橙 [dai-dai]as photographed by TAIGA NAKANO VOL.07 夏帆

VOL.07 夏帆 / 女優

平成という時代は、どんな色をしていただろう。
俳優 仲野太賀がカメラを構え、平成に生まれた表現者たちの素顔と向き合う。

橙[dai-dai] vol.00 太賀
橙[dai-dai] vol.01 池松壮亮
橙 [dai-dai] vol.02 菅原小春
橙 [dai-dai] vol.EX KID FRESINO
橙 [dai-dai] vol.03 折坂悠太
橙 [dai-dai] vol.04 シム・ウンギョン
橙 [dai-dai] vol.08 若葉竜也
橙 [dai-dai] vol.06 山田健人
橙 [dai-dai] vol.05 朝井リョウ
橙 [dai-dai] vol.10 TAIRA

※このインタビューは、EYESCREAM 2020年9月号掲載の同連載の撮影に際して行われたものです。

作品が良くなれば、
どんなに辛い思いをしても報われる

仲野太賀:念願の夏帆さん登場ありがとうございました。連載始まってからどのタイミングで呼ぶか考えてたんですけど。楽しかったです。

夏帆:本当?呼ばれないのかと思ってたけど。私本当に写真に苦手意識があるから。

仲野太賀:未だに?デビューしたてとかならわかるけど。

夏帆:うん、今だからかもしれない。私カメラマンによって良くも悪くもすごい顔が変わるの。思ってることがすぐ顔に出るから、それが最近の直したいところ。だから太賀の腕がすごい試されてると思う。

仲野太賀:確かにわかりやすいですね。でも今日はそこそこ楽しんでくれてたかな(笑)。いい写真があると思うので。

夏帆:そこそこ緊張してるけどね。(笑)

ー普段はどんな話をしてるんですか。

夏帆:太賀に会うと語り合っちゃうよね。最初はくだらないところから入って、結果的には真面目な話をして帰る。私も太賀もすごく映像が好きだから、映画の勉強会みたいなね(笑)。こういう作品やりたいとか、演じたいとか、全く同じではないけど近いんだと思う。

仲野太賀:お互いの根の真面目さが出ちゃう(笑)最近見た映画の話から、こういう作品を日本で撮るにはどうしたらいいかなとか。作戦会議じゃないけど、より良いものが生まれるにはどうすればいいかをひたすら喋ってる。情報交換というか、学んだものを共有して、いつも士気が上がって帰るよね。頑張ろうぜ!って。

ーそもそも二人の出会いは?

仲野太賀:夏帆さんは、事務所の先輩で。初めて会ったのは僕が18で、夏帆さんが19だったんですけど、一気に仲良くなったのはここ数年だよね。

夏帆:うん。共演してからじゃないかな。武組で三週間鹿児島で一緒だった時に結束が強まった。

仲野太賀:武正晴さんね。あれで仲間感が生まれたよね。その時もちらっと写真を撮らせてもらってたけど、いつかこうしてちゃんと撮影したいと思ってたからすごく嬉しい。

夏帆:私も自分で仕事を選ぶようになって、この仕事に対して意識が明確になってたから仲良くなれたんだと思う。

仲野太賀:お互いちゃんと仕事ができるようになったタイミングで再会できたのが大きいかもしれない。夏帆はその当時、自信がないって言ってたけど、同世代の女優さんの中でも相当ストイックな認識があった。どんなに周りが絶賛してても、自分にOK出さないでしょ?

夏帆:OK出さないね。仕事始めたのも自分の意思で始めたわけじゃなく、スカウトされて入って、ティーン誌のモデルとかがしたかったから、事務所にはお芝居やりたくないですって言ってたんだけど、気がついたらお芝居やってて(笑)だから、やっぱり自分の根底に、できないって思いが今でもあるんだよね。あと向いてないなって思うもん(笑)。いろんな人と会う中で、この人は役者をやるために生まれてきたのかなって人もいるわけじゃん。自分はそうじゃないって思うから、自分で鞭打たないと同じ土俵にいけない。

