インナー・シティー・ブルース シーズン2
長谷川町蔵 著
第九話:冬の散歩道 光が丘公園

illustration_yunico uchiyama

インナー・シティー・ブルース シーズン2
長谷川町蔵 著
第九話:冬の散歩道 光が丘公園

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毎回、東京のある街をテーマに物語が展開する長谷川町蔵の連作短編シリーズ「インナー・シティ・ブルース」。混乱を極める東京の今と過去をつなぎながら、シーズン2には新たな登場人物たちを迎え、さらに壮大なナラティブを紡ぐ……。

【あらすじ】2020年2月のある日、春から公開予定の朝ドラ撮影のため、クルーズ・ミナト(空津湊の芸名)は光が丘公園にいた。撮影後、ドキュメンタリー制作局の担当者が彼を訪ねて来ているという。その人物は、彼のかつての代表作であるスーパー戦隊シリーズの共演者、奥脇奈那(おくわき・なな)だった。彼女は俳優を辞め、今は著名人の家族の歴史を本人に代わって取材する番組『ファミリーツリー』のディレクターになっていた……。いつにも増してカルチャーねた満載の神回、まずはストーリーをお楽しみあれ!

 東京都郊外の練馬区にある光が丘公園は、60万平米という広大な面積を誇る。そのおかげで敷地内から特定の建物が見えないため、テレビや映画のロケ撮影によく使われていた。
 2020年2月のこの日も、早朝からテレビ番組の撮影が行われていた。番組タイトルは、4月から放映開始されるNHK朝の連続テレビ小説『オーエスオーエス』。1970年代を舞台に、天真爛漫な女の子アッコがジャズピアニストに憧れて青森から上京し、やがては日本を代表する個性派シンガーソングライターになるというサクセスストーリーだ。第一部青森編の撮影はすでに終了しており、現在は東京を舞台にした第二部の撮影中である。
 この朝、撮影していたのは第11週「気球にのって」第5話。レコード会社に売り込むためのデモテープの録音を終えたアッコが、スタジオからの帰り道をバンド仲間と歩いていると、青森にいるはずの妹キッコが目の前に現れるシーンだった。
「キッコ、お前なんでそんなとごに?」
「アッコ姉ちゃん、大変なんだよ、父ちゃんと母ちゃんが!」
 朝ドラで何回みたかわからないような短いシーンである。でもキッコ役の十代の女優がセリフを噛んだり、セリフを言えたかと思うと津軽弁を忘れてしまったりと、オーケーテイクがなかなか出ずにいた。
 主演女優の関町桜の後ろで、フェンダージャズベースが入ったケースをかついだままの姿勢を強いられていたクルーズ・ミナトは、イライラした気持ちが表情に出ないように必死だった。
 三十代後半になって彼はようやく悟った。映画やテレビで成功する俳優の絶対条件は、演技の巧さでもなければルックスの良さでもないのだと。もしそれが条件だったらアメリカの演劇学校で学び、アジア系とヨーロッパ系の美点を兼ね備えたルックスを持つ彼はスターになっていたはずだ。でもそうならなかったのは彼が飽きっぽく、精神的に不安定だったからだ。
 そんな彼と関町桜は正反対だった。モデル出身の彼女は決して器用な女優とはいえなかったし、スラッとした体とアンバランスな童顔で同性から支持を集めていたものの、いわゆる美女でもなかった。
 だが桜のメンタルの強さは驚異的なレベルだった。朝のテレビ小説は、シーンを放映時の季節に合わせることが多い。この回のオンエアは6月だったので、彼女の格好も冬の早朝にもかかわらずブラウス一枚だ。つまり、とても寒い。なのに簡単なセリフを満足に言えない妹役の子に嫌な顔ひとつしないどころか、囁き声で「がんばって」と励まし続けている。
「結局こういう子なんだよな、みんなが神輿にかついでくれるのは」
 ミナトは氷のように冷たい風が頬に当たるのを感じながら、心のなかで自嘲気味に呟いた。
