MUSIC 2019.01.28

Interview&Photo Reportage: Grimm Grimm ロンドンをローカルに活躍するSSW 生と死と音楽

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph - Yusuke Yamatani, Edit - Ryo Tajima

Grimm Grimmはロンドン在住のSSW、Koichi Yamanohaによる未来派フォーク・プロジェクト。活動の拠点はもちろんヨーロッパ。2013年頃から精力的に活動を続け、昨年の6月には2年半ぶりとなるアルバム『Cliffhanger』がMagniph / Hostessからリリースされた。その音楽はアンビエントっぽくて、パワーポップとエレクトロサウンドが融合したような感じで…。とにかくカテゴライズするのは不可(だから、とにかく聴いてほしいと思うんだけど)。この度、12月から1月にかけてGrimm Grimmは日本でライブを行なった。ここでは1月8日に新代田FEVERで行われたイベントMAGNIPH presents “Alone Together”に遊びに行き、ライブを堪能しつつインタビュー的な会話をしてきた。撮影はKoichi Yamanohaの友人、写真家・山谷佑介。FEVERの楽屋で徒然なるままに話した内容を、ライブ写真と合わせて記しておく。

臨終只今-死ぬと思って生きるという考えをメロディにできたら

ーロンドン在住、活動拠点もロンドンをはじめヨーロッパですよね。いつ頃から移住されたんですか?

Koichi Yamanoha(以下、Koichi):15年くらい前からイギリスに住んでいます。こんなに長いこといるんだなって朝起きた時にゾッとすることもあります。最初は2年くらいしたら帰ってこようと思っていたんですけどね。

ーなぜ、ロンドンだったんでしょう?

Koichi:その前は携帯の修理をする工場で働いていたんですが、たまたま横に座った中国人のオバちゃんと話しているときに「ロンドンに行きなさいよ」って言われて、何だかピンときちゃったんです。それで行こう、と。最初はマレーシアに行こうと思っていたんですけどね。

ーオバちゃんの助言でマレーシアからロンドンに!! もともと海外に住むという考えが念頭にあったんですか?

Koichi:そうですね。子供のとき、6歳くらいまでNYにいたんです。それで日本に引っ越してきて、あまりの変化に戸惑いつつ、どこか他の国に出ようと思ったんです。逃げようという意味ではなくて、純粋に行ってみたいと思って。

ーちなみに今、住んでらっしゃるのはロンドンのどこなんですか?

Koichi:ストークニューイントンです。

山谷佑介(以下、山谷):この間、オレがロンドンに行ったときに泊めてもらったけど、あの街いいよね。雰囲気もいいし、東京とは全然違う音楽の作られ方がしそうな場所だなって感じたんだよ。

ーどんな街なんですか?

Koichi:ユダヤ人街があるようなところなんですよ。近くにユダヤ人の墓地があるんですけど、それがいいなと思って引っ越したんです。音楽的にはNTS Radioの雰囲気があって。グライムとか、Cafe OTOとかがあって即興音楽をやる人たちとかそういう人たちが多い気がします。

ークラブもたくさんあるような?

Koichi:クラブが多いのはダルストンって街で、そこまで歩いて20分くらいのところですね。もともとはゲットーで貧困地だったところがお金を持った人たちに開拓された地域なんです。

ーちなみに、ロンドンに行ったのは音楽をやるためだったんですか?

Koichi:明確な何かがあったわけではありませんでしたけど、音楽をやろうとは考えていましたね。どんなバンドを組もうかってことも何も考えていませんでしたけど、誰かと出会って組もうと思って。

山谷:それ。その頃のことで、面白い話教えてくれたよね。ロンドンに1人で渡って右も左もわからないときにスタジオに張り紙してメンバー募集してって話。その張り紙には、どのバンド名を書いたの?

Koichi:ああ(笑)。ESGとかDNAとか。その当時、聴いていたバンドの名前を書いていて。それを見たモンちゃん(現Bo Ningenのドラマー、Akihide Monnaのこと。この話はBo Ningen結成前の話)が、たまたまヨーロッパ旅行でロンドンに来ていて、Koichiって日本人の名前を見かけたからって電話をかけてきたんです。で、仲良くなって。その1年後にモンちゃんがロンドンに戻ってきてBo Ningenを結成することになるんです。

山谷:そこ(Bo Ningen)には入らなかったっていうね。

Koichi:ふふふ。一緒にやろうなんて話はしてたんだけどね。

山谷:日本では音楽活動はやってなかったの?

