MUSIC 2021.07.08

Interview:内田怜央 from Kroi × 新保拓人 新しいクリエイションを生み出すために

Photography_Ryouhei Ambo、Text & Edit_Mizuki Kanno
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

KroiのMusic Videoをご覧になったことはあるだろうか? 変幻自在のサウンドと軽快なリリックが作る楽曲の鮮やかな世界観が、独特な視点から映像に落とし込まれ、音楽と相まって脳内を駆け巡る。そして病みつきになる。聞けば、先日リリースされたKroiの1stアルバム『LENS』のリードトラック「Balmy Life」は、MVの企画がベースになって生まれた曲なんだとか。その背景には、監督とバンドの絶対的な信頼関係があった。Kroiが2020年にリリースしたシングル「HORN」を皮切りに、これまで全5曲のMVの監督を務めた新保拓人とKroiの音楽性を司るVo.内田怜央による対談をお届けする。

L to R→内田怜央、新保拓人

「怜央くんの歌詞自体、映画っぽいなって思う」

ー新保さんが最初に手がけたKroiのMVが「HORN」ですよね。

新保拓人:「HORN」の現場で初めてKroiに会いました。その日はMV以外にも、Kroiの配信用のライブ映像を撮ることになっていて、初めて彼らのライブを観たんですが、めっちゃかっこよくて結構くらいました。これは只者じゃないなと。

内田怜央:新保拓人さんは、いまの音楽シーンを結構支配されてる監督じゃないですか(笑)。なので新保さんの作品は僕自身、もちろん目にしていたので、こうしてご一緒できて嬉しいです。MVは曲を視覚的に表現する手段だと思っていましたが、新保さんは、そういう要素ももちろんありつつ、曲の解釈をまたひとつ増やしてくれるようなMVを作る方なんだなって思いました。アーティストが伝えたいことをうまく汲み取って、最適な表現方法を理解した上で、それを崩すことも上手。やっぱ楽曲とMVに多少のギャップがないと、面白くないと思うんです。

ー新保さんからみた、Kroiの魅力って何だと思いますか?

新保:曲はかっこいいし、パフォーマンスも最高なのに、本人たちは肩の力が抜けてて、その塩梅がちょうどいい。日本にはあまりいないタイプのバンドですよね。自分はそこにハマりました。

内田:嬉しいですね。僕らも新保さんとのMVの企画会議が、いつもめちゃめちゃ楽しみなんです。普段、企画を構成するときってどうしてるんですか?

新保:怜央くんが書く歌詞って、聴いてるだけだと何を言ってるかわからないんだけど(笑)、でもたまにパンチラインがあって、それに対して映像を思い浮かべて、MVの構想を練ってる。怜央くんの歌詞自体、映画っぽいなって思う。楽曲の雰囲気を言葉で提示して、それを繋いでいくみたいな印象。だから僕自身もアイディアが思い浮かびやすい。他のMVではいつも1案しか書かないけど、Kroiのときは3、4案くらい書いてる。

内田:ひとつの楽曲に対して、自分の中でストーリーを組んではいますが、その全てを3~4分の中で完結させちゃうと、特に展開のない薄い話になっちゃうんですよね。ひとつストーリーを作った上で、この部分は抜くみたいな感じで引き算して、あやふやな部分を生み出すことで、聴いてくれた人の考える余地みたいなのを残す。それが音楽なのかなって思いながら歌詞を書いていたので、そう言っていただけてめちゃめちゃ嬉しいです。メンバーにも、歌詞の説明を一切しないんですよね。

新保:じゃあいつもMVを作る前に曲と合わせて送られてくる関くんのお言葉は、関くん独自の解釈なんだ。いつも10個くらいキーワードみたいなのが送られてきて、一応それもちらっと確認していて、ほんとにちらっとですが(笑)。

