インナー・シティー・ブルース シーズン3
長谷川町蔵 著
第七話:サムシン・エルス 中編(都営三田線)

illustration_yuriko oyama

インナー・シティー・ブルース シーズン3
長谷川町蔵 著
第七話:サムシン・エルス 中編(都営三田線)

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毎回、東京のある街をテーマに物語が展開する長谷川町蔵の人気シリーズ「インナー・シティ・ブルース」のシーズン3がスタート。新たな幕開けは、銀座を本拠地に繰り広げられる探偵物語? ディストピア感が増す東京を舞台に繰り広げられる、変種のハードボイルド小説をご堪能ください!

【あらすじ】主人公・町尾回郎(まちお・まわろう)はアラサーのフリーター。銀座の外れにあるバー「アルゴンキン」での過去のツケ返済のため、自分と同じ立場の奴らからツケを回収する仕事を引き受けている。今回の標的は、常連から一目置かれていたジャズ・コクレターの向原功。向原は既に亡くなっていたので、回郎は彼の妻、節子を訪ねる。節子は彼が生きていた頃のレコード・コレクションの昔話をしながら、支払いに応じた。しかし節子はその金を用意している間に突然発作で倒れ、回郎は救急車で同行するはめに……!

 気がつくと、俺は窓のない部屋にいた。そうか、緊急救命室の前室で待たされているうちに寝落ちしたんだ。
 腰掛けていた椅子をじっと見てみる。素材はポリカーボネイト、色はモスグリーン。室内を見回す。壁はオフホワイトに、扉は彩度を落としたパステルカラーに塗られていて、床には防滑加工が施されたリノリウムが貼られている。機能的で清潔。でも病院特有のうっすらと漂う薬品や血や尿の匂いが、何だか落ち着かない気分にさせる。
 向原節子が担ぎ込まれたのは、都立広尾病院だった。板橋区の高島平からわざわざ渋谷区の高級住宅街まで連れて来られたのには訳がある。
 
 3時間ほど前、向原節子と俺を乗せた救急車は、サイレンを鳴らしながら高島平団地のエントランス前から出発した。しかし俺はまっすぐ目的地に向かっているわけではないことに気がついた。窓から同じ景色が何度も見えたからだ。救急車は高島平の周りをぐるぐる走っていただけだった。
 救命士が話しかけてくる。
「おばあさんが通院されている病院を知っていますか?」
「一番近くの病院でいいんじゃないですか?」
「高島平中央病院も板橋中央病院も患者の受け入れができないそうなんです」
 行き先が決まらないから、同じところを走っていたのか。
「なぜですか?」
 救命士は一瞬「こいつ何もわかっていないな」という表情をしたが、丁寧な口調で説明してくれた。
「コロナの入院患者さんで、ベッドがぜんぶ塞がっているんです。東京中の病院が今そんな状態なんですよ。でもおばあさんが通院されている病院だったら、受け入れてくれるかもしれません。それで伺ってみたんです」
 このまま走り回っているわけにはいかない。俺は揺れる救急車の中で、なんとかリュックの中に放り込んだ向原節子の手帳を探しだし、手帳の後ろにアドレス帳が挟まれているのを確認した。1ページ目には、彼女自身の名前と住所、電話番号が書かれていて、その後ろのページからは親戚や友人らしき人の名前が続いていた。行政機関やショップの名前が書いてあるのは7ページ目からで、その中に「都立広尾病院」という文字を見つけた。
「都立広尾病院に通院していたかもしれません」
 俺がそう告げると、救命士がスマホで電話する。少しの間話すと、彼は通話を切った。
「都立広尾病院が受け入れると言ってくれました。おばあさんは脳出血後、定期検診に通われていたようです」
 救急車は、川越街道を走って池袋、早稲田、市ヶ谷、四谷を経て、外苑西通りへと入ると、青山、六本木、麻布と駆け抜けて都立広尾病院に到着した。所要時間は30分強。赤信号の束縛さえなければ、東京は意外と小さな街なのだ。
 向原節子を乗せたストレッチャーが緊急救命室の扉の中に消えていくと、俺は応急処置が済むまで前室で待つことになった。そして緊張から解放されたこともあって、つい居眠りしてしまったというわけだ。

