MUSIC 2019.11.14

[Interview]NAGAN SERVER
感性で見つめたこの先の景色

Photography-Yuki Hori Text&Edit-Mizuki Kanno
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

ウッドベースを片手に、幽玄なラップミュージックを奏でるアーティスト、NAGAN SERVER。11月27日にニューシングル「see the star」のリリースを控える彼の音楽歴は優に10年を超え、アコースティックなサウンドに、エレクトロやジャズが融合したような新種のヒップホップがコアな音好きを唸らせ、これまでに多くのアーティストとの共演を果たしてきた。そして来る12月6日、NAGAN SERVERが渋谷WWWにてライブを開催する。これまで大阪をベースに活動してきた彼にとって、これが東京での初主催イベントだ。本インタビューで“ターニングポイント”と語られた2019年。今年ももう間もなくとなったこのタイミングに、天性のラッパーのクリエイティブをお届けしよう。

上手い下手より、感覚に身を委ねる

ーNAGAN SERVERさんの作品は、“独自の”や“新しい”などと形容されることが多いかと思います。今のスタイルに行き着いた所以を教えてください。

「ヒップホップ好きが高じて、ルーツや元ネタを掘っていたらジャズに行き着いたという感じです。特に1990年〜2000年代初頭のシーンに興味があります。一時期は、プログレ(プログレッシブ・ロック)みたいなジャンルにもハマり、ピンク・フロイドのインストにラップを乗せていた時期もありました。当時は誰からも理解されませんでしたが(笑)。確か大阪に上京してきた2年目くらい、19歳の頃かな。当時、プレフューズ73の1stアルバム『ボーカル・スタディーズ・アンド・アップロック・ナレーティヴス』に出会い、遂にこういう時代が来たなと嬉しくなったことを覚えています。ヒップホップもインストゥルメンタルで楽しむ時代だなと」

ー今ではご自身でウッドベースも弾かれますよね。はじめるきっかけは何だったんですか?

「ジャズが好きになりすぎていた20歳くらいの頃に、気になる音を探っていたら、それがウットベースでした。フォルムもかっこいいし、とりあえず買ってしまえと(笑)。1年くらいジャズマンに教わりつつ練習しましたが、ラップと一緒にやる難しさ故に諦め、そこから8年間くらいオブジェ化していました。が、ある日“一年後にはこれと一緒にライブをする”と決め、再挑戦を決意。ジャズベーシストから『君のノリは自分にも出せないから、それは大事にしたほうがいい』と言われ、今は上手い下手より、自分の思うがままに弾いています」

ー昨年の11月にリリースされた3rdアルバム『NR』ではフルートやサックスなどの木管楽器の音も印象的でした。

「メロディーを聴いた直感で、様々な楽器の音色を融合させています。この作業が昔から好きで。今はようやくヒップホップも生楽器を取り入れた作品や、バンドスタイルでのライブが行われる時代になりましたが、自分は15年くらい前からずっとこうして音の足し算引き算を楽しんできました」

ーお話を聞いていると現在のNAGAN SERVERさんの音楽は、大阪へ上京後の20歳前後でのインプットがベースになっているかと思います。そもそもなぜ上京を決意されたんですか?

「シンプルにラップで食べて行きたいなと思って。今のようにSNSが発達していない時代でしたので、広島で生まれ育った当時の僕にとって大阪は、未知のビッグシティでした。高校卒業の18歳で上京して、1年間はおとなしく街の様子を伺い、19歳で頭角を表してきた感じ(笑)。あとは、上京してきてはじめたバイトでの出会いが結構影響しています。普通の派遣会社なんですけど(笑)。そこでの出会いがきっかけで、タイトブースに所属するスケータークルーと知り合い、スケートシーンとも密な関係を築くことができました。当時からかっこよかったですよ、彼らは」

ー「タイトブースプロダクション」と「フラグメント」によるコラボ「50/50」ではモデルも務められていますよね。自身の音楽活動にそういったストリートシーンから影響を受けることはありますか?

「スケーターって世の中に“反抗”するのではなく、“柔軟”に対応する存在だと思うんです。例えば、道路を封鎖するために障害物が置かれたりするじゃないですか。彼らはそれを使ってトリックをしたりと自分のものにしてしまう。予想を超えていくんですよね。僕らラッパーも、クラブシーンが風営法の強化に伴い勢いを失ったことで、活躍の場が限られる時代になってきました。そんな時自分は、シーンの変化に自然と対応することができたことで、デイイベントへの出演機会が増えていきました。今では一般的になりましたが、当時は昼間のイベントにラッパーが出演するって結構レアで。でも、この柔軟性はスケーター達の生き方を隣で見ていたからかもしれない。どんな環境においても、いいライブをして自分を表現し続けていけば、生き残っていけるのかなみたいな」

ー東京のストリートシーンは大阪と比べていかがですか?

「東京はクリエイティブの盛んな街ですよね。移り変わりは激しいけど、だからこそ刺激的。東京は“冷静な人”が多いと見ています。仲間内で熱くなりすぎると、見失うものもたくさんありますし。客観視できるドライな関係性が、逆に新しい面白さを生んでいるのかなと思う事がよくあります」

ー現在は大阪に限らず活躍の場を広げられているかと思います。今年、はじめてFUJI ROCK FESTIVALに出演された事に関してご自身のHPで、“音楽人生最大のターニングポイント”と書かれていたのを拝見しました。

「ずっと出演を熱望していたフェスでしたが、今年というのは自分にとって、とても良いタイミングでした。実際にあのステージでライブをしてみた結果、案外とても冷静で。いつもよりいいライブができたんじゃないかなという自負はあります。その感覚を言葉で言い表すのは難しいですが、あのライブは次へと繋がるいいターニングポイントになったと思います」

ー11月に新曲のリリースを控えているとのことですが、その経験を経て、制作面での変化は何かありますか?

「作り方に関しては、特に何か変わったとこはありません。昔から制作を共にするべき人は基本的に、現場で意気投合し、意思疎通が図れた人。昔からこのやり方が多いです。あと、経験は自然とリリックに反映されるので、イメージが止まらない限り、進化し続けると思います」

ここから次のステージへ

ー12月6日に渋谷WWWにて初主催のライブが開催されるかと思います。そのステージへのイメージはありますか?

「今まで大阪を拠点に活動してきましたが、今年を機に東京で勝負をして行きたいと思っています。東京で自分がイベントを主催すると、どういうお客さんの層が来てくれるのか楽しみです。ここで成功すればまた次の景色が見えてくるだろうし」

ー今後は拠点も東京に移されるんですか?

「12月から東京に移ります。今まではこっちに拠点までも移す必要はないかなと思っていましたが、様々な人と出会う中で、今は東京にいた方がいいなっていうのを直感で思って。大阪はもちろん好きな場所ですが。今年はそういう意味でもターニングポイントなんです。感覚に身を委ねた時こそ、求めているクリエイティブへの答えが出るので、ここから次へと繋げて行きたいと思います」

INFORMATION

NAGAN SERVER

2019.11.27 「see the star」配信リリース

NAGAN SERVER presents “antenna” vol.1
2019.12.6 OPEN19:00 / START19:30
@渋谷WWW
出演:NAGAN SERVER / Last Electro / ZIN
チケット:チケットぴあ / ローソンチケット / e+
https://www-shibuya.jp/schedule/011853.php

HP:http://naganserver.jp/
Instagram:@naganserver
Twitter:@NAGANSERVER

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