OTHER 2020.08.04

Walk your talk FINAL -対談連載 最終回- VERDY Look Back “Walk your talk”

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Takaki Iwata, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

アーティスト、ヴェルディがストリートの今をベースに世界中のクリエイターやアーティストと対談していく本企画も今回が最終回。ラストは対談ではなく、ヴェルディにこれまでの対談を振り返ってもらいつつ、この時代においてどんな考えでクリエイションに向かっているかを聞いた。約2年半に渡る連載、ご協力ありがとうございました!

本当にやりたいことをやり続けている人たちとの対話でした

ーさて、連載”Walk your talk”。2018年4月1日発売のEYESCREAMでスタートしたので2年以上続けさせていただきました。

VERDY:初回は小林さん(PHINGERINディレクター、小林資幸氏)でしたね。懐かしいけど、この頃から活動の規模感が世界に広がって、忙しなく動き続けていたのでアッという間でしたね。自分の重要な過渡期に対談連載をさせていただいて、良い機会をもらえたと思っています。

ー2018年6月のInagawa Junさん、同年12月のKEIさんなど、この企画で初めてメディアにピックアップされたユースも多かったようです。

VERDY:そうですね。Junくんも、この対談企画がキッカケでtokyovitaminと出会って今でも付き合いがあるようですし、今でもKEIくんも大活躍ですからね。彼らはもともと才能も人気もあるし、ボクが面白いと感じたので企画に誘ってお話しさせていただいたんですけど、何か少しでもきっかけになれたのは良かったと思っています。

ー改めて印象深い回をピックアップするとしたら、どれですか?

VERDY:いやぁ、全部ですね(笑)。本当にそれぞれと、その人ならではの楽しい話ができましたし、ここからコラボや仕事に繋がったりしていきましたからね。やっぱり自分が会いたい人に来てもらったので、毎回良い空気感が生まれていましたよね。顔を合わせて対談という形式だからこそ聞けることもあったので楽しかったです。特に、Vol.10のKeiくん(YouthQuake、CarService、PULPのKei Hashimoto)は、あの対談でお互いのルーツを語り合えて、その後にCarServiceとVK DESIGN WORKSでコラボレートできたので、すごく良いストーリーを作ることができました。

ーそもそもなんですが、対談とか人と話すのは好きですか?

VERDY:もともと好きですよ。それに居酒屋やバーで紹介されて初めて話すわけではなくて、対談企画ありきで会話をスタートさせると、フラットに気兼ねなくお互いのクリエイションや活動について話せるじゃないですか。参加してくれた人のストーリーや、何でその活動や制作を始めたのか、という話を聞くのが好きなので、ボク自身学ぶ部分も多かったです。共通していると思ったのは、やっぱりみんな、自分の本当にやりたいことを明確にして貫き続けていることなのかなって感じましたね。

ー2018年12月1日発売のEYESCREAM VERDY ISSUEでは、発売に合わせてトークショーを兼ねたイベント“WASTED AGAIN Screening EVENT”にも出演していただきました


VERDY:あのイベントも面白かったですね! 抽選制だったので本当に話を聞きたい人が来てくれていたじゃないですか。現場で話す言葉は紙面に載るインタビューとも少し異なってくるので、その辺りの楽しさがあります。そういう機会は状況を見ながら今後増やしていければ、と思っています。こういうトークショーやワークショップには今、様々なやり方があると思うんですが、より自分のルーツであるストリートカルチャーに根差した形で実現できればって。それに、今回の連載企画では比較的、自分と近しいシーンにいる人とお話してきたんですが、今後は全然違うフィールドで活躍している、まったく知らない人と対談で初めて会ってみるとか。そんなことにも興味が出てきています。

本当に必要とされる 意味ある行動をとっていきたい

ーなるほど。せっかくこういうタイミングなのでコロナ禍以降、どんな活動をしていたかも聞かせてください。ーーって言うか……随分とやせちゃってないですか?? 大丈夫ですか?

VERDY:あはは! 大丈夫です。健康的にやせた方です。というのも、ステイホームの関連でずっと自宅で生活することになったわけなので、外食や夜更かしやパーティだったり、海外に行く機会がピタッとなくなったわけじゃないですか。そこで、自分に本当に必要なものって何なのか考えるようになったんです。で、まずはお酒を止めて食生活も見直して、免疫力が落ちないように自宅で運動をしていました。それに自転車を楽しむようになって、体重も自然と落ちていったんです。

ー自転車!

VERDY:そうです。今はチャリがめっちゃ楽しいです。ボクが乗っているのはBROOKLYN MACHINE WORKS(ブルックリンマシンワークス)っていうブランドのもので、世界中にコレクターがいるようなチャリなんですよ。日本ではNIGO®さんが初めて乗ったそうで、HIKARUさん(BOUNTY HUNTER)も乗っていたので、昔からすごく憧れていたんです。それをようやく手に入れて乗っています。そんなにスピードが出るタイプのモデルではないんですけど、これが乗ってみると本当に楽しくて。

ー選んだ車種にもヴェルディさんらしさが出ていますね。では、クリエイターとしては、ここ3ヶ月はどんな活動をしていましたか? メディアへの露出が一気に減ったように見受けられました。

