vol.EX KID FRESINO / ラッパー
平成という時代は、どんな色をしていただろう。
俳優 仲野太賀がカメラを構え、平成に生まれた表現者たちの素顔と向き合う。
橙[dai-dai] vol.00 太賀
橙[dai-dai] vol.01 池松壮亮
橙 [dai-dai] vol.02 菅原小春
“ラッパーがまだやれていないことを、どんどんシーンに提示したい”
仲野太賀:すごく気になってたのが、フレシノさんは、Zineを作ったりもしてるじゃないですか。そういった写真的な表現をしようと思ったきっかけって何だったんですか?
KID FRESINO:中学生の時から写真は撮っていて、それの延長ですね。NYに行ったタイミングで一回やめて、日本に戻って来た後に、妻が写真家だったこともあって、また始めたって感じですね。
仲野太賀:NYに行ったのは何歳の頃なんでしたっけ?
KID FRESINO:19歳の終わりです。音楽のエンジニアリングについて学ぶ学校に行きたかったんですが、 TOEFLのテストで高い点を取らないと入学できないのに、英語力ゼロの状態だったので、まずは英語の勉強をしないといけなくて。そこからダラダラ2年間ぐらい語学学校に在籍し続けました(笑) それでようやくTOEFLもクリアして、日本に帰ってビザの準備をしていたら、トランプ大統領に変わったんですよね。その影響で地価が上がって学校が潰れちゃったんです。
仲野太賀:すごいですね。自分のプランが全部変わっていって、最終的に戻ってきたと。
KID FRESINO:でも実際にその2年間で、すでに音楽は作り始めていたし、ラップで楽しくはなっていて。裏方としてやっていこうって思ってたけれど、EPを出したぐらいのタイミングから、もうこれはラップをしろってことなのかなって思うようになりました。
仲野太賀:それで日本で腰を据えることにしたんですね。京都に住み始めたのもその頃ですか?
KID FRESINO:日本に帰って来て1週間後には京都に住んでましたね。特に所縁の地ってわけじゃないんですけど、町が好きだったからって理由だけで、しばらく京都で生活していました。
仲野太賀:憧れるな〜ふらっと京都移住。僕は13歳ぐらいから仕事を始めていたので、なかなか身動きが取れなくて。自分から発信していくアーティストの方と違って、役者って来るものを待つ仕事だったりするから、たまに不自由を感じることもありますね。海外の規模と比べると、まだまだ日本の俳優は、たくさん働かないとどうにもならないので、売れてる人でも結構働いてます。
KID FRESINO:あんまり作品を選べる環境にないってことですか?
仲野太賀:選べるんですけど、来た話の中から選ぶことが多いです。受動的というか、縁というか。そこは面白い部分でもありますね。フレシノさんは、いろんな方とコラボされてるじゃないですか。それはやっぱり自分から声をかけるんですか?
KID FRESINO:そうですね。人と作るのがそもそも好きなので。1人ではあんまりやらないって感じですかね。
仲野太賀:ラップの内容もそうですし、囚われていない軽やかさがあって素敵だと思います。役者とかは、やらないんですか?撮影していて、めちゃくちゃフォトジェニックだったので、ふと思って。
KID FRESINO:全然考えてないですね。めちゃくちゃ演技は好きですよ。太賀さんの。
仲野太賀:あ、僕のですか?ありがとうございます(笑)
KID FRESINO:だから、この企画に呼ばれたのもすごくビックリしました。実は日本に帰って来てから、妻に『ゆとりですがなにか?』を観せてもらって。放送が終わった後なんですけれど、「このドラマ面白いよ」って言うから観てみたら、めっちゃハマって、大好きになりましたよ山岸(笑)あの役は転機だったりするんですか?
仲野太賀:転機でしたね。10年とかのキャリアの中で一番反響があったんで。あれがなかったら食えてなかったかもしれません。
KID FRESINO:これからもすごく楽しみです。太賀さんがおじさんになってからの演技も見てみたい。なんかもう、いつもドラマとか観ていて、早く太賀さん映らないかな~なんて思うんですよ(笑)
仲野太賀:嬉しいですね。どういう演技がグッとくるんですかね?
KID FRESINO:なんだろう、やっぱり顔かな?(笑)表情が豊かで、観ていてすごく楽しいんです。『50回目のファーストキス』も、太賀出てるじゃん!って映画館に行ったぐらい。妻も好きなので一緒に観ました。
仲野太賀:癖が強い役ですもんね(笑)あのキャラが面白がってもらえるのは嬉しいです。
KID FRESINO:あれ?あんまり、キャラ物は本質ではなくて、ノリノリでやってるわけでもないんですか?
仲野太賀:普段の僕はあそこまで振り切れてないです。でも完全に染み付いてますね(笑)
ああいうポップな役には役者としてすごく救われてます。ただ、もっと他にも表現したいこともあるので、いろんな作品との縁を手繰り寄せる為にも、自分でハンドルをちゃんと握って、やり過ぎない程度に楽しんでいこうって思ってます。
KID FRESINO:そうだったんですね~。僕は好きですけれど。そういえば太賀さんってヒップホップ好きなんですか?
仲野太賀:ジャンルとしてヒップホップに詳しいわけではないです。好きな人が何人か居て、それだけ聴いてるって感じですかね。フレシノさんもその1人です。だから、これまでの作品を聴いてきて、個人的には、常に新しい要素が更新されている印象があるんですよ。最後に、楽曲制作において今どんな気分なのか聞きたいです。
KID FRESINO:前までは、すごい作品をひとつ発表したいって考えでした。でも最近は、”ラッパーがまだやれていないこと”を、毎作品に加えていって、アーカイブスとして貯めて、若い子たちに残していきたいって思ってます。ラッパーがまだやれていないことを、どんどんシーンに提示したいです。一つの作品での表現より、何曲かを通して聴いた時に、新しさだったり、何かを感じてもらえたらいいなと。