 腕時計を確認すると、診察が始まってから1時間ほどが経過していた。ヒマ潰しに、向原節子のアドレス帳を再びリュックから取り出して、彼女の自宅の電話番号を見直してみる。下4桁は「1592」。今は亡き向原功が「ラッキーナンバー」と愛し、あらゆる暗証番号に用いていた数字だ。でも特別な意味を持つ並びには見えない。
 待てよ、向原功はジャズマニアだ。もしかするとナットさんが東北新幹線乗車中に俺に対して行った、ジャズについてのレクチャーの中にヒントがあるかもしれない。
 スマホでグーグルドライブのアプリを立ち上げる。俺は旅行代理店を退社する時に、仕事のメモはすべてスキャンしてクラウドに保管していた。入社二年目にあたる「2016年」と書かれたフォルダから、東北出張した日付のPDFを探し出す。車中で書いたために、文字が汚くて読み辛かったけど、諦めずに内容を確認していった」。そして遂に「1592」という数字が殴り書きされていたのを見つけだした。前後には「Bluenote」「New Jersey」「1553」といった文字も書かれている。でもその意味がわからない。
 あのときナットさんは俺に何を話していたんだろう。会話を思い出そうとしたその瞬間、天井に備え付けられたスピーカーから音声が響き渡った。
「町尾回郎さん、緊急救命室の中にお入りください」
 備え付けのアルコールスプレーで手を消毒して、スライド扉を開けて室内へと足を踏み入れる。看護師の指示で水色のビニールカーテンで仕切られた空間に入ると、医療機器に繋がれた向原節子がベッドで眠っていた。後ろから聴診器を首から下げた男が入ってくる。彼は自分が担当医だと自己紹介したあと、症状を説明してくれた。
「症候性てんかんですね」
「てんかん?」
「過去に起こした脳出血の後遺症によるものです。命に別状はありませんが、5日ほど入院して体にどの薬が合うかを試してみる必要があります。有効性が認められれば退院できるでしょう」
 ほっとしていると、先ほどの看護師から厚いファイルを渡された。病院の入院書類だ。
「こちらにご記入ください」
 文章を読んで途方に暮れた。よく「遠くの親戚より近くの他人」と言うけれど、入院の保証人になったり、緊急手術を許可することは親戚でない限り出来ないらしい。彼女を入院させないと。
「実は向原節子さんと私は血が繋がっていないんです。親戚の方に連絡しますので、ちょっと待っていただけますか」
 看護師にそう説明してから緊急救命室を出ると、向原節子のアドレス帳を見返した。2ページ目に「氷川久美子」という名が書かれている。住まいは港区白金台3丁目。ここからすぐそばだ。向原節子が話していた「レコード・コレクションを処分した娘」にちがいない。おそらく向原節子は娘の家を訪問中に最初の脳出血を起こしたのだ。そのため最寄りの広尾病院に担ぎ込まれ、高島平から定期健診に通うことになったのだろう。
 スマホを取り出して、ふたつ書かれた氷川久美子の電話番号のうち、固定電話の方にかけてみる。留守電だ。次に携帯の方にかけてみたけど、何回かけても出てくれない。知らない番号からの電話には出ない主義なのかもしれない。そうなると、ショートメールを送っても見てもらえる保証がない。
仕方なく全く別の番号に電話してみた。
「マワロー、こんな時間に何? 今から寝ようとしていたところなんだけど」
 囲間楽(かこいま・らく)のほろ酔い加減の声が聞こえる。相変わらず彼女は昼夜逆転の生活を送っているようだった。俺はこれまでに起きた事柄を説明した。
「そんなわけで、これから白金台3丁目のマンションに行って、氷川久美子が帰ってくるのを待とうと思います」
「マワローさー、探偵気取りで張り込むのはいいけど、その久美子って人が夜まで帰って来なかったらどうするわけ? それにマンションに帰ってくる女の人全員に『あなた氷川久美子さんですか』って声がけするつもり? 二人目か三人目あたりで警察を呼ばれると思うんだけど」
