MUSIC 2023.01.27

Amazon Original HEAT Vol.14 連載HEATという音楽現象を追う:LEO×鋭児

EYESCREAM編集部
EYESCREAM編集部
Photograph_Masashi Ura, Edit&Text_Ryo Tajima[DMRT]

『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクトだ。
本連載では、キュレーターと選出されたアーティストとの対談を行い、HEATがどのような内容なのか、まだキュレーターがどのような思いでアーティストを選び、アーティストはそれにどう応じるのかをお届けする。
14組目は、1月25日に1stアルバム『MUSIC WORLD』をリリースしたALIのフロントマンLEOが、シーンの中で大いに話題を集めているバンド鋭児をキュレーションする。
鋭児からは御厨響一(Vo)、藤田聖史(Key)、市原太郎(Dr)の3人が参加した。HEATでリリースした楽曲を巡って語られたのは非常にストリートでリアリティのある伏字にしなくては語れないお話でございました。
 

Artist_藤田聖史(Key)、市原太郎(Dr)、御厨響一(Vo) (鋭児)、Curator_LEO(ALI)

鋭児はレベルミュージックの遺伝子を汲んでいる

 
御厨響一(以下、響一):最初にLEOさんに会ったのは下北沢でしたよね。PIANO STUDIO NOAHの入口付近でLEOさんが佇んでいて。タバコをふかしながら。
 
LEO:本当はタバコ吸っちゃいけないところなんだけどね。10年くらい使ってきたから黙認されてて。
 
響一:その立ち姿が超カッコよくて。周りに誰もいなくてLEOさんだけなんですよ。それで「すいません、あの……ALIのLEOさんですか?」ってオドオドしながら話しかけて。
 
LEO:そんなんじゃなかったよ。「さーせん、ALIのLEOさんっすよね~」くらいの勢い溢れる感じで来てたよ。
 
藤田聖史(以下、聖史):輩じゃん(笑)
 
LEO:マジで輩だよ。
 
響一:すいませんでした!(汗)。
 
LEO:いや、最高だったよ(笑)。そのときに「鋭いに児童の児で鋭児ってバンドやってます」って言われてさ。絶対にチェックするよって話したよね。
 

ー響一さんはもともとALIを知っていたからLEOさんに話しかけたんですよね?

 
響一:そうです! アニメ『BEASTARS』を当時の彼女と観てたんですよ。
 
LEO:ああ、「Wild Side※」ね。

※ALIが担当したアニメ『BEASTARS』の主題歌

 
響一:はい。それでALIの音楽をディグるようになってLEOさんのことを知ったんですけど、MVを観て『これはヤバい人が出てきたな……』って。例えが難しいんですけど、存在としてジャミロクワイのジェイ・ケイ的な衝撃があったというか。人の生き様は顔や仕草、行動に出ると思うんですけど、きっとLEOさんはオレが辿ってきた人生の何倍も深いものを送ってきたと勝手に思ったんです。優しさと器のデカさが人柄に表れているし、オレとしてはそこが音楽よりも大事なんじゃないかなって思うんで。
 
聖史:オレも『BEASTARS』くらいにALIを知ったんですよ。「Wild Side」がリリースされる直前頃でした。
 
LEO:そうなんだね。その頃は、まだ鋭児はやっていなかった?
 
聖史:バンドを組んですぐくらいでしたね。
 
LEO:ストリートでメンバーとも出会ったって話があるけど、それは誰なの?
 
聖史:ベースの寛人(菅原寛人)ですね。ちなみに、響一を連れてきたのは寛人なんですよ。ヤバいボーカルを見つけたって言って。実際に会ったらとんでもないヤツで、鋭児って名前をつけてくれたのが響一なんです。
 
響一:オレのおじいちゃんの名前がエイジなんで、そこから拝借したんです。
 
LEO:めちゃくちゃいいね。で、当て字を漢字で考えたってこと?
 
響一:いえ、そのまま鋭児なんですよ。
 
LEO:マジで?(笑)。じゃあ、鋭いに児童の児のおじいちゃんの孫=響一ってこと? カッコ良すぎるでしょ!
 

