[ZINEspiration]Vol.21 ベイブひかり

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui

[ZINEspiration]Vol.21 ベイブひかり

photography_Kayoko Yamamoto, text_Yuri Matsui

クリエイティブに携わる人々に、お気に入りのZINEをレコメンドしてもらう連載シリーズ『ZINEspiration』。今回は、スティーヴ・ブシェミやビル・マーレイなどのセレブリティをコラージュしたアイテムや、自身の恋愛経験を元にしたZINEなど、ファニーでキュートなテイストの作品を生み出しているベイブひかりが登場。普段はリフォーム会社で働く「OL」だという彼女が創作活動をはじめたきっかけとともに、それぞれに思い出の詰まったZINEを紹介してもらった。

学生時代からコラージュをつくっていたベイブひかりは、彼女の勤める会社の先輩が勧めてくれたVOILLDのイベント『TOKYO ART BOOKAKE FAIR』に足を運んだことがきっかけでZINEの制作をはじめた。

「『TOKYO ART BOOKAKE FAIR』でいろんな人の作品を見て、ZINEって面白いなと思ったんです。最初のZINEは、当時の彼氏に二股をかけられて振られた悲しい気持ちを詰め込んでつくったもので、横浜の小さなアートフェアに出しました。そのときにスティーヴ・ブシェミのTシャツもつくってインスタにアップしたら、みんながすごく反応してくれたから、セレブのグッズもつくり続けるようになりました。2冊目のZINEは、次の彼氏ができたから嬉しくてつくりました。だから全ページピンク色(笑)。私の制作は恋愛が原動力みたいです。基本、平和に過ごしてるけど、恋愛に関してだけは異常に振れ幅が大きくて。自分の気持ちを言葉にするのが苦手なので、つくることで落ち着くんです」

言葉にならない心の揺れや想像のなかの世界を描き出すベイブひかりのコラージュは、そのすべてがなんとExcelでつくられている。ZINEの制作手法にも、会社員としての経験が活きているのだそう。

「大学卒業後、しばらくアルバイトをしていたんですけど、就職するために、おじいちゃんおばあちゃんばかりのパソコン教室に通ってWordとExcelを習ったんです。その教室で、Excelで画像の編集をしたり、文字を入れたりする方法を教わったんですけど、それでコラージュをつくれることに気づいて。そこからExcelでコラージュをつくってInstagramにアップしはじめて、今もZINEやグッズの入稿データもExcelでつくっています。
ZINEのつくり方は、会社で教わりました。私は会社で社員旅行のしおりをつくる担当なんですけど、会社の複合機で両面コピーしてホッチキスで留めるっていう作業を、『TOKYO ART BOOKAKE FAIR』を勧めてくれた先輩から教えてもらってたら、その先輩から『これZINEのつくり方と一緒だよ』って言われて、『そうなんだ!』って」


昨年、ENJOY MUSIC CLUB主催の、クリエイターがEMCのTシャツをデザインするイベント『EMCのTシャツ祭』に参加したことがきっかけで、依頼されてものをつくる楽しさを知ったというベイブひかり。今後もそうした制作をより積極的に行っていきたいと話す。

「セレブのグッズもそうなんですけど、喜んでもらえることが嬉しい。自分が楽しんでつくったものが人に喜ばれるのって、生きていて一番幸せ。彼氏ができたときよりも嬉しいと思えるくらい。ものをつくること自体の達成感もあるし、つくったものを人が認めてくれることで『いいんだよ』って言ってもらえている感じがします」

【ベイブひかりがレコメンドするZINE5冊】

Kitabayashi kengo、OTUYUCHAN (IG:@ohiana_summerangel)、NANOOK (IG:@nanoooook)、y160
『anal dragon』

「オヒアナさん(※当時OTUYUCHAN)は、ZINEをつくるきっかけをくれた会社の先輩の友達で。初めてつくったZINEを見せたのもその先輩だったんですけど、「友達にZINEをつくっている人がいるからZINEの交換しなよ」って紹介してくれて。郵送で自分のZINEを送ったら、オヒアナさんがお手紙と一緒にこのZINEを送ってくれて、はじめてZINEの交換をしました。そのことがすごく嬉しくて、宝物です。4人でつくったみたいで、イラストとかコラージュとかいろんな作品が載っています」

榊原ミドリコ (IG:@midorikotobuki
『本』

「ミドリコさんとは『TOKYO ART BOOKAKE FAIR』で知り合いました。その頃、私は『Holy Salt』って書いた盛り塩のステッカーをつくってて。そうしたらたまたまミドリコさんも盛り塩のステッカーをつくっていて、そこから仲良くなったんです(笑)。去年は一緒に展示をやったりしました。このZINEはその知り合った日に買ったもの。独特な感じが大好き。見てすぐにミドリコさんの絵だってわかりますよね」

ドキドキクラブ (IG:@dokidokiclub_insta2
『非エロ本』

「これ、実は私じゃなくてお父さんとお母さんが買ったZINEなんです。もともと家で『ドキドキクラブさんっていうすごく面白い人がいるんだよ』って話をしてインスタを見せたりしていて。私がはじめて『東京アートブックフェア』に出たときに、両親が来てくれたんですけど、ブースが近かったからドキドキさんに両親を紹介したんです。そのときに買っていたのが、エロい写真にドキドキさんが絵を描いているこのZINEで。私が好きなものを否定せずに、面白がってくれたことが嬉しかった。表紙がかわいくしてあって、外で見ても一見中身がエロだとわからないようになっています」

コバイ (IG:@kobai_55
『kobax』

「VOILLD主催の『TOKYO ART BAZAAR』で見つけて、衝撃を受けて買いました。ニューヨークに行ったときのレポートが書かれているんですけど、それがものすごく面白い。履いてきた靴に途中で穴が空いちゃって、靴を買ったけど、箱を開けたら片方が23.5cmで片方が30cmで買って早々に捨てたとか、全部のエピソードがやばくて。私、文字がいっぱいのZINEって苦手なんですけど、これは文字がたくさんなのに何度も読んでます。絵も独特ですよね」

Sakiyorkie (IG:@sakiyorkieee
『Fallin’BLUE』

「2年くらい前にやった展示を見に来てくれた女の子から、自分もZINEをつくりたいって相談されて。『何でもいいからまとめちゃえばZINEになるから、できたらいつか見せてね』って伝えたんです。そうしたら、こないだ出店していたイベントにその子が来て、自分がつくったZINEを持ってきてくれて。ちょっとでもきっかけになれているのかもと思って、すごくかわいく感じたし嬉しかった。青がテーマのZINEなんですけど、自分が最初につくったZINEを思い出して懐かしかったですね」

INFORMATION

ベイブひかり
Instagram:@babehikari

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