「アッコ姉ちゃん、大変なんだよ、父ちゃんと母ちゃんが!」
 ようやくそんなに酷くないレベルのセリフが撮れて、ロケ撮影はお開きになった。
 公園の中央部に広がるけやき広場の片隅に設置されたテントに戻ろうとしたミナトに、後ろから若いADが声をかけてきた。
「クルーズさん、ドキュメンタリー制作局の人が話あるって」
 ミナトが振り向くと、ADの後ろに黒いダウンジャケットを着込んだ小柄な女が立っている。ミナトと同年代だ。ニットキャップを目深に被って黒縁メガネをかけていたので誰なのか識別しにくい状態だったが、ミナトはすぐにわかった。
「ブルー!」
「グリーン、ひさしぶり」
 ブルーといえば僕らの世代には察しがつくだろう。そう、クルーズ・ミナトのデビュー作にして、唯一の代表作であるスーパー戦隊シリーズ『地下鉄戦隊メトロンジャー』で東西ブルーを演じていた奥脇奈那(おくわき・なな)である。
 スーパー戦隊シリーズ史上最大の問題作とされる『メトロンジャー』のメインキャスト中、奈那は唯一の子役あがりだった。オーディションで千代田グリーン役に選ばれたものの、撮影の段取りをなにひとつ知らなかったミナトはその時点でベテラン女優だった彼女によく助けられたものだった。
 奈那は、<ラーメンとカレーと麻雀が生きがいのワセジョ>という東西ブルーを現実の人物のようにリアルに演じきっていた。昨今のサブカル界隈で「『アナ雪』のエルサ以前に青がイメージキャラのアセクシャル女子がいた」と、東西ブルーが再評価されているのも彼女の演技力あってのものだろう。
しかしあまりに上手く演じすぎたことが奈那自身の人生を変えた。幼い女の子のファンから「女の子もブルーになれるんだね」と話しかけられたのをきっかけに、女優としての将来に疑問を抱くようになったのだ。
 このまま芸能界に居続けても東西ブルーのような役は二度と来ない。当てがわれるのは誰かの友達か妻の役ばかりだろう。東西ブルーのファンだった女の子たちがそんな自分を観たらどう感じるだろう?
 意を決した奈那は、『メトロンジャー』を最後に芸能界から退くと、AO入試に合格して本当のワセジョになった。卒業後はNHKに入局して報道スタッフとして世界を飛び回るようになったため、ミナトとは時折メールを交わすだけになっていた。
「まだ上海にいると思ったよ」
「親の体の調子が良くないんでしばらく国内で働きたいって言ったら、ドキュメンタリー制作局に回されちゃって」
「LINEでもFACEBOOKでもいいから報告しろよな」
「ごめん。でもほら、思い出の場所でばったり再会したいと思ったんだよね」
「あっ、そういうことか」
 スーパー戦隊シリーズを製作する東映東京撮影所が近くにある関係で、『メトロンジャー』の多くのシーンは光が丘公園でロケ撮影されていた。ケミカルウォッシュのGジャンを身にまとった奈那とグリーンのポロシャツ姿のミナトは、ここで様々な地底人たちと戦いを繰り広げたものだ。
「ちょっと歩かない? 相談したいことがあるんだよね」
「いいけど」
 ふたりは芝生広場をぐるりと取り囲んだ道を歩き始めた。早朝なので、ふたりのほかは犬を散歩する老人と完全防寒装備のジョガーがときたま通り過ぎるだけだ。
「グリーンは『ファミリーツリー』って番組を知ってるよね?」
「ああ、けっこう観てる。さすがNHK、あのレベルの取材は民放にはとても無理だよな。いつも感心してるよ」
「ありがとう。実はわたし、あの番組の担当ディレクターになったんだよね」
「ブルーすごいな」
「それでさあ、あの番組に出る気ない?」
「えっ、俺が? 知名度的に微妙なんじゃないの?」
「なに言ってんのよ、最近プチ・ブレイク中じゃない」
 ミナトがプチ・ブレイク中なのは事実だった。昨年あたりから、お笑い第七世代の連中がバラエティ番組で『メトロンジャー』の魅力について面白おかしく語った影響で、メインキャスト中ただひとり俳優活動を続けていたミナトにも何度かテレビ出演する機会が与えられた。そこでそこそこウケを取ったのが、今回ハリー星野役に選ばれた決め手のひとつになっていたのだ。