内田:説明しなきゃいけないときはするけど、基本的には予備知識なしで自分の音を出してもらってます。それぞれが感じたままに演奏することで、曲に多面性が出ている気がして。例えば関さん視点で聴いたらそうかもしれない、っていうひとつの解釈が、いろんな人にも伝わるんじゃないかなっていう期待感。だからあえて説明しないんです。

新保:それって曲がかっこいいからできることだよね。そもそも説得力があるから。

内田:新保さんは同じ曲なのに、違う視点からのMV案をいつも何案も出してくれるじゃないですか。それってどういう思考回路なんだろうって思っていて。

新保:やっぱり、異なるアプローチからの案を書くには、それぞれに期間を設けないと難しい。1案できたら脳みそはそれになってるから、何も考えない日を挟んで、フレッシュな気持ちでまた曲を聴いてみて、思い浮かんだ新しい映像を企画に落として。一度忘れることが大事かもしれない。

ーニュー・アルバム『LENS』収録楽曲の「Balmy Life」は、新保さんの企画案をベースに内田さんが制作した楽曲だと伺いました。

内田:『STRUCTURE DECK』という前作のEPに入っている「risk」という曲のMV会議のときに、新保さんが第1案であげてくれた企画なんです。

新保:テーマが「カルト」。80年代にアメリカのオレゴン州を乗っ取ろうとした宗教団体のドキュメンタリーを、ちょうど去年の今頃に観て。そのあとに「risk」を聴いたら、カルト性をテーマにしたプランが浮かんできたので、それを会議で提案したら怜央くんが「カルトをテーマにした曲を別で書きたい」って言ってくれて。

内田:書くにあたって、宗教とは何かみたいなことをめちゃめちゃ調べた結果、自分が感じた、信仰することへの意味みたいなものを、身近なところに当てはめてリリックは書きました。今の「Balmy Life」に到達するまでに、10曲くらい書いてますね。

新保:すごい。他のも聴いてみたい。

内田:新保さんが「risk」でこの企画を書いてくれたことを、自分の中でわりと引きずっていて。スローテンポの爽やかな感じのを5曲くらい書いて、一度メンバーに出したんですけど、反応がイマイチで。自分でもまだ行けるってことはわかっていたので、それを言葉にしなくてもちゃんと伝えてくれる、メンバーでよかったなって思いました。なので、そこからさらに5曲くらい書いて、再提出して。メンバーに曲を出すことに、一番命をかけてる節はあります。自分の中に推し曲とかあっても、それだけを出すのは怖いんで、何曲か出したりして。

新保:なんかわかるわそれ(笑)。いつもどうやって曲作ってる?楽器触って?

内田:そうですね。いつも、いろんな作り方を試してみたくて、家にいろんな楽器があるんですけど、ギターから始めてみたり、今回はパーカッションからいっちゃおうみたいな。テンションが上がるんですよね、変なところから作ってやった、みたいな(笑)。

新保:今回のアルバムの中で一番の推し曲みたいなのってある?

内田:今は「Balmy Life」が一番好きかも。新保さんの作品から影響を受けてできた曲だし、MVありきで楽曲を作るのは自分にとってはじめての試みだったので、思い入れがある。あとはアルバムの中で、一番最後に録った曲だからっていうのもありますね。ひとつのアルバムの中でも録るごとに、曲はどんどん進化していて。次の曲ではマイキングをこうしたいなとか、ミックスもうちょっと変えてみようとか、試しながら段々良くなっていくんです。歌詞をあやふやに作ってる分、何年後とかに自分の作った曲を改めて聴くと、一周回ってそのときの自分に刺さってきたりするんですよね。それがまた面白いんです。

「自分の中でのKroiの第1章が終わるなっていうのを感じた」

ー本作の収録曲でもあり、Kroiのメジャー1stシングル「shift command」は、「Balmy Life」とは全く異なる雰囲気を持ったMVですよね。

新保:ピコピコした音が印象的だったので、SF調に。あれも3案くらい出したかな。観た人の想像力が膨らみやすいように、ワンシーンだけにしようと思って。UFOが突き刺さっていて、その横にピックアップトラックが停まっていたら? っていう、その先はそれぞれのイマジネーションに任せる設定を作りました。

