CULTURE 2017.11.08

~トランプ時代のアメリカ文学~アメリカ文学を 読むんじゃなく、抗うのなら。

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Contribution & Text—Hikaru Fujii / Illustration—Naomi Nemoto / Edit—Makoto Hongo / Edit Assistant—Shu Nissen, Mami Chino

現代作家が“炎上”する時……

~ツイッター名言集~

俺たちのディランはあの男だ!


ハリ・クンズル 2016/10/13 (木)
2030年にケンドリックがノーベル賞を受賞しなかったら大問題だな

2016年のノーベル賞はボブ・ディラン。オッズには名前があれど、厳密には詩人でも小説家でもないディラン受賞はあちこちに波紋を広げた。ディラン世代の作家たち(たとえばスティーヴン・キング)は絶賛したが、若手作家たちには微妙な空気が流れた。書店が減り、文学の読者が減っている最中で、専業作家が選ばれる方が今後に繋がるんじゃないか。これからキャリアを築いていかねばならない作家たちがそう感じても無理はない。 その斜め上を行ったのが、パキスタン生まれ、『民のいない神』(2011)が日本でも翻訳されたハリ・クンズル。ディランが受賞なら、2030年に受賞すべきはケンドリック・ラマーだろう、と大予言したのだ。その一言は、ラマーが代表する新しい世代の表現者たちと歩んでいくという決意表明である。

作家vs.ユーチューバー?


ジョン・グリーン 2017/7/23 (日)
2007年のYouTubeドラマと2017年のYouTubeドラマの違いは、ランボルギーニを持っているユーチューバーの数が一気に増えたことだな

 『さよならを待つふたりのために』(2013、『きっと、星のせいじゃない。』として2014年に映画化)という青春小説の名作を送り出したジョン・グリーン。難民問題や政治についての社会的発言も多く、YouTube上でのビデオブロガーでもある。そんな彼のツイートでは、本の刊行に合わせて何千枚という紙にサインしていくという修行が進行していく様子も拝めるのだが、グリーンがネットの住人でもあることを裏付けているのが今回のツイート。あの有名人をYouTubeで見られる!のではなく、今やYouTubeで有名人が作られる時代。小学生が憧れる職業はユーチューバー。ユーチューバー+高級車という組み合わせが、10年前までは想像もできなかったことを、グリーンは証言している。

トランプについて言わせろ! 3連発


ゲイリー・シュタインガート 2017/5/11 (木)
短くもトラブルだらけのドナルド・トランプ大統領時代を、歴史書は教訓として取り上げるのか、それとも、もう歴史書なんてなくなっているか

 『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』(2013)が日本でも紹介されているシュタインガートはソ連に生まれてアメリカに移住した変わり種作家。その経歴がゆえか、アメリカの政治についてツイートは非常に多い。歴史の知識なんて知ったことか、というトランプ近辺の動きを指したこのツイートは、未来に向けた分かれ道をギョッとする形で描いている。歴史書がトランプ時代を過去のものとして“反省”できる道がひとつ。もう一つは、このままの流れでもはや誰も歴史書なんて読まず書かない時代に突入してしまい、社会が自分のエゴだけを追求する人々だらけになっている、という道なのだ。日頃はなかなか気付けない、決定的な瞬間が目の前にあることを教えてくれるのは、やはり作家の感性の賜物だろう。

セス・フリード 2016/11/13 (日)
通報者:男がバズーカを持って、私の家に来ています。『バズーカ・タイムだ!』とずっと叫んでいるんです。緊急通報オペレーター:彼が何かするまで待ってください

このツイートが、一週間前に当選が確定していたドナルド・トランプのことを指していることは疑いようがない。しかし、『大いなる不満』(2014)で寓話と幻想に満ちた世界を作り上げたフリードのツイートは、それ自体がひとつの寓話のようになっている。「バズーカ・タイムだ!」と叫んでいながら放置されている男女は、その実、ロシアでも、ドイツでもフランスでも、日本でも事欠かないからだ。その現状を140文字の作品に昇華するあたり、フリードはやはり冴え渡っている。

マット・ジョンソン 2017/9/19 (火)
この世の終わりがここまでアホらしいとは思わなかった

もちろん、「この世の終わり」とはトランプ政権になってからの迷走ぶりを指している。不正義に抗議する、正面からの抵抗ももちろん重要なのだが、噴出する差別意識も政権のマッチョな行動もすべて引っくるめて一言で皮肉る姿勢は、作家の武器はやはり言葉だということを教えてくれる。

フットボールへの愛がゆえに


ダニエル・アラルコン 2017/6/3 (日)
全文明世界はセルヒオ・ラモス憎しで団結している

アラルコンといえば、『ロスト・シティ・レディオ』や『夜、僕らは輪になって歩く』などの小説家であり、アメリカでのスペイン語ラジオ放送局の創設者であり、ジャーナリストであり、熱狂的なフットボールファンである。最後の点については、長年のアーセナルFCのサポーターであるがゆえに、美しいフットボールだがタイトルにはなかなか恵まれないという悲運を毎年のように味わう、それがアラルコンの立場である。
2017年6月3日(土)は欧州クラブ最高峰を競うチャンピオンズリーグ決勝。この日、レアル・マドリードとユベントスが対戦し、大接戦が期待されたのだが、蓋を開けてみれば4-1でレアルの圧勝に終わった。アラルコンが“燃えた”のは、試合も終盤、ユベントスのMFフアン・クアドラードと交錯したレアルDFセルヒオ・ラモスが派手に痛がって、クアドラードを退場に追い込んだ場面。どう見てもラモスの“演技”だったこのシーンに、あんな真似を許すな!と盛り上がったのだ。その思いを支えるのはもちろん、ときには勝負よりも美学を優先しているように見えるアーセナルへの愛情であり、芸術家としての自負である。

僕らはみんな紙の民


シャーマン・アレクシー 2016/11/22 (火)
電子書籍のファンたちよ、教養があってセクシーな人は君たちに恋してくれないぞ。だって、君たちがどんな素晴らしい本を読んでいるのか、その人には見えないんだからな

アメリカ先住民の血を引き、『はみ出しインディアンのホントにホントの物語』(2010)などの作品でファンも多い小説家・詩人のアレクシー。1990年代のデビューから変わらず若々しい感性を保ち続けてきた彼だけに、このツイートにもただの“懐古厨”とは違うユーモアが漂っている。本を読んでモテたい気持ちあるだろ? じゃあ紙の本のほうがアピール力高いんだぞ、というその言葉には何とも言えない説得力がある。だけれど、アレクシーの一言は、じりじり後退を続ける書店の文化を守りたいという真􄼨な思いから発せられたものだろう。 そんな彼も、ツイッター上の罵詈雑言に耐えかねて、2017年の元日を最後に、投稿をやめると宣言してしまった。誰もが自由に発信できるメディアとは諸刃の剣でもある。

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