MUSIC 2026.02.19

Column:あなたは、世界中の人が知っている有名曲「TOKYO DRIFT」に対して、どのような印象を抱いているだろうか?

Text_Tsuyachan.
EYESCREAM編集部

映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』でTERIYAKI BOYZ®が鳴らしたあの曲は、Tokyoという都市のイメージそのものを世界に焼き付けたことで、単なる音楽を超え、ポップ・アイコンとして形作られていった。東洋的フレーズを思わせるシンセと重低音のヒップホップビート、強烈なフック。その反復は、ネオンに照らされた異国のハイテク都市という幻想を拡散させ、世界中に“未来都市TOKYO”を出現させた。

そこには、ルールを破る若者、夜の街、違法とスリル、そしてリスクを賭ける人生といった反体制ロマンが重ねられていく。海外では“street energy classic”や“drift culture anthem”と呼ばれ、いつしかミーム化し拡散されていったのだ。だが、忘れてはならない。あの「TOKYO DRIFT」が描いていたのは、東京のリアルというよりも、東京を舞台にした西洋的想像力の結晶だったということだ。2000年代、日本カルチャーがクールジャパンとして消費され始めた時代。その象徴が、あの曲だった。

だからこそ、これまで世の中のダークサイドを鋭くえぐり、デビュー曲「KAWASAKI」で東京発の野心を提示してきたONE OR EIGHTが、「TOKYO DRIFT」をサンプリングすることには必然があった。元曲が象徴していたのは、リスク、夜の都市、反骨、スピード。彼らが掲げる「賭ける人生よ、集え」というスローガンは、その系譜の延長線上にある。

だが決定的に違うのは、ONE OR EIGHT特有の視点である。

かつての「TOKYO DRIFT」が“外から見た東京”として拡散していったならば、ONE OR EIGHTはそれを“自分たちのホーム”として鳴らしている。東京は観光地ではなく、獲りに行く場所であり、賭ける都市であり、上へ駆け上がるための現在地そのものだ。幻想を借りるのではなく、幻想を奪い返す。そういった視点の移動こそが、この曲のアップデートの核心である。

サウンド面も同様だろう。原曲は、機能的でミニマルな構造を持っていた。ONE OR EIGHTはその骨格を活かしつつ、低域を再設計し、2020年代的な重量感を加える。バイリンガルなボーカルはグローバル基準を意識し、中盤にはハイパーポップ的な破壊性まで滲ませる。アレンジャーには、YOG$やJesse Bluu、Justin Starling、さらにBBY NABEやBuggy、Benley、SERLOU、jAngoといった国境横断的な布陣が名を連ねているのも象徴的だ。この楽曲は、2006年の東京幻想を、2026年仕様へとチューニングし直しているのである。原曲が描いたのは、異国での無鉄砲な逃走劇、一瞬のスリルのロマンだったが、ONE OR EIGHT版は違う。そこにあるのは、「東京から世界へ」という、意志ある野心だ。スピードは刹那ではなく、持続する覚悟へと変換されている。

MVでもそのヒリヒリした感性は貫かれる。バッドボーイ的ストリート感と緊張感のある演出。さらに、その延長線上にあったのが、先日2月8日に雪の降る渋谷で行われたゲリラライブ「SHIBUYA GATHERING」である。渋谷ストリームに停められた4トントラックがステージとなり、パネルが開く。スモークの中から現れる8人。歓声が弾ける。簡素な景色ながら、そこには十分すぎる緊張があった。

「KAWASAKI」のMVで、空き倉庫に並んだバイクの前で踊っていた彼らは、当初からストリートの不良性を装飾ではなく美学として扱ってきた。今回のゲリラライブも同じだ。豪華さではなく、飾らないことで生れるスリリングな空気によって、場を支配する。筆者が以前ライブを観たときに強く感じたのは、彼らの身体の在り方だった。鍛錬されたキビキビとした動きはK-POP的精度を思わせる。しかしファッションはどこかラフで、ストリートの余白を残している。完成度の高い身体運動とルーズなムードの同居。管理された身体と未完成の空気。そのアンバランスが、彼らをただの“完成されたグループ”にしない。

だからこそ、彼らのパフォーマンスは常に暴走寸前の危うさを孕む。ヒリヒリ感がいつ爆発してもおかしくない。その緊張が、観客の神経を掴んで離さない。7曲、30分。この日のゲリラライブも、息つく暇のない構成だった。あっという間に駆け抜けたライブの最後は、「TOKYO DRIFT」で締めくくられた。アジトから出てきたような佇まいのクールなステージ。危険な香りをまとったまま、彼らはこのまま国内ツアーへと突き進む。

2006年に世界が夢見た東京幻想は、いま彼らの手の中で再編集されているのだ。2026年、ONE OR EIGHTは東京を起点にもっと大きな場所へ羽ばたき、戦いを続けるだろう。その行方から目が離せない。「賭ける人生よ、集え」。彼らは真剣なまなざしで、そう言っている。

INFORMATION

1st Mini ALBUM “GATHER”

01. TOKYO DRIFT
02.Don’t Tell Nobody
03.DSTM
04.POWER
05.KAWASAKI (with Big Sean)
06.Young & Reckless
07.BET YOUR LIFE
08.365
https://oneoreight.lnk.to/GATHER
公式HP:https://oneoreight.com/

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