CULTURE 2018.12.31

FOCUS:『新編 代官山17番地』
そこに、人々の心を優しくポジティブにする何かがあった
from EYESCREAM No.169

Edit—Shigemitsu Araki
EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部

伝説の写真集が、未発表作品の新編集とハイエンド印刷によりマスターピースとして息を吹き返した。本誌EYESCREAM No.169では、新編のあとがきを一部抜粋して掲載。webでも、その内容を特別にご紹介する。

同潤会アパートとは関東大震災で被害を受けた東京や横浜に16軒建てられた集合住宅で、斬新なデザインが際立つ建築物でした。窓や階段の形、玄関や天井のデザインには、典型的な日本の建築物には見られない、どこか無国籍な魅力があって、陽の当たり方によっていつも新しい発見がありました。その中でも特に私の住まいから徒歩数分のところにあった代官山アパートは、その地域の特性から洒落た姿の若者が多く通りすがり、住民の方々に混じり、彼らに声をかけ撮影に至ることがしばしばありました。彼らの中には実際にモデルやミュージシャンたちもいて、実にこの洒落た建物の構造に溶け込み、まるでファッションや音楽雑誌の撮影をしているかの様な錯覚を覚えたのでした。《中略》旧版と新編写真集の中に、走り去る2人の若者の後ろ姿を捉えた「TOMORROW」と名付けた一枚が収められています。写っているのは、当時この敷地内にあった美容室「boy bis」のスタッフの2人です。この2人が私に残した言葉がありました。「これを終わりと思うんじゃなくて、人々が優しくなれる街を作る、新しいスタートにしなくては……。」その言葉に共感し、「TOMORROW」というタイトルをこの一枚に付けたのですが、果たして20年後の現在、私たちを取り巻いている街や社会や新しい建物は、ハイテク化、耐震化などで人々にある一面で優しくなったのかも知れませんが、当時私が建物から受けていた生きる高揚感は、街に溢れているのでしょうか。また、人々の心は以前より優しくなったでしょうか。建物やインフラの整備と同じ様に、人々の心を優しくポジティブにする何かがそれぞれの時代に重要です。1927年に完成し1996年に取り壊された「同潤会代官山アパート」。このたび未使用カットを多数加えた『新編 代官山17番地』が完成したことは写真家として光栄の極みです。この編集に当たり、やはり私は未だこの建物とそこで見かけた人々を、背後に廃材が写っていようとも、ひたすら美しく描こうとしていることに気付きました。しかし、この美しさが人々の心を動かし、いつか人間に優しい社会を作るきっかけになればと願ってやみません。」

INFORMATION

『新編 代官山17番地』

発売中
ハービー・山口
(スペースッシャワーブックス)

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