Koichi:やってたよ。アルバムも2枚作ったし。そのときはバンドで活動していて2作目のCDをリリースした直後にロンドンに行ったんだよね。日本の音楽シーンのシステムの中で活動していた自分にとっては、ロンドンでやった最初のライブが衝撃的で。今、思えばめちゃくちゃなライブだったんですけど、ちゃんとフィーももらえて。そもそもハコにドラムキットも何もなくて、機材を全部、自分で持っていくことにビックリしたり。日本じゃ考えにくいことじゃないですか。

ーそうですね。国内のライブハウスではチケットのノルマなどもあって、多少なりプラスでギャランティがもらえるようになるのは大変です。ちなみに、Grimm Grimmとして活動する前、KoichiさんはScreaming Tea Partyというバンドで活動されていたんですよね。

Koichi:そうです、2005年から5年弱ほど活動していました。ドラム(Teresa Colamonaco)はイタリア人の女の子だったんですけど、彼女と出会ったのはロンドンの道端でした。ドラムセットと一緒にポツンと座っていて話しかけたら「今、クビになったところ」って。ドラムセットを売ろうか、どうか考えてるって言うから「じゃあ何か一緒にやろうよ」って。すごく原始的なエネルギーを持っている人でした。その半年後くらいにもう1人、友人の新里くんが日本からロンドンに渡ってきて、3人でやっていたんです。

山谷:そうやって15年もロンドンにいてさ。ロンドンでレーベルもメンバーも見つけるし。出会いもミュージシャンも全部向こうだし、レコーディングもそう。そういう意味じゃ日本に住んでいたら絶対にできないことだよね。

Koichi:そうだね。

ーGrimm Grimmの音楽は、なかなかカテゴライズしにくいですし説明しにくいものだと思います。ですが、幻想的でいて浮遊感がある。煽動的でありながら繊細で静謐。どんな境地で、それを表現しているんですか?

Koichi:死生観を意識していたときに、そういう風な精神状態になることがありますね。”明日死んだらどうしよう”とか。そこでポジティブになれたりするかもしれません。僕は仏教徒なんですけど、臨終只今っていう考え方があるんです。“今、死ぬと思って生きる”といった意味だと捉えて考えているんですけど、それをメロディにして過去現在未来が一緒になる感じを音にできたらいいなと思って。もちろん、それだけを考えて音楽活動をしているわけじゃないんですけど。


Grimm Grimm – Take Me Down To Coney Island (Official Video)

ー臨終只今は生命哲学の教えの1つですね。

Koichi:そうですね。調べていくと面白くて。死んだら消えるのか、何かエネルギーになって残るのかっていうのは誰しも考えることだと思うんですけど、ほとんどの人は死んだら消えると考えていると思うんです。もちろん、実際にどうなのかは僕もわからないですが。もし消えなかったとしたら、突如、懐かしいと思う瞬間があったりして。そういうのが音になったら広がる。わぁ、繋がっている、全てが。と思ったりしますね。

好きなのは最初の一音でシーンとなってしまう空気感

ー実際にどのように楽曲制作されているんですか?

Koichi:リラックスしたときに、ほわんと頭に思い浮かんでくるメロディを携帯に入れておいて、それが溜まってきたら聴き直して、解析できたやつに取り組んでいくという感じですね。最後に歌詞を載っけて。作ろうとするとできないんですよ。無意識でやった曲の方が正直な思いが表現できて、僕の場合は良いんです。

ーどのようなものがインスピレーション源になりますか?

Koichi:友達が言ったこととかですね。友達とお酒を飲んでいるときに、相手が酔っ払って何か次の日も考えちゃうようなことを言ったりすることがあるじゃないですか。そこから広がっていったりします。あとはツアー中に車内から見えた大きな建造物や風景、CMやニュースで流れていた音や内容が頭に残ったりしていて。

ーちなみに2018年6月にリリースしたアルバム『Cliffhanger』ですが、このタイトルはどういう意味なんですか?

Koichi:それもなんですけど、ある日、女友達と飲んでいたんですよ。そしたら彼女が「みんなギリギリだね。崖からぶら下がっているみたい」みたいなことを話していて。それ、いいなと思ったんです。引っかかっている感じというか、大変な状況のときに色んなことがクリアーに見えたりするときがあって。Cliffhangerには、ドラマや物語が終わる寸前に、続きが気になるような終わり方って意味がジョーク的にあるので、そこもいいなと思ったんです。

ー『Cliffhanger』にはThe Misfits(ミスフィッツ)のアコースティックカバー『Hybrid Moments』も収録されていますよね。これはルーツの楽曲?

Koichi:この曲は初めて僕が覚えた曲なんですよ。自分的に、歯に物が詰まっているような感じがあって雰囲気が好きで(笑)。

ー最初っから演奏と言うとギターを弾いていたんですか?

Koichi:最初はバイオリンでしたね。オーケストラにも入ったんですけど、楽譜が読めなくて(笑)。読んでいるフリをして、周りのみんながページをめくる瞬間に一緒にめくったりしていたんです。そのうち指揮者の人と喧嘩しちゃって追い出されちゃったんですよ。

ーあはは!!