 的確な指摘にぐうの音も出ない。楽さんは酔っ払っていても俺なんかより数段頭が切れる。黙りこんでいると、憐れんだのか彼女は助け舟を出してくれた。
「執事に何か出来ないか聞いてみるから、ちょっと待ってて」
 電話が切れて10分もしないうちに、スマホにメールが送られてきた。
「氷川久美子、いまちょうどシェラトン都ホテル東京のラウンジで友達とランチを食べはじめたところだってさ」
 添付ファイルを開くと、フェイスブックをキャプチャーした画像が添付されていた。ハッキングをしない限り、こんな画像は入手できない。囲間家の執事、恐るべし。俺は楽さんに返信メールで感謝を述べるとともに、追加のお願いをした。
「亡くなった向原功さんは『1500と4000がオリジナルで揃っているのは世界でウチだけ』って言っていたそうなんですけど、何のことかわかります?」
 メールを送信すると、病院の建物から外に出て、車寄せへと向かった。ところが10分以上待ってもタクシーが来ない。シェラトン都ホテルの住所をスマホでチェックする。ここから早歩きすれば15分くらいで着くはずだ。
 俺はリュックを背負うと歩きはじめた。慶應幼稚舎を左手に見ながら外苑西通りを南下して、恵比寿三丁目の交差点を左折して明治通りへと入る。この一帯は高い建物が少なく、布団屋や畳屋といった個人商店が昭和の姿そのままで並んでいる。
 こうした街並みについて、白金住民は「見ての通りですよ。セレブ地帯とか皆さん言うけれど、交通の便も良くないし、田舎なんです、ハハハ」とか言って自虐ぶる。しかしこうした謙遜に騙されてはいけない。商店街をよくチェックしてみると、小洒落たビストロやカフェが相当数混じっていることに気づくはずだ。非大手チェーンのこだわりの店がコロナ下で営業を続けられるのは、白金住民の多くが美食家だからに他ならない。
 明治通りを歩きながらマップアプリで、シェラトン都ホテルへのルートを確認する。北里大学前の信号を右折して直進して、東京大学医化学研究所附属病院に面した突き当たりを左に進むのが最短のようだ。
 しかし歩きはじめて数分経過すると、このルートを選んだことを後悔していた。アプリは土地の高低差を考慮せず、距離だけで判断することがある。このルートがまさにそのケースだった。北里大学前から脇に入る道は、長く急な坂道になっていたのだ。あらためてマップを確認したら、小さく「蜀江坂(しょっこうざか)」と書き添えられていた。そうか、ここは渋谷区ではなく、もう港区だったんだ。
 港区はその名の通り、東側は東京湾に面したゼロメートル地帯だが、そこに西側から武蔵野台地の先端が突き刺さるように迫っている。このため区内には100以上もの坂があると言われている。アイドル・グループ「坂道シリーズ」の語源となった乃木坂、櫻坂、日向坂もすべて港区に実在する坂だ。
 蜀江坂の左手には年季の入った赤レンガの塀が続いていて、それがいいアクセントになっていた。しばらく歩くと、白く塗られた鉄製の門が見えてくる。門柱には「聖心女子学院」と書かれた看板が掲げられていた。通用口なのだろう。対する右手には戸建が立ち並んでいる。どの家も立派ではあるが、大邸宅というほどではない。相続税が高くて世代が替わるごとに土地が分割されているからかもしれない。
 坂を登りきって、東京大学医化学研究所附属病院の広大な敷地に突き当たると、アプリの指示に従って左に曲がり、なだらかな下り坂を直進していった。都心でありながら、あたりは静まり返っていたが、徐々にその静寂がノイズに包まれていくのを感じた。
 気がつけば、俺は片側二車線の大通りに面して立っていた。目黒通りだ。トラックが慌ただしく行き交う通りの向こう側には、鳥が翼を広げたようなレトロモダンな形をした建物がそびえ立っている。シェラトン都ホテル東京だ。前職の旅行代理店時代には建築オタクをよく案内した場所でもある。911で倒壊したニューヨークのワールドトレードセンターを設計した日系建築家ミノル・ヤマサキが手がけた名建築だからだ。
