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Spaceshower CrossTalk 宇多田ヒカル 『初恋』
スペースシャワーTV
リピート放送:2018年8月23日(木)22:30〜
出演:オカモトショウ/前野健太/夢眠ねむ/佐藤千亜妃
Official Info
ーご自身と宇多田ヒカルさんについてのエピソードって何かありますか?
佐藤千亜妃:元々は、小学5年生くらいの頃かな、『First Love』が出て。兄がそれを買って部屋でよく聴いてたのを、一緒に聴いててそこで衝撃を受けた。それまでに、あまり聴いたことのない音楽だったので、『Automatic』みたいなすごいR&Bっぽい、ソウルっぽい、ブラックミュージックから影響を受けた音楽みたいなのに触れたのがその時が初めてで、そこからハマっていって大ファンになって、その後ずっとアルバムが出るたびに兄に借りたり、小学生や中学生の頃なんてお金があまりなかったので、兄弟や友人に借りたりして、ずっとそれを聴いてましたね。はい、大ファンです。
ー普通にファンということで…(笑)
佐藤千亜妃:はい! ただのファンです(笑)。お会いしたことももちろんないので、復活したタイミングとかもすごく嬉しかったですね。
ーさて、アルバムを聴いてみて、どうでしたか?
佐藤千亜妃:いやーすごいですね。やばいですね。正直、今までに宇多田さんが出したアルバム史上、一番個人的に好きな宇多田ヒカルの曲が詰まっているというか、宇多田ヒカルに対して、自分がいいと思ってるポイントっていうか、曲の雰囲気だったりっていうのが、今までで一番その割合が強いというか。
ーあ、本当ですか。
佐藤千亜妃:自分の思う宇多田ヒカル節が炸裂しまくってて、全曲聴き逃せない感じで、すごい没頭して聴いちゃいました。ちょっと興奮気味なんですけど(笑)
ーなるほど。その中で、特に印象に残ってる曲とかってありますか?
佐藤千亜妃:そうなんですよ!1、2曲目は、あ~結構新しい感じかなって思いながら聴いてたんですけど、3、4、5、6くらいまでがちょっと怒涛で、まぁでも個人的に3、4、5、6あたりの中盤の濃い部分の塊の中でいうと、1番『Forevermore』が特によくて、っていうのは、全編通して、トラックが前作よりもより曲に馴染んでるというか、無理がないアレンジだなっていうふうに思って、プロデュースを今回主にされている方だと思うんですけど…っていうのもあるし、あと、歌詞がすごいですね、今回。特にこの『Forevermore』の歌詞の中で「一人きりが似合う私を 今日も会えず泣かせるのは あなただけよ」っていう歌詞が、今この歌詞書けるんだって思って、ご結婚されたりとか、休んでた期間とかもあったじゃないですか。で、それを経て、一周回って、ある種むき出しっぽい感じの恋心的なものを書けるのって、純粋にすごいなって思いました。
ー確かに、なんか今の言葉で言うと「経た」って感じはしますよね。
佐藤千亜妃:うーん。
ータイトルも、『初恋』ということで。
佐藤千亜妃:これ、『First Love』の和訳なわけじゃないですか。ご本人的には意味あるのか、ないのか聞いてみたいんですよね。
ーファンとして、ですかね。
佐藤千亜妃:ある種、もう一回生まれ直すみたいな、まっさらな気持ちで作ったのか、なんなのかちょっと聞いてみたいです。いや、でも本当に中盤が特に炸裂しすぎてて、もちろん後半のこのフラットな感じの曲も全部良かったですけど、『パクチーの唄』とかも(笑)。歌詞のわりにだいぶ凝ってるなとは思いました。あとちょっとリズム崩してるっぽい曲とかもあって、面白かったですね。
ーありましたね。
佐藤千亜妃:『誓い』ですよね。楽譜知らないけど、これはそういうリズムが途中で入れるようにわざと序盤ちょっと切って崩してあったりとか、他はすごいMIX的にも意欲的な感じがして面白かったですし、とにかくちょっとやばいですね、すごすぎて。
ー多分いろいろなものを取り入れてると思いますが、そんなそういった感じはしなかったり。
佐藤千亜妃:そうなんですよ。リズムとかは、面白いことをやってたりすると思うんですけど、根底に宇多田ヒカルといえば!みたいな、聴きなれてきたストリングスっぽい感じのシンセの音だったりっていうのが、割と全面に出てきてて、歌のコーラスとかも一瞬出てきてるんで、今までの休止前の宇多田さんの感じなんかもあったりして、腑に落ちたというか、なんでもかんでも手を出して、とっちらかってるわけじゃなくて、全部吸収して、自分のものとして出してくれてる感じがして、安心して聴けるのと同時に、興奮するみたいなのがあったりして、個人的には一番すごいアルバムなんじゃないかなと思いました。
ーご自身でも作詞をされていますが、宇多田ヒカルさんの歌詞ってやっぱり特徴的ですか?
