていうよりは、等身大で素直に歌う感じですかね。
iri:思っていることを歌って、それが自然とシェアできたらいいなと思います。なるべく身近に感じてもらえたらいいですね。
荒田:だからか、前に(iriの)ツアーのアンコールで弾き語りを聴いたときに、歌詞がめちゃくちゃ素直に入ってくるなと感じた。その等身大さが、すごく合っていた。
Licaxxx:弾き語りに戻ってきたと。等身大の歌を歌っている人が一番いいですよね。
最近ハマっている音楽とこれから作りたい音
荒田:最近、iriさんのインスタを見て、レジー・スノウ聴いてるなって思って。好きなんですか?
iri:レジー・スノウ大好きですね。
荒田:いいですよね〜。ほかには最近好きな音楽ってあるんですか?
iri:トム・ミッシュとか、あとはダニエル・シーザーもよく聴きますね。
荒田:ダニエル・シーザーはめっちゃいい! 俺最近、ダニエル・シーザー以外聴いてない。今はそういった音楽聴いているわけじゃないですか。次の作品に活かしたいなあって思ったりしますか?
iri:うーん、今までとは違ったノリの曲をもっと増やしたいなと思っていますね。8月29日に新しいシングルをリリースするんですけど、今回の作品では、今までトラックメーカーさんにアレンジしてもらっていたところをプレイヤーさんに参加してもらったりしていて。バンドサウンドに仕上げたいと思っていたんです。
荒田:なるほど、より生音っぽいサウンドにしたかったと。
iri:そうです。実際に作ってみて、とてもしっくりきたんですよね。たとえば、ハウスっぽいサウンドとかももちろん好きですが、自分の好みとしては生音のほうかな、とも思いました。今回バンドサウンドに仕上げて、これからもっとこういう音を増やしていきたいですね。
Licaxxx:バンドサウンドならライブもより映えそうですよね。
iri:そうなんです! ライブも生音でやりたいですね。
Licaxxx:では最後に。音楽をやっていてよかったと思う瞬間を聞かせてください。
iri:ライブが終わったあとに、フェスとかだと外に出たりもするじゃないですか。そのときに、お客さんに「握手してください」とか言ってもらえるのもうれしいんですけど、女の子が泣きながら抱きついてきて、「いつも勇気もらってます!」って言ってもらえることがあって。あそこまで心を動かせているんだなというのがすごくうれしい。もちろんいい曲で、楽しませる、というのも大事だと思うんですけど、自分はそこまでいきたいなって思っています。