MUSIC 2020.03.17

[Interview]Grimm Grimm × Kohhei Matsuda from BO NINGEN

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photography-Syuya Aoki, Text&Edit-Mizuki Kanno

Grimm GrimmことKoichi Yamanohaに指定された待ち合わせ場所は、吉祥寺の井の頭恩賜公園。昨年末に東京、大阪、名古屋の3箇所で開催されたThe Ghost Of Madam Legros Japan Tour 2019を終え、日本で休暇を過ごしていた彼に、わたし達は再び取材を依頼していた。今回は同じくイギリス・ロンドンを拠点に活動するロックバンド、BO NINGENのギタリストであり、同ツアーに参加していたKohhei Matsudaとの対談。ロンドンで共同生活を送っていたという2人がまとう不思議な空気感は心地よく無機質で、荒涼とした真冬の公園には穏やかな時が流れた。写真家・青木柊野が切り取ったあの日の景色とあわせて、彼らの現在をここに記録する。

音楽は戦いに望みを抱くときに流れるものであってほしい

ーまずはお二人の出会いから教えてください。

Koichi Yamanoha(以下、Koichi):BO NINGENのドラムのもんちゃん(Akihide Monna)が出会いのきっかけです。ロンドンへの移住当時、デンマーク・ストリートや街中に、メンバー募集の紙を貼りまくっていました。それを見たもんちゃんから電話が。日本の番号だったから怪しくて無視してたんですけど(笑)、思い切って出てみたら「一緒に音合わせませんか?」って。当時もんちゃんは旅行でヨーロッパを周っていて、一年後にまたロンドンに来て、BO NINGENが生まれて。彼らの最初のライブで出会ったのがKohheiくん。そっからいっしょに住んだりね。

ーいっしょに住んでいたんですか?

Koichi:ロンドンの東北にあるストーク・ニューイントンって街に。ユダヤ教の人がいっぱい住んでる地域です。家の裏は墓地だったけど、すごく綺麗なところでした。7〜8年前くらいの話かな。

Kohhei Matsuda(以下、Kohhei):僕は当時住んでいた部屋を追い出されるところだったので。僕とKoichiくん、あと、いろいろやってる奴と、3人で住んでたよね。

Koichi:Kohheiくんが部屋で練習しているのが聞こえてくると、僕もそれに合わせてギターを弾いて。その逆も。お互いが徐々に生活の一部になっていったよね。

ーKoichiさんがロンドンに住み始めたきっかけは以前のEYESCREAMの取材で話していましたが、Kohheiさんは何がきっかけだったんですか?

Kohhei:最初は絵描きを夢見て、ロンドンの大学に入学したんです。在学中、一緒に住んでいた奴がギターを持っていたので借りて弾いているうちに、BO NINGENのヴォーカルのTaigen Kawabeに出会って。2人だけでライブをやったりして、それが楽しくて。気づいたら音楽の道に。もともと音楽は好きだったし、やってみたいなとどこかでは思っていたので、自然な流れでした。

Koichi:Kohheiくんのギターはギタリストのプレイというより、イメージが最初にあって、それを描く感覚でギターを奏でている印象。ぱっと聴いて想像したのはミトコンドリア。伝わるかな(笑)。造形物をそのままギターのカッティングにしたような。

ー“出会い”がいまのお二人にとって大きなキーワードなのかもしれないですね。話を共同生活に戻しますね。何か印象的なエピソードはありますか?

Koichi:とにかく奇妙な家だったよね。住みはじめて何年も経ってから新しいドアを見つけてそれが地下に繋がっていたり、下着の詰まったダンボールを見つけたことも。結構よくみんなで集まっては飲んで、ライブとかもしてね。だから知らない人もいっぱいいて。最後は追い出されたね(笑)。

Kohhei:やりすぎた(笑)。特に印象的なのは、もんちゃんがKoichiくんの鼻を……..。

Koichi:家でライブをしていたら頭に血が上った隣人さんが、もんちゃんとか僕の部屋にケチャップをぶちまけたんです。結構ただならぬ空気になっちゃって。もんちゃんが隣人さんを止めに行って、そのもんちゃんを僕が追いかけて、なぜかもんちゃんが振り回したはしごに僕がぶつかって、最後はケチャップだか自分の血だか分からなくなりました(笑)。

ー全然笑えない事件ですね(笑)。

Koichi:この頃は無意識にお互いが影響しあっていたと思います。僕は生活から出てくるものに影響されて想像力が働くから、当時作った音楽はこの日常が反映されたものになっていると思う。

Kohhei:僕は一昨年この街からオランダのアムステルダムに引っ越しました。引っ越しはKoichiくんに手伝ってもらって。

Koichi:フランス経由で行って8時間くらい。途中、車ごとフェリーに乗って海を渡って。僕はまだストーク・ニューイントンに住み続けようと思います。

ー少し話は変わりますが、イギリスと日本で音楽の楽しみ方に対して違いはありますか?

