ーアンダーグラウンド・レジスタンス(以下UR)総帥のマッド・マイクは「We Will Never Surface(我々は決して浮上しない)」と“アンダーグラウンドであること”を貫いてきました。そういった美学もあるとは思います。
DYE: URの提唱するアンダーグラウンドは、覆面性。フロアを真っ暗にしてフラッシュだけをたいて、ステージ上の存在をわからないようにする。ウータン・クランの「C.R.E.A.M.」もそれだよね。アメリカの話をするなら、俺らのいる環境よりメインストリームとアンダーグラウンドの差が顕著だと思うんですよ。「TOP 40」って言葉もあるくらいだし。でも最近は、ケンドリック・ラマーとか見てると、ヒップホップに関してはあまり差はないのかな?
Ren: 覆面性というところでいうと、顔を出さないことでパフォーマンスする側も観る側も音に集中できる。重要なのはそこだと思うんです。
―たしかに、暗闇のなかテクノが鳴り響くフロアでこそ味わえる体験もあります。音にハマッていく、あの感覚。
Ren: THA BLUE HERBには、ヒップホップでありながら、それを強く感じるんですよね。
―そこもDYEさんのセンスによる部分が大きい、と。
Ren: ホント、DJらしいDJだと思います。
DYE: DJしかできないんで。
Ren: DJって職人なんですよ。そういう気質が最もハマる職業。
DYE: それこそジェフ・ミルズなんかはザ・職人だよね。
Ren: (ジェフ・ミルズの)「The Bells」で何度もぶち上げられまくったなあ。デリック・メイの「Strings Of Life」も。
VIDEO
Jeff Mills – The Bells
DYE: フロアで聴くとかっこいいんだよね。「Knights Of The Jaguar」とか、リル・ルイスの「French Kiss」とか。アンセムって、やっぱりそう呼ばれるだけの曲のポテンシャルがある。
Ren: 「French Kiss」は今でもかけます。でも、アンセムって使いどころが難しい。変なところで入れちゃうとシラけるし。
VIDEO
Lil Louis – French Kiss
―アンセムをプレイするタイミングって、どう決めているものなんですか?
DYE: ケース・バイ・ケースですね。瞬発的にかけることもあるし、30分くらい使って下地を作って、そこまで誘導するようなイメージでやっていくこともある。極端な話、オープンDJが1曲目でいきなり「French Kiss」をかけたら、誰も昂揚しないですから。
Ren: 無駄打ちになりますからね。これは僕の力不足かもしれないですけど、DJやっていて先が見えるのはせいぜい2、3曲先までなんです。大まかな流れとかは考えるけど、最初から流れを読んで最後まで決め打ちしてもあまりハマらない。DYEさんも言っている“瞬発力”の大切さを、現場を重ねるごとにわかってきていて。だからフロアの状況に合わせて、かけようと思ってたアンセムをかけないという選択をしたり、まったく違う流れに持っていったりしたときにいいリアクションがあると、”DJやってる”っていう実感が湧くんです。
DYE: DJとお客さん、お互いの昂揚がマックスでクロスしたときの瞬間だよね。「最高!」ってなるよね。
Ren: DYEさんは、初めていく土地の箱に対してはどういったテンションで臨むんですか? 自分はまだほとんど都内でしかDJをしたことがないので、今後の参考として訊けたらなって。
DYE: オファーをくれた人にパーティーの内容を訊いて、それによってブレイクビーツなのかダウンビートなのか、ハードめのテクノなのか、いろいろイメージする感じかな。プラス、ゲストで呼ばれたわけだから、オリジナリティを出さないと意味がない。でないと俺じゃなくても、誰でもいいってことになるしね。自分の得意とするものを使って、いかに自分のグルーヴを作るか。
Ren: 箱によってサウンドシステムが違う問題は、どうクリアするんですか?
DYE: それは行ってみないとわからないことだから、少しでも早めに入って、音響の人と話すようにしている。結構、細かいところまで。
Ren: わかります。そこを真面目にやらない人も結構いるんですよね。それぞれのスタイルがあっていいと思うけど、ひとつ言えるのは、「サウンドチェックをちゃんとするDJはいいDJが多い」ってこと。それは箱やパーティーを大事にしてるってことでもあるから。前にキム・ライトフットと共演したときなんて、あの人、自分の出番以外の時間も、ずっとフロアの真ん中で踊ってた。で、俺のところにきてその日のフライヤーをポケットから取り出したかと思うと、「俺とお前が同じところに名前が載ってる。これが歴史なんだ」って言ってくれて。こんな若造に。
DYE: あるものを最大限活かすってことだよね。DJ同士や箱の人、お客さんとパーティーを共有できてる感覚ってすごく楽しいから。
Ren: 箱でいうと、札幌のPrecious Hallは、音好きの先輩から必ず名前が挙がってくるのでずっと行きたいと思っているクラブなんです。
DYE: “素晴らしい”クラブだよ。行けばわかると思うけど。フロアやバーカウンターの居心地は最高だし、かつ進化を続けている。
Ren: 東京だと、Space Lab Yellowからeleven、AIRがあって今のContactがある。あそこはレガシーがつながっていると感じています。
DYE: eleven時代からのスタッフがAIRにいたり、大阪のNOONにしてもそうだけど、クラブに行って久しぶりのスタッフとバーカンで話す、あの感じだよね。
Ren: そうですね。クラブを作ってるのはスタッフ。スタッフが活きる場所、スタッフがアイデンティティを持っている場所は強いと思います。
―DYEさんとRenさん、ひと回り世代の違うお二人が近い認識を持ってるのはおもしろいですね。DYEさんからRenさんの世代に向けて、訊きたいことってありますか?
DYE: うーん…。「小さい頃からYouTubeがあった」ってどんな感覚なの?
Ren: YouTubeを観出したのは小学生くらいのときですね。その前のiPodとかも含めて、物心ついたときにすでにあっていつの間にか使ってたから、そんなにセンセーショナルではなかったですね。
DYE: 俺がヒップホップにハマりだした頃は、曲を知る術ってお店に行くしかなかったから。「札幌のCISCOは火曜が入荷日」とかは全部把握して。
Ren: 俺は家庭環境的に、ちょっと特殊だったからそんなに驚かなかったのかもしれないです。親父のiTunesに大量の曲が入ってて、そこから掘ってたんで。だからDYEさんにとってのCISCOは、俺にとっては親父のiTunes。
DYE: なるほどね。
Ren: そういう意味で衝撃的だったのはSNSですね。SNSによって、誰でも自分を表現できるようになった。アーティストって、プロダクションがあって、レコード会社とか、イベントや番組の関係者とか、みんなが作り上げることで成り立っているものだった。今はなんでもない人がフォロアー数十万人とかいて、カオスだなって。ある種の偽りでありそれこそリアルでもある。でも俺はなかなかうまく使えなくて…。
―そうやって時代が移り変わるなか、THA BLUE HERBはこれからどうなっていくんでしょうか。
DYE: どうですかね。先のこととなると…。でも、次の制作にも動いてますし、常に現在進行形で動いてる感覚があるので、これからどうなっていくのか自分でも楽しみです。もうずっと、いつもワクワクしてますね。
Ren: アメリカのスラングで、「REAL RECOGNIZE REAL」って言い回しがあるんですけど。さっきのクラブの話にしてもそうで、まさにそれだなった感じました。今日はありがとうございます!
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INFORMATION
■ DJ DYE
THA BLUE HERB WEB SITE
http://tbhr.co.jp
Twitter : @dj_dye
■ Ren Yokoi
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2/5(月) World Connection @ Contact
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