ーここでLEOさんに質問なんですが、HEATで鋭児をピックアップした理由を教えてもらえますか?

 
LEO:聴いてみたら、めちゃくちゃカッコよかったっていうのが1番ですね。それに鋭児の成り立ちにも親近感が持てたので。今時、街で出会ってドラマが生まれるなんてことないじゃないですか。ネットから出てきたり、ライブハウスに行かずしてデビューして、いきなりお客さんがある程度いる状態で活動をスタートさせるソロアーティストも多い中、彼らは街で出会って遊んでいく中で、一緒に音楽をやって。街のはぐれもの、生きづらいヤツらが集まって音楽をやるのって、オレからすると健全なバンドの組み方だと感じるし、そんな成り立ちを持っているバンドはちゃんとそういう音を鳴らしている気がするんです。鋭児は、音楽的に考えると色んなジャンルで遊んでいるように思えますけど、マインド的にはロックンロールというかパンクというか、しっかりとレベルミュージックの遺伝子を汲んでいるんじゃないかと思うし、その最後なんじゃないかな、と。オレらで最後かと思っていたら、ちゃんと下の世代で同じような精神性を持つヤツらが出てきたんで最高ですよ。不良だけどインテリジェンスがあるし、健全な心を持っていて色気がある。それに、オレが出来なかった音楽を自由に色々とやっているからいいなって。色んなジャンルの音楽を曲ごとに好きにやっていると思う。そこには羨ましさも感じますね。
 
響一:もう、本当に恐縮です。
 

バンドに迷惑をかけた2022年を経て

 
市原太郎(以下、太郎):鋭児は全員それぞれ曲を作っていて、各々デモを持ってくるんですよね。そこで作り込むこともできるし、スタジオでジャムりながら作っちゃうこともあるし。そこが、僕らの武器の1つかなと。だから、曲ごとに表情が変わるんだと思います。
 
LEO:それはすごいよね。メンバーで色々なジャンルを作れるから飽きないんだね。
 
聖史:そうですね。ただ、僕らとしてはマインド的にはロックっていうのが自分の中にあって、そういうバンドにしたいんです。
 
響一:お前、めっちゃロックだよね。……去年はめっちゃ迷惑かけたんですよ、鋭児に。
 
LEO:なんで?
 
響一:あのぅ……女性問題でトラブルを起こしちゃって……。
 
一同:爆。


 

ー急な話題きましたね。

 
LEO:あっはっは!(笑)。いいんだよ、いいんだよ。そうじゃないと。鋭児って何歳だったっけ?
 
響一:オレが28歳で他のメンバーも25~29っすね。
 
LEO:あー、それは今が1番危ない年齢だからしょうがないよ。メンバーはもう4~6年くらい耐えて。34歳とかまで落ち着かないから絶対。捕まらないようにしておけば全然いいんだよ。
 

ー深みが違いますね。

 
LEO:ちなみに、どんぐらいやらかしたの?
 
響一:○○○○っていう×××に△△ちゃんっていう子がいるんですけど。すごい可愛くて、会って話してたら話も合って。「大好きです~!」なんて言われちゃって。
 
LEO:で、セッションしていいっすか? って。
 
響一:そっす、おすおす的な感じで。そういう出会いがあって、何なら友達の家でやらかしちゃって。
 

ーたっはー!

 
聖史:で、相手が相手で、状況が状況だったもんで、オレのところに関係する人物から電話があったんですよ。それまでメンバー的には、そこまで大事だと思っていなくて。「響一、やってんな~(笑)」ぐらいのノリだったんです。そんなもんで、どういうテンションで応じたらいいのかわかなくなっちゃって。
 
LEO:うわ~。
 
聖史:それで、色々と大変なことになりかねない状況に発展しそうだったんで、とりあえず響一にしっかり謝れって。
 
LEO:それで謝ったの?
 
響一:めちゃくちゃ謝りました。それで手打ちにしてもらいました。
 
LEO:まだ、かわいいもんですよね?
 