Kohhei:ヨーロッパの方が直接お客さんと話せる機会が多いよね。日本のライブハウスは“見に行く場所”っていう感覚。みんなあんまり飲まないしね。逆に、“飲みに行く”くらいの気持ちで、あっちの人はライブを見に行くかもしれない。それって大事なことで、無理にお酒を飲めってことではなく、ドリンクが売れるとライブハウスの収益が上がるから、その分チケットも安くなる。

Koichi:日本はライブのチケットが高すぎる。

Kohhei:10ポンド(1500円程度)を越えると高いなって思う。

ー1500円弱で観に行けるライブなんて逆に日本じゃレアですよね。

Kohhei:敷居が高すぎるから、もう少し若い人も気軽にライブが楽しめるような社会になるといいですよね。

ー日本に拠点を移すことは考えていますか?

Koichi:拠点をどこに置くかというより、フレキシブルに移動する感じがいいな。半分向こう、半分こっちみたいな。理由ができたからどこかに行く。

Kohhei:行きやすくなったとはいえ、日本とヨーロッパは近いようで遠い。でも日本に長期で滞在していると、もうこっちに住んでいる感覚になる。

Koichi:あまりにもすべてが違うからね。頭で違うって判断しているわけではなくて、肌が感じている。この感覚を言葉で伝えるのって難しいけど………例えば、椅子一つとっても、日本の、ロンドンの、みたいな。なんとなく。あと日本は放った言葉の後ろに影が潜んでいますよね。でもラテン系の人だったらストレート。サルディニアっていうイタリアにある島の人と似ているかも。彼らもイタリア人なのに、常に一拍おいて話す感じがあって。

Kohhei:島国特有なのかな。

Koichi:ジプシーみたいな感じで移動して、演奏してっていう生活が一番しっくりくるな。根無し草みたいな。音楽聴きながら車乗ってね。

ーKoichiさんはGrimm Grimmの新作アルバム『Ginormous』をリリースされますよね。今年、その他に計画されていることはありますか?

Koichi:さらに次のアルバムを制作したい。

Kohhei:今年は僕らもアルバムが出ます。多分(笑)。制作は全部終わって、いま出す準備をしている最中です。あとは、BO NINGENとは別で、今年はソロでの活動にも力を入れていきたい。それもあって、2019年の年末はKoichiくんのツアーに参加して。なんとなくやりたい方向性の輪郭は見えたかな。なので、作ります。毎年言ってるけど(笑)。

Koichi:アルバムは記憶の地図みたいなものです。今作もそう。いまの生活が反映されているというか。これからも節目節目で発表していけたらいいな。

Kohhei:音楽で何ができるかを考えてもしょうがないけど、いまは少し考えたいな。12年バンドを続けてきて、ただなんとなくいい音楽みたいな感じでやっていたけど、もう一つ上の次元に持っていくために、音楽の役割を考えたい。人のためにとかはまだ言えないけど。

Koichi:なんだかんだ、結局みんな自分のためにやっていると思う。音楽って様々な戦いに望みを抱くときに流れているもの。現実では信じられないくらい悲惨なことが世界中で起きていて、それに立ち向かうとき、自分の命を信じるために流れていたらなと思う。僕の場合うまく話せないから、音楽をやっている部分もあるけど。

Kohhei:音楽聞いてもらえれば、それが伝わるんじゃないかな。

Koichi:エネルギーとして人の中に取り込まれるのが理想。みんな結局最後は居なくなるから。…..最近感じたのが、4歳の姪っ子が絵を描いていて、5秒くらいでパッと描く。あの宇宙観ってすごい。まず紙に描く概念がないから、絨毯までわ~っとはみ出して、テーブルの柱まで辿り着いたら、また戻ってくる。これは見習わないといけない感性だなと思いました。大人に近づくにつれて、だんだん常識を身に着けちゃうんだね。

Kohhei:難しいな、大人になると凝り固まってくるから。紙なんかないんだってね。

Koichi:この無限のエネルギーを、僕は音として表現していけたらいいな。

ー最後に、いま一番聴いている音楽を教えてください。

Koichi:いまちょうど流れていたのはGrouper。それからTirzah。友達が彼女のバンドでキーボードを弾いていて、EPをもらいました。すごく素直な音楽。あとはWilliam ByrneやRiki Hidaka、Cate Le Bonの先日リリースされた作品なども聴いています。

Kohhei:僕はEd Dowie。Koichiくんに教えてもらいました。消えてしまいそうな曲。あとはCaretakers、Le Volume Courbeなどを聴いています。

Grimm Grimm

『Ginormous』
on sale
HP:https://www.grimmgrimm.com/
Twitter:@GrimmGrimmuk
Instagram:@grimmgrimmuk

BO NINGEN

『Sudden Fictions』
coming out spring 2020
HP:http://boningen.info/
Twitter:@boningenuk
Instagram:@bo_ningen_band

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