MUSIC 2023.05.20

Talk session: PEOPLE 1×GROUPN ー楽曲「GOLD」世界観をどう表現するのかー

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

Ito、Takeuchi、Deuから成るバンド、PEOPLE 1。先日発表されたシングル「GOLD」がTVアニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』のオープニング・テーマということもあって、さらに注目度が増している。そんな彼らのMVを数多く手掛けるのがオルタナコレクティブ友達チーム、GROUPNの映像ディレクター、hamaiba氏だ。ここでは、もはや溜まり場のようになってしまっているというhamaiba氏の自宅で、お互いどのように音楽と映像の表現を組み合わせ1つの作品として表現しているのかについて、「GOLD」を軸に話し合ってもらう。

L to R_Takeuchi, Ito, Deu(PEOPLE1), hamaiba(GROUPN)

共通点は何者でもないものによる表現

ーそもそもですが、GROUPNにMV制作をオファーしようと思ったのは、どういうきっかけがあったんですか?

 
Deu:「GROUPNはBREIMENのMVも手掛けていて、その映像がめっちゃ好きだったので声をかけたんですよ。でも、その頃はコンタクト先がなかなか見つからなくって」
 
hamaiba:「当時は知っている人の仕事だけを受けるという感じだったんで、連絡先を公にしていなかったんですね。BREIMENとは、もう長い仲で彼らのMVは僕が全部撮っているんですけど、それを観てくれたのがきっかけだったんだよね?」
 
Deu:「そうですね。あのノイズがかった映像の感じや色味や画角も含め、総じて洒落ていると思って、そこがカッコいいと思ったんです。あと、BREIMENは特にそうですけどメンバーのことをよく知っていることがMVから伝わってくる、そのアーティストの解像度が高いっていうところがポイントでした」
 
hamaiba:「なんかこう、改めて言われると嬉しいもんだね」
 
一同:「笑」


 

ーhamaibaさんは、これまでにPEOPLE 1の「怪獣」、「僕の心」、「銃の部品」、「DOGLAND」と多数のMVを手掛けていますが、制作にあたって必ずしていることはありますか?

 
hamaiba:「決めているわけではないんですけど、絶対に会って対面で打ち合わせをしてきましたね。コロナ禍の最中でもZOOMとかで済まさずに、実際に会って他愛ない会話も含めて決めていったので、そこには意味があったのかなと」
 
Deu:「それに、BREIMENが仲が良いから映像もカッコいい、ということなんであれば、絶対に仲良くなって、自分たちのことを知ってもらわなくちゃって」
 
hamaiba:「それこそ「銃の部品」とか「DOGLAND」とかは、Deuくんがウチに来て、色んなMVを観ながら話をしたり情報共有をして。そうやってお互いの接点を見つけていくってことをやっていたよね」
 
Deu:「はい、それでお互いのことが知れたと思いますし。というか、そもそもhamaibaさんは、めちゃくちゃ話しやすいんですよね。だから会話していて普通に楽しいんですよ」
 

ーでは、hamaibaさんはPEOPLE 1に対してどんなイメージがありますか?

 
hamaiba:「何者でもない人たちがやっている音楽っていう感じがすごくします。何者でもないから、何者かであろうとするための表現を選択しているし、孤独感みたいなものもあるし、人に優しい側面もあるし。そういう部分は自分とすごく共通していると思いますね。僕も自分のことをただの地方都市出身の一般男性だと思っていてクリエイターとしての自負もそこまでないし」
 
Deu:「そうですね。もっと言うと、僕らは何者かになるというのを極端に避けている節があって、とにかく何者でもないように見せようとしている感じがあります。PEOPLE 1のロゴを前に出して、隠れよう隠れようとしてる気がするというか」
 
hamaiba:「そもそもPEOPLE 1っていう名前がそう感じさせるよね。それで言うとGROUPNもそうなんだけど。そもそも名前の構造自体が似通っているなって、改めて思ったかも」
 

ー似た感覚を持っている者同士、シンパシーを感じる部分も多いのかもしれないですね。何かMV制作に関してのエピソードや印象深いことなどはありますか?

 
Ito:「そこでいくと「僕の心」の撮影は、上がってきた映像を観たときに、歌詞に対する理解の深さをすごく感じたんですよね。コンクリート打ちっぱなしの中を自転車という装置を使って孤独感や日常の描写を表現しているのかなとか、地面に描かれた人型のマーキングは心の傷を意図するのかな、とか。そういうことを感じたんですよ。で、考えると、僕とhamaibaさんって、PEOPLE 1に向き合う立場が似ているんじゃないかなって」


 

ー似ていると言うと?

 
Ito:「Deuさんが作ってきた音楽にどう向き合うかという意味でシンパシーを感じるんです。僕の場合はデモをどう解釈して声を入れるのかとか。hamaibaさんは曲を受け取ってどう映像で表現するのかって。僕も歌うときに、どうしたらいいんだろうっていつも考えるんですけど、その曲を解釈するためにかける時間が、hamaibaさんは膨大なんじゃないかと思いますね」


 

ーなるほど。Takeuchiさんはどうでしょう? 何か印象深い思い出などはありますか?