ーええ、全然ですね。


LEO:そういうのって絶対に大事だと思うし、むしろ早めにやっておかないと。オレも今までに色々あったよ。写真を週刊誌に売るとか言われたこともあるし、もっとひどいことになった経験がたくさんあるから大丈夫だって。響一、もっとメンバーに迷惑かけられるよ。っていうか、絶対にそうなるよ、今後。
 
響一:やめて……(頭を抱え込む)。
 
LEO:で、メンバー同士で助け合えばいいんだよ。その後で響一が仕事を取ってくればいいじゃん。
 
聖史:そういうこともあったんですけど、響一は真剣に悩んで考えるし、めっちゃカッコいいヤツなんですよね。だから突っ切ってほしいっていうか。
 
LEO:だよね。ちゃんと責任取って対処してるんだからえらいよ。もっといけるよ。
 
響一:ありがとうございます。じゃあ、今晩20:00にいいですか? 女の子と会う予定があるので。
 
LEO:OK、広尾でよろしく。っていうか何の話をしなくちゃいけないんだっけ?
 

HEATは自分らの世代を幅広くフックアップしていると感じた

 

ーじゃあHEATの話をしますか。LEOさんのキュレーションで鋭児が参加となったわけですが、メンバーはプロジェクトに対してどう思いましたか?

 
太郎:HEATサイドからレコーディングとMV制作に関する予算を出していただいたのはすごいと思いましたね。お陰でしっかりとした音作りができたのが、ありがたかったです。青葉台スタジオで1日がかりで録音しました。他の参加アーティストを見るとバンドサウンドというよりもトラックが多いように感じたので、鋭児がどんな風に見られるかも気になる部分でした。
 
聖史:その一方で、ego apartmentやFrog 3だとか自分たちと同世代のアーティストをフックアップしているようにも感じられましたし、HEATに参加することで初めて知った人もいるのですごく面白みがある企画だと感じました。アーティストが表現している音楽の幅も広く、色々なジャンルを網羅していて自由な雰囲気を感じましたね。
 
響一:ちなみに、LEOさんは曲を作るときにキャッチーさやポップスであることって意識しますか?
 
LEO:けっこう考えているつもりなんだけどアウトプットが全然ポップになっていないというか。オレが一生懸命キャッチーにしようと考えても、世の中的にはどうなのかわからないんだよね。そこでいくと、鋭児って曲の振り幅が激しいけど、どうやって制作しているの?
 
聖史:最初のデモを誰が持ってくるかで変わるんですよね。エレクトロの要素が強いものは僕が持っていってます。ロックバンドとしての曲はギターの及川千春か響一が多いですね。そんな風にして広がりが出ているんだと思います。$uper$onicはベースの寛人のリフがきっかけです。


 
LEO:なるほど、今の雑多だけどバランスが取れている状態が超カッコいいと思うよ。今はインディーズで活動していると思うけど、今後色んな人がバンドに近づいてくると思う。そのときに、今と変わらず自分たちがやりたいことやカッコいいと思うことを貫いて行動していってほしいと思うな。その中で、今回のHEATの他ラインナップで、同世代のバンドやアーティストがいたっていうのは良い兆候だと思う。
 
鋭児:ありがとうございます!
 

スタイルや生き様が投影された鋭児のMV

 

ー今回のHEATでの楽曲を聴いて、どう思われましたか?

 
LEO:本当に良かった! MVの映像は北海道ツアー?
 
太郎:そうです! 単発で行ったときに自分らでカメラを回してロードムービー的に。
 
LEO:HEATからの予算ってレックとMV制作込みだよね? いいんですよ、少額でMV制作とレックを済ませて、あとは山分けしちゃって。
 
響一:はい、実はやっちゃって……ます!
 
太郎:実際に、今回は初めて自分たちでMV編集までやっちゃってます。
 
聖史:言うなよ! マジで!
 
