―日本の音楽業界には、エージェントという概念がほとんどないですからね。
安澤:ですね。今は昔より出ていきやすいし招きやすいのに、昔ながらの人は腰が重いしやり方がわからない。若い人たちは、すでに自分たちでSNSとか使ってやってますよね。
Ren:僕のところにも、SNS経由で海外から直接メッセージがきて、やりとりすることもあります。
安澤:まあ、アーティストのリストを作るとか、そういうことはエージェントをやらない限りはメリットはないですし、そこは別にやりたくないんですけど。
―支援者がいることが前提だから、エージェントになる気はないということですよね。
安澤:はい。例えばウィキペディアみたいな、あれってみんな見たいから支援するじゃないですか。ああいうものって必要だと思うんです。
―成立するとおもしろいですね。
安澤:まったく成立しないかもしれないですけどね。
Ren:海外だとDJにもエージェントとマネージメントがいて当たり前だけど、日本では自分みたいなDJにマネージメントが付いてるのは異例というか。でもチームを持たないと伸びるところも伸びない。海外や地方のブッキングも取りきれないし、ブランディングもできない。海外のDJともよく共演しますが、彼らって日本のDJをめちゃくちゃ褒めるんです。「海外だと君たちよりレベルの低いDJがバンバン稼いでるよ、損してるよ」って。
―なるほど。
Ren:DJ自身も外に出ようとしないし、出るための基盤もない。そうやってマイナス要素が重なってズルズルといっている現状ですね。そんななかで海外の第一線で活動しているDJ NOBUさんとかは、ほんとにすごい。
安澤:DJ KRUSHさんや田中フミヤさん、DJ KENTAROさんもそうですよね。でもそうやって切り開いた人がいるのに、そこに続く道をサポートして作っていける役割の人が少ない。
Ren:アーティストもアグレッシブさが足りないと思うんです。海外ゲストと共演したときも、「おつかれさま、ありがとう」だけじゃなくて、もっとアピールしないと。俺のおじさん(=SPHERE)なんて、親父(=Zeebra)のDJでサイドMCをして、そのままの勢いで次にプレイしたDJスピナのときにも、最初のほうだけでしたけどサイドMCしてましたもん。
―さすがですね(笑)。安澤さんは若いアーティストに思うことはありますか?
安澤:若い人たちは編集能力が高いというか、まとまっていてうまい。でもそれで終わっちゃうんですよね。今は再生回数とかもわかっちゃうから、その数字を取りにいくというか、みんなになんとなくいいと思われるものを作る。でもそんなものはまたすぐ出てくる。みんなに認められるものって、もうすでに可視化されているわけで、その先に何があるかって言われたら特に何もない気がするんです。まわりが気持ち悪いとか嫌だって思っているものを気にせずやることって大切だと思いますし、自分自身もそこに立ち返りたいんですよね。
Ren:テクノの現場で演歌をかけるみたいな(笑)。
安澤:演歌なのかはわからないけど(笑)、そういうことのほうが新しい軸が生まれる気がします。
―クラブって、そういった個性の集まりだったり、時代の最先端が感じられる場所だったりするわけですが、今はそれが停滞していることについてはどう思いますか?
Ren:クラブが高齢化しているからかもしれないですね。でも海外は若い人たちがどんどん増えてきている。渋谷のクラブでも、同世代は外国人が多いんです。日本人の若い人も、クラブにどんどん来てほしい。”フェス文化”なんて言われるけど、そこにある音楽より前をいってる音楽を身近に感じられると思うんで。
安澤:なぜ若い人がクラブから遠のいたんですか?
Ren:単純に、そういう音楽に出会うきっかけがないんだと思います。俺はTAICOCLUBで出会えたけど。
安澤:そういう意味では、上の世代と下の世代が混じってない感じもするんですよね。
Ren:自分たちの世代が調子に乗ってる部分はあると思うんです。「別に先輩と絡まなくても、自分たちで楽しんでりゃいい」って。そういった内輪から生まれるものもあると思うんですけど、限界もある。そこを超えて見えるものってたくさんあるから、俺はどちらかというと違う世代ともいたい。
―これからの時代を作る若いアーティストに、大人ができることってなんでしょう?
安澤:日本は、アートや音楽について育成する機関ってほとんどないですよね。すぐ売れなきゃダメで、そこに向けてばかり。今の若い人たちは、僕らよりなんでもできるから、その分ちゃんとサポートしてあげないと日本にシーンがなくなっていく。あとは世代をつなげることですね。
Ren:先輩にはかっこつけていてほしいんです。憧れの存在でいてほしい。気に入った後輩がいたら「ついてこい!」って引っ張ってくれたらいい。俺なんてまだまだ、先輩を評価したりメッセージを送ったりできる立場じゃないですけど…。
―今日ここで、世代の違う二人がつながった。これがいつか花咲くこともあるかもしれませんね。
Ren:ほんと、よろしくお願いします!
安澤:こちらこそ。ありがとうございました。
「Motivators」
Vol.01 : JESSE
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Vol.04 : 村上虹郎
Vol.05 : 安澤太郎(TAICOCLUB)
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Vol.07 : DJ DYE(THA BLUE HERB)
Vol.08 : CHiNPAN
Vol.09 : Daichi Yamamoto
INFORMATION
■安澤太郎
TAICOCLUB http://taicoclub.com
■Ren Yokoi
2017年11月22日(水) PULLUP 5th Anniversary Presents SUDBEAT JAPAN TOUR 2017 @ 渋谷Sound Museum Vision
2017年11月30日(木) TOKYO PARTY CLUB @ 渋谷TRUNK (HOTEL)
2017年12月4日(月) World Connection @ 渋谷Contact
2017年12月9日(土) THE OATH @ 青山OATH
Instagram : @renyokoi