「上から『オーエスオーエス』の番宣のためにレギュラー出演者の誰かで一本作ってくれって頼まれているのよ。でも関町桜ちゃんってまだ23歳じゃない? おばあさんの代まで遡ったって大したエピソードがないのはわかりきっているんだよね」
「ああ、たしかに。あの番組、祖父母の代が戦前に成人していないと、今ひとつドラマティックじゃないもんな」
「かといって両親役のふたりはもう番組に出演済なのよ」
「それで俺なわけ?」
「だってあなたのルーツ、面白いもん。『メトロンジャー』の撮影中に教えてくれたじゃない。グリーンのお母さん、この公園に住んでいたんでしょう?」
『メトロンジャー』のキャストは同年代だったため、待ち時間は5人で延々と無駄話をしたものだった。
「そういえばそんな話をしたっけ。で、それをぼんやり聞いていたレッドが、俺のお袋が元ホームレスだったって勘違いしたんだよな。あれ滅茶苦茶ウケたよな」
「それが記憶に残っていて、グリーンのお母さんについてちょっと調べたのよ。光が丘公園は1973年に日本に返還される前、グラントハイツと呼ばれる米軍の住宅地だった。あなたのお母さん、マリーナ・ナギサ・フィッシャーは米軍の仕事で来日したお爺さんと最初は渋谷のワシントンハイツに住んでいた。でもワシントンハイツが東京オリンピックの選手村として使われることになったからグラントハイツに引っ越してきたのよね」
「2年くらい暮らしたらしいよ。随分あとになって、グラントハイツが元々は成増飛行場って日本軍の施設で、B29に体当たりする特攻機が飛び立っていたことを知って罪深い気持ちになったってさ」
「それをお母さんに教えたのは空津海舟さんでしょう? グリーンの育てのお父さんで第一機械工業の元副会長」
 ミナトは少し驚いた顔をしながら奈那に問いかけた。 
「ちょっとって言うわりによく調べたとは思うんだけどさ、そもそも『ファミリーツリー』って秘密に取材した結果を本人に知らせて驚かせる番組じゃなかったけ?」
 奈那はミナトを小馬鹿にしたような表情で見た。
「グリーン、キャリアが長いわりにウブだよね。ぜんぶ事前に知らせて許可を取っているに決まっているじゃない。それでも驚いたリアクションが欲しいから、そういう演技ができる俳優ばかり出演しているのよ」
「なるほどね」
「実際は許可が出なくて取材結果をオンエア出来ない回も多いのよ。日本人なんて戦前まで遡ったら非嫡出子のオンパレードじゃない。階級制度の問題もあるし。だからオンエアされるのは先祖が武士か豪農で母方が正妻のひとばかり。グリーンが取材を許可してくれたらそれをちょっとは壊せるんだけどな」
「たしかに俺のオヤジの先祖なんてロクデナシばかりだろうけど」
「実のお父さんね。ピート・クルーズ少尉。アラバマ出身で海兵隊のヘリコプター操縦士だったけど、あなたが生まれた年にニカラグアで墜落死している。彼のルーツはスコットランドに住んでいたアイルランド系みたいね」
「それ、もうちょっと調べてよ。あの一族、ちょっと遡ったらKKKのメンバーがいるにちがいないと俺は睨んでいるんだよね」
 ミナトは2年前にそれまで疎遠だった従兄弟の家に招かれたものの、空港で出迎えた彼がMAGA帽を被っているのを見てそのまま帰ってきた苦い記憶を思い出していた。
「お母さん側のルーツだけで1時間は持たせられると思っているんだけどね。あなたの母方のお爺さん、ベンジャミン・フィッシャーはオーストリアに先祖を持つユダヤ系アメリカ人。ベンジャミンは日系排斥が叫ばれるサンフランシスコで、モダンダンスの勉強で留学していた江原波子と恋に落ちた。番組的には絶対盛り上がるドラマチックなパートだけど、グリーンから事前に許可を取らなきゃと思ったのも、ここなのよ」
「ああ、それか」
 奈那は声のトーンを落とした。