LEO:あっはっは!(笑)。そういうのでいいんだよ。そこがカッコいいよ。今まで鋭児のビデオは世界観押しの映像が多い中で、急なアナログ感があって脱力感があるMVに仕上がってて良かった。ストロークスみたいじゃん。まぁ、彼らはああいうチープ感ある映像にめっちゃ予算を投じているけど。
 
響一:みんなで予算を余らせて等分したんですけど、この間、同じくHEATに参加しているMiku The Dude(御厨響一の従兄弟)と話してたら、MV制作に予算の8割ベッドしたって言ってて、『ああ、やっちゃったかもなぁ』って。
 
LEO:いやいや、全然正しいよ、悩むことも大事なことだけどね。だから、ちゃんとこの記事に書いておこう。「みんなで予算割って使い込んだんで金ないです」って。
 
一同:笑。


 
LEO:でも、本当にいいんじゃないかな。映像にも生き様が出てると思うよ。そこがカッコいいと思う。
 

ー楽曲はミドルテンポで意外な曲調ですが、あれもまた鋭児っぽさがありカッコいいと思いました。歌詞もツアーにちなんで旅をモチーフにしていたりするんですか?

 
響一:いや? あれはマジで△△ちゃんのことを歌っているんで、色恋ですね。
 

ーそれで冒頭に△△ちゃんの話があったんですね。最初に言ってくださいよ。では、この楽曲はラヴソングですね。

 
LEO:ま、基本的に全部ラヴソングでしょ? 響一の根底にあるものって。ジョン・レノンみたいなものでしょ。
 
響一:恐れ多いですが、そうありたいです。
 
聖史:ちなみにトラックは自分が持ってきました。11月くらいに鋭児に合う曲ができて、その日が、たまたまメンバーと会う日でビートを響一に聴かせたら「今から録ろうよ」ってなって。そのままうちに来てボーカルを録って、メロディはそのときに出来たものを使っています。後日、ドラムを含めてスタジオでまとめて録り直しました。なんだかんだでMVを含めて、納期ぎりぎりになっちゃったんですよ。
 
LEO:始まり方がカッコいいよね。「ビート、聴いてよ」って。それで「歌を入れにいこうぜ」なんてドキドキするよ。
 
響一:いやぁ……LEOさんがカッコいいです。熱いです。
 
一同:笑。
 
響一:なんだか、忘れてたものが蘇ってきます(笑)。
 
LEO:オレも響一と話してて思い出してきたよ(笑)。
 

ーそれにしても、響一さんはバンドに迷惑をかけたってことで悩んでいましたけど、△△ちゃんのことも曲になったわけで、クリエイティブに昇華されたので良かったと思うんですよね。

 
LEO:ね、それぐらいやらないとネタもなくなってくるよ。毎年アルバムを作ろうなんてことになったら、傷だらけにならないいけないから。この件で『△△ちゃんep1~3』って3曲くらい作れちゃうんじゃない?
 
響一:ああ……△△ちゃん!
 
聖史:EP作れちゃいますね。でも、それで1度、1曲封印された曲があるんですよ。「Lisa」っていう比較的サブスクでも回っている人気曲なんですけど。
 
LEO:え、あれって付き合ってた女の名前なの!?
 
聖史:そうなんです。響一の意向でライブでは封印されてたときもありました。「……ちょっとあれはもうできない」って。
 
一同:
 
LEO:めっちゃいいね! 正しいよ! 超健全、美しいです。
 

ー最後に、今後一緒にやってみたいことはありますか?

 
LEO:ALIの曲のリミックスをやってほしいですね。勝手にやっていいよ、好きなようにしていいからって言って渡して。分ぐらいの曲を8分ぐらいのテクノ・ハウスミックスとかにしてもらって。
 
響一:それ、めちゃくちゃやりたいです! 鋭児はメンバー5人トラック作れるんで、全員でも1曲をリミックスするのもやりたいし、メンバー各々でのリミックスもやりたい!
 
聖史:やらせてもらえるなら、めっちゃカッコよくします!
 
LEO:じゃあ、今年中にお願いするよ!

INFORMATION

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鋭児
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