仲野太賀:自分はそうじゃないって視点がすごく夏帆さんらしい気がしてて。ちゃんと”普通”の感覚を持ってるというか、自分がこうあるべきだってことを第一に考える俳優が多い中で、まず一歩引いて見られるるというスタンスって実は忘れがち。その感覚があるのが稀有なんだろうな。

夏帆:私は太賀みたいにポテンシャル高くないけど、多分共通しているのは作品のためにって考え方。自分がとか、誰かのためにというより、とにかく作品がよくなるために自分がどれだけできるのかってところで私はやってて。それが一番モチベーションなのかもしれない。作品が良くなれば、どんなに辛い思いをしても報われるからね。

仲野太賀:確かにそこは近しい気がする。自分たちは俳優部であって、やっぱり作品が一番偉いというか。そういう意味でも、ここ2、3年で同志感をすごく感じてる。

夏帆:同志だよね。本当に思う。もはや兄弟みたいな存在。

夏帆:太賀は自分の作品見てて、これはベストアクトだなっていうのはある?

仲野太賀:普段の自分では表現しきれなかったものとか、演出で思いもよらない方向に行った時かな。例えば『ゆとりですが何か?』の山岸役とか。あんなキャラクター生み出せる引き出しは自分になかったから、宮藤官九郎さんの導きだよね。

夏帆:宮藤さんってあてがきうまいし、人をよく見てるよね。

仲野太賀:宮藤さんと舞台で二ヶ月くらい一緒で、それを経てのオファーだったのね。自分としては結構良い子にすましてたつもりだったのに、上がってきたのがあのモンスター後輩役だったから、宮藤さんにどう見られてたんだろうって(笑)。そんな風に、誰かに扉を開いてもらえる作品に巡り会えたら、自分の思ってもないところに行けるんだろうなって最近は感じてる。

夏帆:そうだよね。だからインタビューとかでどんな役やりたいですか?って聞かれるけど難しいよね。出会いだし。そういうの自分じゃ分からなかったりするしね。

ーそれでは最後に、今後二人でやってみたいことなどありますか?

仲野太賀:2人で誰かに写真を撮ってもらうことってあったっけ?

夏帆:ないね。素敵な写真家さんとかでやってみたいね。

仲野太賀:それできたら面白そう。こういう関係性だからこそ、やれることがある気がするから一緒にできたらいいな。この先も共演できたら嬉しい。

夏帆:そうだね。ちゃんとこれで勝負しようって作品で共演できたらいいね。

夏帆

平成3年6月30日、東京生まれ。2007年『天然コケッコー』にて映画デビュー。<第31回日本アカデミー賞>新人俳優賞をはじめ、新人賞を総なめに。以降、映画、ドラマを中心に活躍。15年『海街diary』では<第39回日本アカデミー賞>助演女優賞に輝く。おもな出演作に『箱入り息子の恋』(2013)、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(2019)、『Red』(2020)など多数。


仲野太賀

平成5年生まれ、東京都出身。13歳で俳優デビュー。カメラに魅了されたのは小学生の頃。
https://www.stardust.co.jp/section1/profile/nakanotaiga.html

ワンピース¥149,000、サンダル¥89,000/
ともにMARNI(マルニ 表参道 Tel_03-3403-8660)

INFORMATION

夏帆写真集『おとととい』

撮影:石田真澄
発売日:2022年4月9日(土)
価格:¥3,520
サイズ:A4変形
ページ数:120ページ
ISBN:978-4-910528-11-3
発行:SDP

Paraviオリジナルドラマ

『それ忘れてくださいって言いましたけど。』

監督:太田良 脚本:太田麻衣子
音楽:曽我部恵一
出演:市川実日子、曽我部恵一、夏帆、吉田羊、西島秀俊ほか
Paraviにて独占配信中
下北沢のカフェ。お店のオーナーはギター片手に歌っているソカベさん。
アルバイトをしているのは自身も役者のミカコさん。
太陽にまつわる予言がネットで拡散された日、たまたま店に来た役者さんたちがしゃべって笑って歌って……。
ノンストップの会話劇が楽しい新感覚ドラマ。
https://www.paravi.jp/title/90877

橙 [dai-dai]as photographed by TAIGA vol.00 太賀

橙 [dai-dai]as photographed by TAIGA vol.01 池松壮亮

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