「そう。波子さんは当時の大日本帝国で生まれ育ったけど、血統的にいうと今でいう韓国人だった。だから日系ハーフ俳優とされているクルーズ・ミナトには日本人の血は入ってない。これは明るみにしていいのかな?」
 ミナトは少し黙り込んだあと答えた。
「構わないけど」
「それでもグリーンのアイデンティティは日本にあるんだよね? わたしはそういう人が実は日本にはたくさんいる、国籍や血筋で人が決まるわけじゃないってことを知らしめたいんだよね」
「なるほどね。いい企画なんじゃないの」
「グリーンは自分のルーツをいつ知ったの?」
「満(みちる)って死んじゃった姉さんがいてさ。その人と血がつながっていないのは物心ついたときから本能的にわかっていた。空津海舟の実の息子じゃないことをはっきり知ったのは小学四年生の頃かな」
「早いんだね。波子さんのルーツについては?」
「それが高二まで知らなかったんだ。爺ちゃんの葬式がハワイであって。父さんは仕事とぶつかって行けなくなって、俺だけがお袋について行ったんだけど、そこにアメリカ本土から婆ちゃんの遠い親戚だって人がわざわざ来てくれてたんだ。でも日系には見えなくてさ。話をよく聞いたら韓国系だった。お袋もそれまでそのことを知らなくてさ。俺以上にショックを受けていたよ」
 その事実こそが、マリーナ・ナギサ・フィッシャーと空津海舟の関係に終止符を打った。2002年6月、火事で消失した千駄ヶ谷の空津邸は再建中で、ロサンゼルスに留学していたミナトを除く空津家の面々は、原宿駅前のヴィンテージ・マンション、コープオリンピアに仮住まいしていた。
 ただでさえ皆がピリピリしていたときに、日韓ワールドカップのニュースをテレビで観た海舟が、韓国戦を巡る審判の疑惑について悪様に言った。本人はちょっとした不満のつもりだったが、渚は自分の存在を否定する言葉と受け取った。そしてその夜、荷物をまとめてホテルニューオータニに移り住むと、秋に離婚したのだった。
 一見、完璧に思える関係もたった一言で崩れ去る。ミナトの女性関係が長続きしないのはこの事件に起因していた。
「じゃあいいんだね。本格的な取材を進めちゃって」
「ブルーの出世の手助けになるのなら喜んで。それはともかくさ、せっかく日本に帰ってきたんだから、レッドとオレンジとパープルも呼んでみんなで飲もうぜ」
「いいね。また連絡する」
 奥脇奈那は『メトロンジャー』で東西ブルーが千代田グリーンによくそうしていたように、ミナトの肩をグーパンチでバシバシ叩くと駐車場にむかって歩き去っていった。その姿が見えなくなると、ミナトは冬空を仰ぎながら、ひとりごとを言った。
「番組がオンエアされるまでにあいつの記憶が戻るといいんだけど」
 ミナトがテントに戻ってくると、他の出演者たちは寒さから逃れるためにすでにロケバスに移動済で、待ってくれていたのは先ほどの若いADと、キッコ役の女の子だけだった。ミナトがイライラしていたことを感づいた関口桜が、謝っておけと口添えしたにちがいないと、ミナトは思った。
「さっきは本当にすみませんでした」
「ああ、いいから、いいから。気にしないで。えーと、ごめん。名前なんだっけ?」
「赤城凛です」
 天神プロモーションが2年前に大々的に売り出したものの、今ひとつブレイクしきれていない子だ。ミナトは顔以上に売り出し時のキャッチフレーズを覚えていた。
「ああ、『神武以来のセンセーション』の!」
「覚えてくれてました? 嬉しい。わたしもYouTubeで『メトロンジャー』見ました! 主題歌のあの部分、最高ですよね。『見かけは派手だが身持ちは堅い〜/それが証拠に誰とも乗り入れていない〜』」
「そこ、銀座オレンジを歌った部分で、俺じゃないから!」
 凛はケラケラと声をあげて笑ったが、これはミナトがテレビ番組でお笑い第七世代の連中と共演した際にひときわウケたやりとりの再現だった。彼女はこの言葉を直に聞きたくて全く同じフリを入れたのだ。やれやれ、若い共演者と親睦を深めるためにしばらくこれをやり続けることになるのだなとミナトは観念した。