山谷:へぇ、そこに音楽的な土台があるんだね。

Koichi:そうそう。それで耳コピができるようになった。楽譜を読まなかったから(笑)。辞めてから友達がARIA PRO Ⅱのギターをくれて弾き始めたんですよ。そして、ミスフィッツの『Hybrid Moments』を弾けるようになったわけです。

山谷:オーケストラをやってた人がパンクと出会うとこういうことになるっていう(笑)。


Grimm Grimm – Shayou (Official Video)

ー今、聴いている音楽というと、どんなアーティストの作品ですか?

Koichi:なんだろう…。グライムの人ですが、サウスロンドンの黒人の女の子で、Kleinとか。彼女は僕の作品のリミックスも担当してくれているんです。ミカチューとか、サウスロンドンのペッカムあたりから突然変異的なシーンというか、集まりから出てきた若い人です。自分とは全然違うやり方で音楽をやっている人に興味があって、一緒にやろうかって話をしたりして。Kleinがちょっと前にリリースしたアルバム『CC』が良くて、それを聴き直したりしています。

ー日本の音楽で言うと何かありますか?

Koichi:実は日本で何が起こっているのか、ちゃんと理解していないんです。でもgoatは好きでよく聴いていますね。日野くん(goatの日野浩志郎)は友人で、実はさっき話したKleinや、Killer-Bongリミックスしてくれた音源を彼のレーベルからリリースすることになっていて。あとは昔の音楽を聴いちゃいますね。森田童子とか。ちょっと前だと、いわゆる大阪ゼロ世代の音楽は好きで。生々しい等身大の音というか、お店で流れたら、みんなが静かになっちゃうような感じのが良いな、と。音楽のジャンルや思想というよりも空気感。最初の一音でシーンとなってしまう感じが好きなんです。……でも、改めて聴かれるとわからなくなっちゃいますね。山谷くんは何が好き?

山谷:オレはロックンロールとかロカビリーから出てきたから、やっぱりその匂いがするものは今でも気になる。けど、普段は聴かないよ?

Koichi:うんうん。まぁ、確かにオレも森田童子を今でも毎日ずっと聴いているかっていうと、そうじゃないんだけどね(笑)。そう言えばSatomimagaeさんやGEZANのマヒトくん(マヒトゥ・ザ・ピーポー)の作品もすごく良くて聴いています。去年一緒に対バンしたんですけど、そのときにアルバムを交換して。

山谷:アルバムを交換するのって、まさに対バンって感じだね。にしても、あれだね。話を聞いていたらKoichiくんは、すごくローカルな人だよね。どこの国のどの場所、というわけではなく、ローカルを大事にしていると思った。今、生活しているロンドンの街、ストークニューイントンの雰囲気が音になっているし。かと言って場所に捉われることなく、もしかしたら普通のことなのかもしれないけど、それを淡々とブレずにやり続けてる気がする。ロンドンで普通に人間として生活しながら世界のミュージシャンと同じレベルでやっているんだなって。

Koichi:ああ……。まとめてくれた……。その通りです。

一同:

山谷:いやいや。オレもそうありたいと思っているから、ね。

ー最後に。ロンドンの街、というのは創作活動に重要な要素としてありますか? ストークニューイントンに帰ってからは、どんな活動を予定していますか?

Koichi:いえ、場所は本当にどこでもいいかなって思いますね。どこにいても同じかなって。今は次のアルバムも撮り終えていて、これからミックス作業に入るんですよ。ステレオラブのレティシア(レティシア・サディエール)や、ミュージシャンの友人達がゲストで参加しています。それを集中してやっていく予定です。

Live Photo Reportage 2019.01.08 at Shindaita FEVER


静かな空間ではあるが滾るような気持ちになった。ライブというのは瞬間で生だからこそ実感がある。漫然とビジネスとして演奏しているショウとは異なる、真に迫るものがあった。Grimm Grimmのライブを見ながら、私はヌボーッとフロアに突っ立っていたが、過去に思いを巡らせたり、未来の自分が何をしているのかな、なんてことを考えながら、音の波に身を任せていた。音源では美しい旋律にユッタリとしたメロディが聴けるが、ステージから聴こえてくる音からは、まったく異なる印象を感じる。歌から轟音へ。流れるようなシンセからゲインを上げまくったディストーションへ。いや、アコースティックギターだからディストーションというのは変。だけど、なんか、そういう感じ。曲間のMCでは楽曲についての解説もされ、それを含めて1つのライブとして構成されていた。音楽と死生観について、というのはインタビューでも語られた内容だが、その本当の意味をライブで見たと思う。何か不思議な気がしたのは、Grimm GrimmつまりKoichi Yamanohaが醸すローカリズムのせいではないか。東京の土着的な空気がない、まさに海外のパブにいるような異邦感。これはリスナーとしての勝手な感想ではあるが、もしかすると人生賛歌か、現代社会への賛美歌のような。美しいけど、近寄りがたさを感じる。触れたいようでそれが禁忌のようで許されていない。しかし、目を逸らしてはいけない時間。窮屈ではない緊張感が心地よい時間であった。

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