VERDY:そうですね。取材以前にSNSでの発信も一気に減った時期でした。このコロナ禍を受けて、最初の頃は自分の在り方であったり、本当にやりたいことや、自分の生活において何が本当に重要なのかを見つめ直していたんですね。そんな中、アメリカで人種差別問題が勃発してプロテストなどが行われるようになりました。もちろん日本における政治の話や政策もそうなんですけど、今まで自分が気にしてこなかったことが直接的に自分の生活に関係してくるんだってことを肌で感じて色々と考えるようになったんです。特に人種差別の問題に関しては、ボクは海外に知り合いや友人が大勢いるので、現地の具体的な話を聞く機会も多かったんです。最初は何となく眺めるように見ていて、どういう事態なのかわかっていなかったんですけど、実際に自分もアメリカでアジア人差別を受けたように感じたこともありましたし、時間的なゆとりもある状況だったので、歴史のドキュメンタリー映画を観たり、自分なりにそこへの理解を深めていこうと思って調べていたんです。そのように思考が変わっていくにつれて、何か新しい販売物を作ったりコラボを積極的にやろうっていうテンションでは、正直なくなってきていたんです。

ーそんななか、6月下旬には BLM Tシャツの販売もありましたね。

VERDY:はい。そもそも自分のスタイルは自分が思う気持ちや、今考えていることをグラフィックにして届けることですし、それがWasted YouthやGirls Don’t Cryを生み出してきたんです。実際に友達が困っている現状を踏まえて何ができるだろうって、自分の気持ちに真っ直ぐ向き合ったら、それは差別に反対する気持ちをイラストやグラフィックにすることだなって考えに至ったんです。誰かに依頼されたわけでも薦められたわけでもなく、自分の意志で作ろうと思って。ただ、そうやって行動することで色んな意見が出てきましたね。絵を描くだけじゃ何も変わらないって言っている人もいたり。でも、自分は絵を描いて伝えることが使命だと思っているから必要以上に説明したり解説することは避けました。BLM Tシャツだとか、ボクがやっていることに全員が全員、賛同してくれなくて良いと思っているんですよ。良いと思う人がいたり、反対する人がいたり、何か少しでも考えるきっかけを作れているのだとすれば、それでいいと思うんです。そんな考えもあって都知事選のときに“GO VOTE TOKYO”の缶バッチを作ってみようという気持ちになったんです。

ーヴェルディさんが“GO VOTE TOKYO”の缶バッチを作られたのはビックリしました。すごく直接的な行動だな、と。

VERDY:自分の周辺では、これまで話し合わなかったような話題を普通に会話できる空気感になっていて、そこで選挙の話もよくしていたんです。その変化をすごく良いことだと捉えていました。同時に、自分では周りにいる人も含めて大勢が選挙に行っているように感じていたのですが、実際の投票率は下がっていたりとか。そんな風に自分と世間の温度差を痛感させられたんです。今まですごく狭い世界で生きていて物事を見てきたんだということを実感できたから、もっと自分にできることもあるんじゃないかと考えるようになったんです。選挙に限った話じゃないんですけど、本当に必要とされる、意味のある行動をもっととっていこうと思うようになりましたよね。

ー考えが変わり行動が変わってきたんですね。

VERDY:この間、Beastie Boysのドキュメンタリーを観たんですけど、すごく印象的なシーンがあったんです。何かのインタビューのシーンで、彼らがチベット救済やドネーションを行うようになってきたときに『みんなは偽善者だって言うけど、それに対してどう思いますか?』といったことを質問をされたときに、アダム・ヤクウが「ずっとクソ野郎でいるくらいなら、偽善者になった方がいい」って返答するんです。ボクはリアルタイムでBeastie Boysを体験したわけでもないし、そこまで聴き込んでいるわけでもないのでそんなに深く知らないんですけど、その1シーンはみんなに当てはまることだと思って。ボクだって常に正しいことをしてきた人間でもないし、今までも何か大きなことが起きたときに何も発言しなかったこともあるし、沈黙してきた部分もありました。でも、別に誰かに偽善者だって思われてもいいよなって、そのシーンを観て思うようになったんですよ。その結果の行動が別に世界に対して意味があることじゃなくてもいいし、あってもいいし、自分にとって意味があることをやっていきたいと考えていますね。

ー今後、発信する内容が大きく変わってくる可能性を感じました。現時点で進行しているプロジェクトはありますか?

VERDY:来年個展をやろうと考えて、その作品制作に入っています。あとは、きっとみんながビックリするようなプロジェクトも進行中です。これは、自分的にも考えもしなかったことで夢が1つ実現する気がしています。早く詳細を届けたいです。ただ、そうですね。活動の仕方は変わるでしょうね。変わらざるを得ないですから。

ーそうですよね。

VERDY:その変わった先に何をやるべきか、今はそれを考えてしっかりと活動していきたいと考えています。例えば、次世代に今のストリートやカルチャーを伝えていくためのメディアであるとか。それを記録していかないと将来、この時代にどんな人がどんなことをやって、どんなファッションやカルチャーがあったのかが残っていかないじゃないですか。それを手に取れる形で表現したりすることも楽しそうだな、と考えています。繰り返しになりますけど、今の自分だからできることを考えて、人に必要とされるものを作っていきたいと思うんです。

Verdy 対談連載 “Walk your talk.”
第1回目 小林資幸[PHINGERIN]
第2回目 Inagawa Jun
第3回目 谷中敦
第4回 KEI
第5回 Kosuke Kawamura
第6回 BIM
第7回 BUMP OF CHICKEN
第8回 EXILE NAOTO
第9回 Aminé
第10回 Kei Hashimoto

INFORMATION

VERDY

VERDY@verdy

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