「クルーズさん、バラエティで人気じゃないですかー。わたしも本当はそっちに行きたいんですけど、事務所からは女優としてまず結果出せって怒られちゃって」
「女優の方がいいと思うけどな。最近の朝ドラって、主人公の妹役で結果を残すと何年後かに主役に昇格するパターンが多いし、凛ちゃんもそのコースに乗ったんじゃないの?」
 赤城凛は少し不満そうに答えた。
「でもわたし、アッコ役の最終選考まで残ってたんですよ。アッコ役は無理でも三人娘のどれかにひっかかると思ったんだけどなー」
 三人娘とは、上京したアッコの友人となる上昇志向の強いユミ、おっとりしたタエコ、一人称がボクのミナコの三人のことである。全員がピアノ弾き語りのシンガーソングライターで、彼女たちが競うように生み出す名曲の数々が『オーエスオーエス』の売りになるはずだった。
「やっぱりピアノが付け焼き刃だったのがダメだったみたい。クルーズさんはベースが上手ですよね」
「昔ちょっと弾いていたからね。オンエアではハマオカモトさんが弾く音に差し替えられちゃうみたいだけど」
 母校の金星学園で演劇部員として活躍する傍ら、「フォーク村」と呼ばれる軽音楽部でベースを弾いていた経験も、ミナトがハリー星野役を勝ち取った決め手のひとつだった。
「桜ちゃんみたいに歌いたかったなー。わたし、事務所に入る前は歌っていたんですよー」
 そう言いながら、赤城凛はダウンベストのポケットからスマホを取り出すと何回かタッピングを繰り返し、ミナトに動画を見せた。
 その動画は天井が低く、小汚いライブハウスで収録されたものだった。狭いステージを十人以上の少女が埋め尽くし、高音がやたらと強調されたサウンドの上で必死に歌い踊っている。丈が異様に短い皺だらけのドレスと不揃いなコレオグラフィー。そして野太い声で熱い声援を送るファンの姿から、彼女たちが地下アイドルグループであることが、このジャンルに疎いミナトにもわかった。
「アイドルグループにいたんだ。凛ちゃんはどこ?」
「2列目の左から2番目です」
「あ……」
「えっ、なんですか?」
 ミナトは赤城凛の右側で歌い踊る、癖っ毛で太眉の女の子を凝視していた。
「この子ですか? 堺マリーナちゃん。かわいいでしょ。神対応で有名だったんですよー。突然いなくなって連絡つかなくなっちゃったんですけどね」
 赤城凛が親切心で答えたのに、ミナトは動画を見つめたままだった。凛はおどけた口調で彼を冷やかした。
「もしかしてガチ恋しちゃいました? だめですよー、マリーナちゃん、たしかまだ22歳だし」
 ミナトは重い口を開いた。
「こいつ32歳だよ。俺の義理の姪」


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『インナー・シティ・ブルース』発売記念・長谷川町蔵1万字インタビュー:後編

PROFILE

長谷川町蔵

文筆業。最新刊は大和田俊之氏との共著『文化系のためのヒップホップ入門3』。ほかに『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』、『あたしたちの未来はきっと』など。

https://machizo3000.blogspot.jp/
Twitter : @machizo3000

『インナー・シティ・ブルース』
Inner City Blues : The Kakoima Sisters

2019年3月28日(木)発売
本体 1,600+税

著者:長谷川町蔵
体裁:四六判 224 ページ 並製
ISBN: 978-4-909087-39-3
発行:スペースシャワーネットワーク


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