ーピックアップトラックが走り去った後のマークって……

新保:「Balmy Life」の宗教のマークですね。僕の中で「HORN」から「Balmy Life」は5部作としていて、「Page」からよくわかんない伏線を張って、一応全部回収しました。

内田:アルバム制作の後半あたりで、自分の中でのKroiの第1章が終わるなっていうのを感じて。それを新保さんにもお伝えしたら、「Balmy Life」のMVは今までのものをまとめるような作品にしようって言ってくれて、5部作という形になりました。

新保:第2章のプランはもうある?

内田:もう少しサウンド感とかをひねくってみたり、より新しいスタイルを追求してみたいと思っています。第1章はKroiのルーツにもなる楽曲たちを作ってきたので、ここからは少し実験的な感覚で。愛せる楽曲をたくさん作っていきます。

ー様々な引き出しを持ったお二人が、作り手として大切にしていること、軸のようなものはありますか?

内田:自分の正解を作らないこと。これオレっぽいよな、ていう枠に収まりたくないんです。いつもとは少しテイストの違う曲が作れたと思って、他の人に聴かせても「怜央っぽいね」って言われたりして、自分らしさって意外と消すのが、難しかったりするんですよね。それをいかに消してやろうかっていう挑戦と、より新しいものを作り続けることが大切。「まだ誰も聴いたことのない音楽」みたいなところを目指して作っています。

新保:音楽が一番よく聴こえてくれるMVを作ることにプラスして、さっき怜央くんが言ってくれたように、そこに僕の解釈を付け加えることで、曲の表情が増えるといいなと思っています。映像は雰囲気が大事なので、曲を聴いたときに受け取ったムードを映像にも落とし込みつつ、それが何か新しいものになっているのが理想です。僕も結構飽きっぽくて、いろんな表現を試してみたいタイプ。Kroiはそれをやらせてくれるバンドだから、常にフレッシュな気持ちで向き合えます。

内田:新保さんの作品に対するマインドは、Kroiのバンド性とめちゃめちゃ合う。新保さんの作品を観ていて、無理なインプットをしてないなって思うんです。純粋に自分が興味のあることをちゃんと吸収して、アウトプットしている感じがすごいわかる。それって表現者として最高ですよね。

新保:普段、何気なく話していることとかが、アイディアのヒントになっていて。他人が話していて面白いなって思った考えとかは、結構残ってますね。気になることがあったら、とことん調べたり。結局、普段の体験が蓄積されて、作品に繋がっていると思います。

ー新しいことを追い続けるお二人が、次にチャレンジしたいことを教えてください。

内田:怪談をやりたいです。最近めちゃめちゃ怖い話にハマっていて、YouTubeで怖い話を流しながら寝て、悪夢を見る(笑)。普通に曲作って、怪談だけをポエトリーラップみたいに話す楽曲とか作ろうかな。だから怪談収集したいなって。怪談師さんとかって、タクシーに乗ったら運転手さんに話しかけて、情報収集しているみたいで。

新保:オレもいっときそれやってたわ。「怖い話ありますか?」って(笑)。自分は今短編の映画を撮ろうとしていて、今はそれに向けて全身全霊だから、終わったら何か新しいことをはじめたいと思います。

内田:オレもようやくアルバム制作が終わったから、怖い話にハマって。アウトプットしてるときって他を入れ込めなくて、だからその分、終わったら何か新しいことに出会いたくなるんですよね。

INFORMATION

Kroi 1st Album 『LENS』

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M1 Balmy Life
M2 sanso
M3 selva
M4 夜明け
M5 Pirarucu
M6 ichijiku
M7 a force
M8 侵攻
M9 NewDay
M10 shift command
M11 帰路
M12 feeling
https://lnk.to/LENS

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