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VERDY×BUMP OF CHICKEN
VERDY@verdy
BUMP OF CHICKEN
https://www.bumpofchicken.com/
グラフィックデザイナー、ベルディがストリートの今をベースに世界中のクリエイターやアーティストと対談していく本企画。7回目のお相手は何と……BUMP OF CHICKEN! 7月10日にリリースされたアルバム『aurora arc』のジャケットデザインをベルディが手掛けたわけだが、その制作秘話について話し合ってもらった。
ーこの連載はVerdyさん主導でクリエイターやアーティストと対談を行う企画でして、比較的ストリートでDIYな人が出演することが多いんです。
直井由文(以下、直井):そうなんですね。(読者は)バンプのこと、絶対に知らないですよね。
Verdy:いや、絶対知っていると思いますよ(笑)。
ーはい。知らない人はいないです、普通に。今回はアルバム『aurora arc』について話していただきたいです。ジャケットにはオーロラの写真がありますが、撮影しに行くことは当初から決まっていたんですか?
藤原基央(以下、藤原):いえ、後から決まったんです。まず『aurora arc』というタイトルが決まったんですが、スタッフが、「こんなタイトルに決まったんだから、実際にオーロラを見に行くのはどう?行こうよ」って言ってくれて。せっかく行くんであれば、カメラマンと一緒に行ってオーロラが見れたら写真を撮ろう、となったんです。実際に撮影できたので、この写真をアルバムのジャケットにできたら最高じゃない? って話になり、こういう形になっていきました。僕らの純粋な希望がキッカケなんです。
直井:オーロラを見に行く前からVerdyにアートワークをお願いすることは決まっていたので、一緒に行こうって誘ったんですけど、イヤだって断られて(笑)。
Verdy:イヤだったんじゃないですよ(笑)。スケジュール的にどうしても合わなかったんです。
升秀夫:急に決まった旅でしたし、まだレコーディングする内容も残っているような状況でしたからね。Verdyにしたって、そんないきなり「オーロラ見に行こうぜ」って言われてもね。
直井:一緒に行けないけどってことで、Verdyからは宿題を出されたんです。
ーどんな宿題だったんですか?
藤原:どんな旅だったのかが分かるようにメンバー同士で写真を撮ってきてください。飛行機のチケットだとか、現地で買ったものの包装紙、レシートとかを持って帰ってきて僕(Verdy)に見せてくださいっていう2つの内容でした。普段はあんまり写真を撮ったりするタイプではないんですけど、みんなで旅にまつわる色んな写真を撮ったり、普段だったらゴミとして捨てちゃうようなものも、できる限り多く持ち帰ってVerdyに渡したんです。
Verdy:自分の場合は、海外に旅行に行くと、特にそれが初めての場所だと、その国のデザインが気になるんです。看板やレシートや包装紙、絵葉書、何気ないお土産用のキーホルダーとか。そこからインスピレーションが湧くことが多いですし、Girls Don’t CryやWasted Youthのプロダクトには、実際にそういうことを落とし込んでいるので、皆さんにお願いさせていただきました。メンバーが実際に、その場所で得たものや、体験したことをアルバムのデザインに散りばめたら面白いんじゃないかな、と思って。メンバー同士で撮影して来てほしい、とお願いした理由は、『aurora arc』のCDを手にした人が、BUMP OF CHICKENの旅を追体験できたらいいな、と考えてのことでした。
増川弘明:だから僕らもリアリティをもって写真を撮ってきたんですよ。普段だったら意識的にやらないと、ここまで撮らないなってものまで撮影できたし。Verdyから宿題をもらったからこそ「これ、カワイイな」ってものに気がつけたり。新しい視点をくれたような感覚でしたね。
Verdy:でも、今回、オーロラを実際に見に行くというのは、僕的にはすごく納得だし、自分と考えが似ているなって思ったんですよ。というのも、僕は最初、実際にアメリカに行ったことがないのに、アメリカのカルチャーに影響を受けたグラフィックを制作していて。そこに違和感を感じていたから1人でLAに行ったことがあって。実際に自分が表現するものに対して、自分の目で見て実物を確認するという姿勢に共通点を感じたんです。
ーそもそもの話ですが、BUMP OF CHICKENとVerdyさんはどのように知り合ったんですか?