 
Takeuchi:「僕が初めて制作の現場に行ったのは「怪獣」のMVで、自転車で行ってロケ弁を食べて、すぐに歯医者に行ったんですけど」
 
一同:「爆」


 
Takeuchi:「で、そのときに感じたのが撮影現場の空気がすごく明るくて和気藹々とした楽しい雰囲気があったんですよ。実際に「銃の部品」で撮影してもらったときにも、その温かい空気感があったし、ちゃんと納得いくまでやらせてもらえるし、そういう現場を作ってもらえるのって本当にありがたいなって思っていますね。当たり前のことじゃないんだって感謝しています」


 
Deu:「たしかにGROUPNの現場は特殊なくらい和やかだよね。順調に進んでいるわけじゃないときでも変にギスギスした空気にはならない」
 
hamaiba:「無理して環境作りをしているわけではないけど、僕がマイペースで映像の現場でイガイガした雰囲気になるのがイヤだから、自然と風通しが良くなっているのかもね」
 
Ito:「アドバイスも楽しそうに言ってくれるんで、そこが嬉しいんですよ。ただ、そんな風に、PEOPLE 1の音楽を毎度深く理解してくれている、hamaibaさんだからこそ、きっと今回の「GOLD」も大変なんじゃないかなぁと」

逆に楽曲の壮大なテーマから離れて断言する「GOLD」

 

ーMV「GOLD」の公開も差し迫っていますが、進捗はどんな感じでしょう?

 
hamaiba:「……まだ撮影していないです」
 
Deu:「そうなんです」
 
hamaiba:「というのも、企画作りにめちゃくちゃ苦戦して。本当に時間が掛かってしまったもんで撮影が後ろ倒しになってしまったという。もう現状の企画から大きく変更することはないと思うんだけど……。今回の企画、どう思った?」
 
Deu:「いや、面白そうだと思いましたよ。その苦戦した感じが企画書からバシバシ伝わりました」
 

―MV「GOLD」の内容はどういうコンセプトで考えたんですか?

 
hamaiba:「曲を映像に落とし込むということは、MVが曲のイメージの1つになってしまうわけじゃないですか。だから、どういうテンションで、どういうメッセージをどんなテーマで描くのかってことを考えるのに苦労したんですよ」
 
Deu:「僕が作ってきた曲の中でも「GOLD」は映像だとか視覚要素をつけるのがトップクラスで難しい曲だと思いますからね。色んな要素をパズル的に入れているし、暗さと明るさのバランスも、それぞれの重さも違うんで、きっと大変だろうなって思っていました」
 
hamaiba:「その壮大なテーマに対して断言できないっていうか。いつもは映像を作るときにPEOPLE 1に寄り添いたいと思いながら制作しているんですけど、今回は逆に離れて断言してみようと思っています。本来、曲と映像が全然違う表現であっても、それが成立するマジックがMVにあると思うし、90年代や2000年代のMVって、もっと破天荒だったじゃないですか。最近の映像には全部に意味があり過ぎているから、今回の企画ができたときに、自分の中で1つ吹っ切れるきっかけにもなったと思いますね。もう、とことん肩の力を抜こうと思いました。「GOLD」に関してはそういう表現だと考えていますね。まだ、撮ってないですけど」
 

ーどんな内容になるか教えてもらってもいいですか?

 
Deu:「そこ聞きたいです。モノ作りをするときって、まず思いついた発想から掘っていくじゃないですか。結末が先にあったのか、キャラデザのイメージが先にあったのか、というとどうですか?」
 
hamaiba:「そもそものオーダーとして、女の子を出したいっていうのがあったじゃない?」
 
Deu:「ありましたね」
 
hamaiba:「その女の子をどう存在させるかっていうのが最初にあって、行き着いた企画が、ロボットと少女の話だったんだよね。ざっくりストーリーを説明すると、時代は2123年で、その世界には人間やら人型のエイリアンが平等に存在しているんだけど、そこで開催される自己表現大会における少女のお話。その女の子には両親がいなくて、代わりにロボ爺っていうお爺さんが少女を育てたっていうバックボーンがあって、という物語なんですよ。全部を1から考えていったというよりも、色々な要素を全部書き出して接続させていった感じかな。あと、パッと聞くとベタなストーリーではあるけど、最終的に裏切りみたいな表現が入れているのがポイントかな」
 
Deu:「並列した要素が全部頭の中に溜まって、それを全部整理したら1個になったという?」
 
hamaiba:「そうそう!」

このインタビュー後、撮影と編集を経て完成した「GOLD」のMVが下記。


 

ーちなみに、次のツアーにはhamaibaさんも同行されるそうですね。何をする予定ですか?

 
hamaiba:「いえ、予定というか僕はただ一緒に行くだけっていう」
 
Deu:「今のところ、リアルタイムで何かをやることは考えていないですね。まぁ、逆に何をするのかここで考えてもいいかもしれないですけど」
 
hamaiba:「そうだねえ。カメラは持っていくのでツアーのオフショットを使って何か映像が作れたらいいかもしれないね」


 

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