BEAMS × スペシャの共同プログラム「PLAN B」Highlight : Season 6
from EYESCREAM No.169

PhotographyーRyuichi Taniura[P086-087,P090-091]、Margt[P088-089]TextーKentaro Okumura

BEAMS × スペシャの共同プログラム「PLAN B」Highlight : Season 6
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PhotographyーRyuichi Taniura[P086-087,P090-091]、Margt[P088-089]TextーKentaro Okumura

11月:高岩遼 × ジンベエザメ
“失いかけていたヘドロのような感覚”

ーこのプロジェクトの話が来た時、何を思いましたか?

高岩遼(以下、高岩):嬉しく思ったと同時に、俺で大丈夫かな?と思いました。自分で言うのもアレですが、俺は(今のシーンの中で)浮いてると自負しているので。でも、どうせやるならクソくだらないことをやりたいと思いました。もちろん、最高という意味で。

ー何を軸にプランを考えましたか?

高岩:(他の回で)海外に行ってる人が多かったこともあって、ギリギリまで予算を使わせてもらって、俺の好きな場所に行かせてもらおうかなと考えました。

ー(笑)。

高岩:好きなところで、かっこよく仕事すればいいじゃないかって。あと一つあるのは、他のみんなは感度の良いことをやっているけど、高岩の場合は期待されてるものが違うから「俺×◯◯」でかっこいい何かを作る、ということではないだろうと。そんな考えを軸に、制作チームのみんなと色んなアイデアを考えました。NYに行く、マグロを釣る、ラスベガスで一攫千金、学園モノ、ヒーローモノ……アイデアはたくさん出たんですが、最終的には最近出したソロアルバム『10』につながる企画がいいなという話になって。

ーそれで、ジンベエザメの話が浮上してきた。

高岩:ええ。自分、三陸の出身で18歳まで海で育ったんで、お魚に対して愛着があるんです。地元の宮古市は「鮭の街」ということもあって、福の神とも言われる魚類最大の魚・ジンベエザメに会ってヒット祈願しに行こうじゃないか、という形でようやくまとまりまして。で、調べてもらった結果「野良ジンベエ」がいるのがタイだと。

ーそれで、ジンベエザメには会ったんですか?

高岩:会った気はしました。

ー気はした?

高岩:なんか遠くに尾びれが見えたような気がした、っていうところですか。まぁ、海は広くて深かったっていうことです。あとクラゲに刺されましたね、オオクラゲに。ウェットスーツを着ていても、シュノーケルをはめる部分に隙間が空いてしまうじゃないですか。そこに後ろから張り付かれて。

ー大丈夫だったんですか?

高岩:痛かったですよ。取ってからもジンジンと。でも病院には行かなかったです。クラゲごときで行くかって。

ー今回は編集の段階でも自ら指示を出していたそうですが、どんな部分にこだわりましたか?

高岩:……実は結局、ジンベエザメには会えなかったんです。でも、タイまで行って会えなかったなんて制作チーム的にはマズいから、なんとか会えた形にしようとしていたんですよ。でも、俺は(事実通り)会えなかったというオチにするほうがいいと伝えました。PLAN Bの趣旨は「アーティストのB面」じゃないですか。ステージ上での高岩は、多分バッチリかましている。そんな男が行くぞと言ってタイまで行ったのに、ジンベエザメには会えなかった。会えてないし、クラゲに刺されてお前は何をやってるんだ、っていう。でも、こういうところこそB面っぽさじゃないかと、その感じが良いと思ったわけです。それに、ほぼ初めて会う4人で(タイに)行ったんですが、最終的にすごく良いチームになって帰ってこれたんですよ。全員本当にジンベエサメに会うつもりでいたし、俺以上に悔しがってくれていた。そういう映像チームが高岩の良いところを引き出してくれて、シュールで馬鹿げてるんだけど、どこかパッションがあるような作品になったなと。たくさん学ばせてもらいました。

ー具体的に言うと?

高岩:俺、ロケみたいな収録が初めてで。チームのみんなが高岩と面白いものを撮りたい、作りたいという行動や発言に、プロの技と力を感じたというか。そういうものを見れて、僕自身すごくためになりました。

ーこのプロジェクトを通じて「A面」に活かせることは?

高岩:まず、上京してからほぼ10年経った今、高岩のソロを出せたということは俺にとってプレミアムなことです。そしてこのPLAN Bでもわがままを通させてもらって、いろんな人が高岩のプロジェクトに関わってくれて、こうやって高岩個人に焦点が当たる取材を受けさせてもらえている。これは昔だと考えられないことでした。そんな中で行ったサムイ島ではジンベエザメには会えずに終わったことで、海から「お前なんかちっぽけなんだよ、頑張れ」ってクギを刺されたたような気がしました。そんなに上手く行くはずがない、と。

ー海が教えてくれた。

高岩:はい。嘘ではなく、時には人が溺れてしまうことがあったりするのが海だし、俺にとって(海が)“厳しい親”みたいな存在で。『10』は始まりに過ぎない。お前が見てるビジョンは壮大なんだから、まだまだだと思いなさい」と言われたような気がするんです。タイからの帰りには日本の台風の影響でバンコクの空港に14時間くらい拘束されたりして、もう散々だった。でも、東京に着いた時には、すごく楽しかったなと思えて。奢らずに頑張ろうと旅で思わされたというか「よっしゃ、やったろ」というフィードバックがありました。これは芸術性に活かすというよりは、ステージに立つ高岩や、普段街を歩く俺としての、メンタルの話なんですけど。昔から知っている自然の脅威や、そこで培ったタフさで路上(での演奏)をやることに活きていたんですが、最近そのヘドロのような感覚を失いかけてたかもしれないですね。

ーあのバラエティタッチの映像の裏に、そういう思いがあったのは意外でした。

高岩:奢らないことがすごく大事で、馬鹿げたことをやらしてもらうからこそ、通常の人間の100倍以上考えないとダメだと思っています。感謝を忘れたくないし、ずっとショーマンでいたい。

ー来年の展望を教えてください。

高岩:福の神には会えなかったけど、俺は必ずスターになると思ってるし、やっぱりあいつはやってくれるっていうものを、毎年デカくしていきたい。それがバンドのステージのキャパなのか、音楽性なのか、ビッグバンドの編成がオーケストラになるのか、まだ分からないですけど。2018年のはるか先を行く2019年にしたいと思ってます。

INFORMATION

PLAN B

放送局:スペースシャワーTV
放送日時:毎週木曜日21時57分~22時00分(リピート放送あり)
毎月1アーティストをピックアップし、全4回放送
BEAMSのウェブサイトでは各回オンエア終了後に過去の放送番組の視聴が可能。
www.beams.co.jp/special/plan_b/
@planb_mag

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