直井:もともと僕がVerdyの大ファンだったんですよ。Girls Don’t CryのTシャツがバズる直前くらいに、その存在を知ったんです。しかも、LAを旅行している最中にアメリカのキッズが着ていたのを見て。それで「そのTシャツ、どこで売ってるの?」って、その子に聞いたら「知らないの? Verdyっていう日本人のデザイナーがやってるんだぜ?」って言われて、マジか!? と。帰国してから、どこで買えるのか調べたんですけど、わかった情報は、どうやらゲリラ的にポップアップを行なっているらしい、ということ。というわけで、何度かチャレンジしてポップアップ開催時には並んでたんです。買えなかったけど(笑)。
ーあの長蛇の列に並んだんですか(笑)。
直井:そう。その後、GR8(セレクトショップ)で友達がポップアップを開催しているときに遊びに行ったら、たまたまVerdyがいたんです。そこで勇気を振り絞って「僕、BUMP OF CHICKENっていうバンドでベースをやっています! もし良かったら友達になってください!!」って話しかけたんですよ。
一同:笑
Verdy:チャマさん(直井由文の愛称)がGirls Don’t CryとUNDERCOVERのコラボを着てくれているっていうのは聞いていたんですけど、UNDERCOVERだから着ているんだろうなって普通に思っていました。話しかけられたときは「わっ、本物だ!」ってビックリしましたよ(笑)。そこでLINEを交換して、家に帰って嫁に自慢したんです。うちの嫁もバンプのことが好きだったので「え、マジで!?」って驚いて。
直井:その話を聞いて、すぐにバンプの作品をVerdyに送りました。
一同:笑
直井:他意があったわけではなくて、純粋にリスペクトしているデザイナーに、自分たちがどんなことを表現しているのかを知ってほしくて。その頃は『BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA 』っていう映像作品をリリースした時期だったので、それを送ったんです。
Verdy:バンプがどんな存在なのかは知っていたつもりでしたけど、その映像を見て、本当にすごいなって再認識しましたね。
COUNTDOWN JAPAN 18/19でリリースされたVerdyデザインのロゴTシャツ
ー最初にVerdyさんがBUMP OF CHICKENのデザインを手掛けられたのはCOUNTDOWN JAPAN 18/19でリリースされたロゴTシャツですよね?
直井:そうですね。COUNTDOWN JAPAN 18/19に出演するのが決定し、さて、どんなグッズを作るかな、と悩み考えていたときに、Verdyの顔がフワワ〜ンと夜空に浮かんで『チャマさん☆』って呼びかけてきて。
Verdy:あはは!(笑)。
直井:そこでメンバーにVerdyのことを紹介したんですけど、すごくカッコいいじゃん、となって。すぐに「やってくれないか」って連絡をしたんです。
Verdy:バンドのグラフィックを制作するうえで大切なのは、お互いにリスペクトがあって平等にクリエイティブについて言い合える状況だと思うんですよ。だから制作に取り掛かる前にチャマさんと何度も話し合ったんです。バンドがどのような考えで活動しているのか、だとか。展開するグッズのデザインに関して、どんな思いをメンバーが持っているのか、ということを聞いて、本当にやってみたいと思って。でも、バンプほどの規模感を持つビッグバンドだと、ファンの人は僕のことを知らないだろうし、ちゃんと(バンプの)お客さんに良いと判断してもらえるものが自分にできるのだろうか、ってドキドキしながら作っていったんです。
直井:グッズの展開に関しては、僕がバンドを代表して行なっているんですけど、メンバー全員が納得するように作っているんですね。楽曲やアートワーク、MVも含め、バンドとして発信するものに関しては、全員が納得したうえでリリースしているんです。で、Verdyが最初にBUMP OF CHICKENのサークルロゴを作って見せてくれたときに、もう涙が出るほどに感動したんですよ。なんだか、そのロゴが太陽にも見えるし、笑ってるようにも見えるし、メンバー4人の絆のようにも見えるし。リスナーとの円にも解釈できるし。何より、自分が好きだった80年代、90年代のガレージバンドのニュアンスも感じたし。それで、他のメンバーにも見てもらって……どうでした??