佐藤千亜妃:自分がその小学校・中学校の時に聴いてた感覚だと、もちろん『First Love』みたいな恋愛っぽい歌詞も良いんですけど、そうじゃなくて、自分の人生を俯瞰で見てる感じの歌詞が多いなって当時感じていて、例えば、『First Love』中の『In My Room』の詞とか、「フェイクファーを身にまとって どうして本当の愛探してるの?」「ウソもホントウも口を閉じれば同じ」「夢も現実も目を閉じれば同じ」みたいな歌詞が出てきて、なんかすごくシニカルな目線もあるんだなって思って。女性で曲書く人では珍しいなと当時感じていました。ちょっとネガティブな要素とかもあるじゃないですか、そこがやっぱり違うなと。なんか悲しげ、物憂げな歌詞がとても似合うというか。声とか歌い方も合うし、自分が普段感じているんだろうけど、自分で言語化できなかった言葉を、歌詞の中で当てられちゃうみたいな感じだったり。聴きながら歌詞読むと、あ、これ!ってなんか自分の中の感情を詞にしてくれたんじゃないかっていうくらいなんか、ピンってリンクする瞬間があって、そういうところがすごいなって思いますね。
ー歌割りだったりとか、サビへの持っていき方だったりとかって、結構渾然一体となってましたよね。これがサビみたいなこと?っていう曲が多かったですよね。
佐藤千亜妃:個人的なイメージだと、本当は趣味丸出しで作るとそうなるんだろうなっていう感じはしましたね。彼女らしい。わかんないですけど。こうサビっぽくバンってして!って言われなきゃこの感じが好きで、ループする感じ。っていうのが今の気分なのか、私もそういうの大好きなんで、ある種洋楽的なのかもしれないですね。ずっと、ミニマルにメロディーにアップしていくみたいな感じっていうのは、でも、すごく日本的だとも思います。歌詞とか。
ー声が楽器として成立しているというか、歌割りもなんか一個の音符に対して一文字を当てるんじゃなくて、なんかもうすごいじゃないですか。一文字に対してメロディーが4つあるみたいな。歌詞上はすごいシンプルなんだけど、聴いたらこういうことなんだみたいな。
佐藤千亜妃:そうですね。譜割が結構複雑だったりしますもんね。それって多分、先に鍵盤とか楽器で入れちゃって、後から歌詞を乗せるって聞いたことがあって、やっぱりメロディーに忠実に詞を入れたりするとそうなるのかもしれない。曲先行だからそういう感じに、、まぁそれを歌いこなせるのがすごいですけどね。
ー自分で音楽を作られる佐藤さんと比べてって言い方もなんか変ですが、思うことってありますか? 作り方だったりとか、曲のことに関して。
佐藤千亜妃:たとえば、似た感じで作ろうと思って作ることはできると思うんです。宇多田さんっぽい感じをマネして。でも、絶対敵わないんだなって思いますね、このアルバム聴いて。もうこれたぶん不可能だなって思います。不可能の域にきてるなみたいな(笑)。十分、昔から才能が爆発してるんですけど、ここにきてまたその才能がさらに開花するってどういうことって思いますね。普通、開いたら人ってもうそのまま平行線でいいと思うし、そういう感じでいいと思うんですけど、こう上がって、ちょっとまた休んで、また上がってるっていうのは、すごいとしか言いようがないから、逆にもう誰もマネしないほうがいいと思います。できないので。
ー不可能に達したアルバム(笑)。
佐藤千亜妃:もう不可能(笑)。これはとても強かったです。ハデなことはやってないのに、というのも余計にすごいと思います。良い曲と良い詞ばっかりだし、やっぱり個人的にはヴォーカルのディレクションがとても良かったと思いました。
ーコーラスも特徴的でしたね。あれ、これ宇多田さんの声なの?って思う部分もあったり。
佐藤千亜妃:逆再生っぽいのも入ってたりしましたよね。これは今スピーカーで聴いたからかもしれないですけど、ダブルとかは多いけど、ハモリみたいなのが意外と入ってないよなって。セカンド、サードくらいとかってけっこう上下重ねているイメージだったけど、でもこれ聴いてみないとわかんないですけど。だからヘッドフォンで聴くのが楽しいんですよ。いやこれ勉強になりますよ。めちゃくちゃ聴いて研究してたんで、また研究できますね。
ー研究材料できましたね(笑)。
佐藤千亜妃:研究させていただきます(笑)。
いかがだっただろうか。サウンド、声、歌詞、そして広がる景色などまで、アーティストらしい視座で、それぞれが『初恋』というアルバムを、そして今の宇多田ヒカルという存在そのものを語った。個人的にも、今すぐ『初恋』を聴き直したい、と思うほどだった。彼ら4人の“ウタダ愛”に当てられてしまったのかもしれない。
今回のスペースシャワーTVの特別番組「Spaceshower CrossTalk 宇多田ヒカル 『初恋』」は、8月23日(木)22時半からリピート放送される。きっと、『初恋』を聴きたくなるだろう。気になる方はぜひチェックしてみてはいかがだろうか。
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リピート放送:2018年8月23日(木)22:30〜
出演:オカモトショウ/前野健太/夢眠ねむ/佐藤千亜妃
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