『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクトだ。
本連載では、キュレーターと選出されたアーティストとの対談を行い、HEATがどのような内容なのか、まだキュレーターがどのような思いでアーティストを選び、アーティストはそれにどう応じるのかをお届けする。
連載第7回目。キュレーターはFASHION&MUSICをコンセプトに置く、渋谷の多目的ショップBOYのオーナーであり、DJやMCとしても活躍する奥冨直人。セレクトしたのは1998年生まれのシンガーソングライター兼トラックメイカーのKabanagu。新しい観点で生み出す音楽は、まさに次世代のそれだ。HEAT用の楽曲を介して、アーティストがどういう考えで新たな音楽を表現しているのかについても話し合う。
Curator_ 奥冨直人, Artist_Kabanagu (L to R)
ポップな要素があるということがHEATにマッチしている
奥冨直人(以下、奥冨):HEATにキュレーターとしてお誘いいただいたとき、企画コンセプトを読んで真っ先にKabanaguさんが思い浮かんだんです。初めて聴いたのは1st アルバム『泳ぐ真似』で、1年半ほど前のことなんですけど、そのときの印象が強烈に残っていて面識はないけれどお誘いしたいと思ったんです。僕も色んな音楽が好きななかで、KabanaguくんのポップさがHEATのプロジェクトにマッチしていると感じて。
Kabanagu:ありがとうございます。僕は、お会いする前からTOMMYさん(奥冨直人の通称)のことを知っていたんですよ。僕の曲をサブスクのプレイリストに入れてくれていたのをチェックしていましたし、共通の知り合いを介して、TOMMYさんがすごくプッシュしてくれているよ、というお話しを聞いていたので。それで、HEATの連絡をいただいてからBOYに行って色々とお話しさせていただいて。ちゃんとお話ししたのは、そのときが初めてでしたね。
奥冨:そうですね。イベントなどで同じ場所にいたことは何度かあったんですけど、僕自身、KabanaguくんのことはSNSで知れるほどの知識しかなかったし、こういう企画を通じて繋がれたというのは新鮮な気持ちです。今回の人選については、自分の直感を重視してのキュレーションとなったんですけど、他キュレーターが選出したアーティストのラインナップを見ても、自分だからこそKabanaguくんをHEATに呼べた感じがするので良かったと思いますね。
Kabanagu:本当に、Amazonという誰もが知っているカンパニーのプロジェクトに、TOMMYさん経由で声をかけていただけるなんて、本当に嬉しいという気持ちでしかなくて。なんだか自分の活動が少なからず広まっているんだってことが実感できたんですよ。
ーせっかくなので、Kabanaguさん自身がどういう活動をしてきたのかも紹介したいと思います。現在は何歳で、いつ頃から音楽を始めたんですか?
Kabanagu:今年で24歳になります。音楽は高校生の頃に始めて、オリジナル楽曲をDAWで作り始めたのは18歳くらいでした。初めて曲を出したのは19か20歳くらいでしたね。音楽活動をスタートさせた頃は、音楽ゲーム寄りのインスト楽曲が多かったんです。だんだんと表現する音楽性に変化が生まれて、自分で作詞作曲して歌唱するようになったのは、MaltineRecordsよりリリースした『太陽の味は』からでした。
奥冨:そうなんですね。僕がKabanaguくんを初めて観たのがCIRCUS Tokyoで弾き語りをしている姿で。それ以降もclubasiaに出たりしていましたよね?
Kabanagu:ああ!そうですね、clubasiaとの付き合いは2018年の年末カウントダウンのイベントにいきなり呼ばれたところからで、それからずっとお世話になっています。
奥冨:僕から見ると、Kabanaguくんの音楽はオルタナティブなクラブにも合うし、WWW/WWW XやLIQUIDROOMといった、電子音楽のライブをやってきた会場にも合うイメージがあって。だから、今Kabanaguくんがやっている楽曲をライブで観れたらいいなって思うんですよ。
Kabanagu:ありがとうございます。そうですね、ライブという意味では前作のアルバム『泳ぐ真似』にまつわるライブは1回しかやっていなくて、今年の6月にリリースした2nd アルバム『ほぼゆめ』に関しては、まだ1回もリリパ的なことをやっていないんですよ。だから早くやらなくちゃいけないなって考えはずっとあります。
ーソロのライブが少ないというのは制作活動の方を重視したいという考えがあるからですか?
Kabanagu:それもありますし、『ほぼゆめ』などに収録している楽曲がライブで再現するのが難しいんですよね。音源として完成されているので、どうやってステージで演奏するかを考えている状況なんです。
幼少期にやっていたゲーム音楽がルーツの1つ
ーKabanaguさんは数年前はインストで電子音楽、今はポップスの要素もあるオルタナティブな楽曲を制作しているわけですが、音楽的ルーツはどこにありますか?