藤原:うん。まず、僕らは何をやるにしても自分たちがそれを愛せるか、ということを1番大事にしていて。今まで出してきたアルバムに関しても、ジャケットやグッズも自分たちが大好きかどうかが大切なんです。それを踏まえて、Verdyが最初に出してくれたサークルロゴは、ひと目で大好きになったんです。Verdyは僕たちの現在と、ここに至るまでの過程を頑張って理解しようとしてくれて、それを出来るだけ普遍的な形にしてくれようとしたんじゃないかなって。満場一致で最高じゃんって。Verdyはバンドの規模感について気にしていた部分もあったのかもしれないけど、それに対しての返答は「誰が何と言おうと僕らはこれが良い」ということ。このロゴのステッカーを自分のギターにも貼っているし、このロゴのTシャツを自分が着たいって思ったんです。
直井:自分たちにとって、Verdyにデザインをお願いするということは、バズらせたいわけでも、トレンドに乗りたいわけでもないんです。そのグッズを自分でもほしいと思えるかどうか。お客さんには、お客さん自身の趣味や感覚でセレクトしてもらいたいと考えているんです。そこで、僕らが納得して良いと思えていれば、絶対にお客さんには失礼にはならないと思うし。それに、せっかく一緒にやるんであれば、Verdyにも楽しんでほしかったんですよね。アルバム『aurora arc』のアートワーク制作は、今までにない良い意味での緊張感もあって、最高にエキサイティングで楽しいプロジェクトになったなって感じでした。
藤原:僕らにとって良いモノづくりというのは、生活の中から音楽が出てきているかどうか、ということだと考えているんです。楽器の音とか作る曲とか、どういうプレイをするか、どういうフレーズが出てくるかってのも生き方に影響されるものですし、真摯に向き合うほどに、そうなっていくと思うんですね。最初にVerdyが言っていた『海外に行ったときに見るものからインスピレーションを受けることが多い』というのは、僕らと同じ姿勢からくるものなんだと思うんです。そういう人だからこそ、あんなデザインを作ってくれたんだと思えます。モノづくりに対する根本的な部分でシンパシーを感じるなって。Verdyのデザインもライフスタイルの中からアイディアが出て、それが落とし込まれているわけですから。
Verdyデザインによる『aurora arc』のアートワーク
ー総じて『aurora arc』の制作を経て、お互いに、どんな点が面白いと感じましたか?
Verdy:バンドのメンバー全員が本当にちゃんと考えるっていうことがいいなって、僕は思いました。そういう気持ちがあって、チーム全体が1つの方向に向いて動くじゃないですか。制作しながら、この『aurora arc』に関係する人の思いが、すごく伝わってきたんですよね。良いものをみんなで作ろうって姿勢が最高でしたし、そのようにプロジェクトを進められたことが面白かったです。プリントや仕様、紙質からケースの種類まで、本当に細部まで細かく話し合いながら一緒に作り上げていったんですが、そういうことの積み重ねの結果、良いデザインが生まれたんじゃないかなって。グラフィックを担当してジャケットが出来た瞬間に本当にいいなって感じられたのは、そのお陰なんだと思います。友達のバンドで「スケジュールがないから急ぎで何でもいいからグラフィックを作って!」ってお願いされることもあるんですけど、それに合わせて急ピッチで作業するということは、もしかしたら、彼らの作品のクオリティを下げてしまうことに繋がってしまうのかもしれない、と考えるようになったんですよね。今回のプロジェクトは、そういう意味でも自分自身もすごく勉強になりましたし、成長できたと感じています。
直井:なんか僕としては今も信じられないですよ、VerdyとBUMP OF CHICKENが一緒に仕事しているってことが。メンバーにVerdyを紹介したとき、アッという間に打ち解けていた瞬間も本当に嬉しかったです。作詞作曲を担当する藤原くんが、何気ない会話の中でVerdyに「ああいう言葉ってどうやって生まれてくるの?」って聞いていたりとか。僕の大好きな作詞作曲家が、僕の大好きなグラフィックアーティストと、そんな内容を話してるなんて、こんな素敵なことあるの?? って。プライスレスな体験でした。完全に”オレ得”ってやつですよ。1番ラッキーな立場でした。今度、2人の対談とか、マジでやってほしい(笑)。
藤原:……もう、ほめぎるよ。Verdyが、ほめちぎれちゃうかも(笑)。ワンサイドゲームになると思います。
Verdy:あはは!(笑)。でも、本当に『aurora arc』は現物を見てもらえればわかると思うんですけど、細部まで凝った作りになっているので、面白いと思います。様々な要素やクリエイションが自然にミックスされて表現されていると思います。それこそ、世界中にあるストリートカルチャーと同じように。
直井:うん。まさしくBUMP OF CHICKENという形になっているので、是非実際に作品を手に取って、アートワークも含めて体験してほしいですね。
Verdy 対談連載 “Walk your talk.”
第1回目 小林資幸[PHINGERIN]
第2回目 Inagawa Jun
第3回目 谷中敦
第4回 KEI
第5回 Kosuke Kawamura
第6回 BIM