Kabanagu:僕はもともとバンドサウンドも好きでハヌマーン、pegmapなどを聴いてきたんですよね。でも、ルーツという点でいくと、幼少期にやっていたゲーム音楽の存在が大きいことに最近気づいたんです。自分はニンテンドーDSの世代なんですけど、当時やっていたゲームのサントラを改めて聴いてみたら、やはりすごく好みで。あの、ほどよくリアリティがあるチープなサウンド感が好きなんです。
奥冨:最初にKabanaguくんの音楽を聴いたときは全体のバランス感がバンドっぽいと感じたんですよね。それを1人でやっているのが印象的で新鮮に感じたんです。いわゆるビートメイカー的な表現よりもシンガーソングライターのそれに近いというか。これを1人で作っているのがすごいなって思いましたよ。でも、今言うようにゲーム音楽の要素も確かにありますね。
Kabanagu:最近では、バンドやゲーム音楽などの電子音楽もジャンルレスに解釈して、そこにメロディを乗っけて、ごちゃ混ぜ(ミクスチャー的)に表現する同世代のアーティストも増えてきていて、そこからの影響も大きいんです。すでにミックスされた音楽を聴いて、さらに色んな要素を自分で入れていくというか。そういう感覚があると思います。やっぱり新鮮に感じられるものが好きですし、今までなかった発想から生まれた音楽を聴きたいんですよね。そういう意味で、ジャンルとか関係なく聴いてきた人の音楽が好きです。例えば、underscoresとか。
奥冨:わかります。underscoresの音楽はハイパーポップとポップパンクやエモの要素も感じられて。
Kabanagu:そうなんです。ストレートなパンク的表現とコテコテのダブステップを繋いでいたりして、すごく面白いと思います。僕はKabanagu名義の活動とは別にPAS TASTAというユニットを友人たち(hirihiri 、Kabanagu 、phritz 、quoree 、ウ山あまね 、yuigot)とやっているんですけど、その同世代のメンバーからも影響を受けていますね。彼らも新しいことを表現しようとしているので。
奥冨:この間、yuigotくん(PAS TASTAのメンバー)もBOYに来てくれて。先日、PAS TASTAは近藤くん(No BusesのVo&Gt、近藤大彗)のソロプロジェクト、Cwondoをゲストに迎えて楽曲を発表していたけど、そんな風に、音楽をジャンルで決めつけることなく幅広く受け入れて、自分たちのバランス感でアウトプットするのが独特で面白いと思いますね。
映像と音楽の2つでカッコよく表現できる楽曲
ーでは、HEATでの楽曲についても教えてください。
Kabanagu:今回のプロジェクト用に書き下ろした楽曲で「想像上のスピード」というタイトルになります。HEATでは、楽曲だけではなくMV制作の面でもサポートしていただけるということだったので、映像に音楽が乗ったときにカッコよくハマる曲にしようと考えながら制作を進めていきました。どうでしたか?
奥冨:うん、想像していたよりも速かった(笑)。
一同:(笑)。
奥冨:不思議な曲だと思いましたね。スピード感があるのにメロディはゆったりと進行していくような構成になっていて、尺も2分くらい。色んなところから音が湧き出てきて、それを通過していくようなジェットコースターを彷彿させる曲だと感じました。だから、今のKabanaguくんの話も踏まえてどんな映像になるのかも楽しみ。そういう奥行きのある曲だと思いますね。ちなみに映像は誰がやっているんですか?
Kabanagu:『ほぼゆめ』のアルバムトレーラーを作ってくれた齊藤公太郎さんに引き続きお願いしました。自分がイメージしていた映像と音楽で面白いものになるっていうのが表現されていたんで、すごく良い作品になったと思いますね。僕としては元気な映像がいい、くらいしか伝えていなかったんですけど(笑)。映像もすごく良いものになりました。
ーでは、HEATの他アーティストで気になる人はいますか?
Kabanagu:楽しみなのはmekakusheさんですね。まず第一にファンということもありますし、以前、提供曲の編曲で携わらさせてもらったこともあるので、どんな曲になるのかすごく興味があります。あとはJUMADIBAさんですね。自分はあまりHIPHOPに詳しくないのですが、最近友人が「Kick Up feat.ralph」を薦めてくれて衝撃を受けました。
奥冨:うん。やっぱりKabanaguくんの世代としては、JUMADIBAくんはダントツに気になる存在ですよね。
Kabanagu:はい、だからHEATで同じラインナップの中に入れて嬉しいです。
奥冨:せっかくなんで、どこかの現場でKabanaguくんとJUMADIBAくんが出会ったときに、このHEATの会話になったらいいですよね。そういう出会いの場になってもいいと思います。
ー今後、何か2組でやってみたいことはありますか?
Kabanagu:なかなかTOMMYさんみたいな人には出会えないので、とにかく今後も仲良くしてほしいなって。
奥冨:あはは! もちろんです、仲良くしましょう。僕もイベントをやったりしていますけど、Kabanguくんも呼びたいと思うし、もし呼ぶのであれば他にはないラインナップを意識して、アーティストにもお客さんにとっても価値のある異様な空間が作りたいと思います。そういうことを、みんなで実現していきたいですね。
Kabanagu:是非、お願いします。
ARCHIVES
Amazon Original HEAT Vol.06 連載HEATという音楽現象を追う:Jun Inagawa×Frog 3
Amazon Original HEAT Vol.05 連載HEATという音楽現象を追う:GUCCIMAZE×Miku The Dude
Amazon Original HEAT Vol.02 連載HEATという音楽現象を追う:Yosuke Kubozuka×Ken Francis
Amazon Original HEAT Vol.01 連載HEATという音楽現象を追う:Katoman×ego apartment
INFORMATION
Amazon Original HEAT
Kabanagu 「想像上のスピード」 11月23日リリース
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