 エントランスからホテルの中へと足を踏み入れる。正面奥の天井いっぱいの高さのガラスには日本庭園の早春の緑が映り込んでいて、手前の空間には低いテーブルと椅子が何組か並んでいた。ここがラウンジにちがいない。
 客は女性ばかり。全員がダークトーンのワンピースか、無彩色のカシミヤセーターにホワイトデニムといった出立ちだ。いわゆるシロガネーゼってやつだ。一体誰が氷川久美子なのだろう。向原夫妻が80代前半だから、50代だろうと思って、もう一度見渡してみても、全員が同年代に見える。若い女性はコンサバな服装をしているため実年齢より大人に見え、年配の女性は美容や体型維持に努めているため実年齢より若く見えるせいだろう。
 名前を叫ぶほかないと考えたその瞬間、窓際に座っているグループの中に丸顔で垂れ目の女性を見つけた。向原功とどことなく面立ちが似ている。彼女に近づいて話しかけてみよう。
「氷川久美子さんですね」
「はい」
「よかった、やはりそうでしたか。お母様が症候性てんかんで広尾病院に入院することになったので、手続きのためにすぐ行ってあげてくださいませんか」
 氷川久美子は友人たちに中座を詫びると、立ち上がって歩き出した。てっきりエントランスに向かうのかと思ったら、フロントの前で立ち止まる。
「あなた何者なの? オレオレ詐欺じゃないでしょうね?」
「わたし、銀座『アルゴンキン』のマネージャー、町尾回郎と申します」
 俺は名刺を渡すと、ツケの回収で自宅に訪問したときに向原節子の発作に遭遇したため、救急車で同行したと手短に説明したが、氷川久美子は疑いの表情を崩さない。
「本当かどうか、これから病院に電話するから」
 そう言ってスマホで電話をかけ始め、相手と長々と話し始めた。
 話が終わるのを待っていた俺のスマホにメールが着信した。楽さんからだ。読んでみたら、先程の質問への答えが書かれていた。これはなかなかの大事だ。
 氷川久美子は電話を終えると俺の方を振り向いた。
「嘘じゃなかったみたいね」
「信じていただけましたか。それでは病院に行ってあげてください」
「ちょっと待って。父さんのツケって幾らだったの?」
「15万円6200円です」
「えらく高いのね。ボッタクリなんじゃないの? 母さんには払わないように言っとくから」
 それは困る。
「お母様は支払いに同意しましたよ。お父様のジャズのレコード・コレクションの買取り額から払ってくださろうとしていたんです」
「せっかく私がレコード屋さんを手配してあげたのに、こんな詐欺に騙されるなんて!」
 感謝のかけらもないことにイラッとした。よし、楽さんからのメールに書かれた内容について、彼女を問いただしてみるか。
「失礼ですがお尋ねします。お父様のレコード・コレクションにはブルーノートの1500番台と、4000番台が含まれていたようですが」
「ブルーノート?」
 俺はスマホをカンペ代わりに読み上げた。
「ブルーノートとは、アメリカを代表するジャズのレコード・レーベルのことです。1956年に、LPの普及とともにリリースを始めた1500番台と、それに続く4000番台のシリーズはモダンジャズを代表する名アルバム揃いだったと言われています。お父様はそのすべてをオリジナル盤で揃えていたようなんです」
 氷川久美子は思い出したようだった。
「ああ。父さんが母さんに『お前が死ぬまで豪遊しながら暮らせるくらいの価値がある』って自慢していたアレね。わたしも少し期待したんだけどね、当てが外れちゃった」
「どういうことですか?」
「揃っていなかったのよ! 1500番台っていうんだから全部で100枚あるはずでしょう。でも実際は99枚しかなくて、しかもうち1枚は日本盤だったの」
 そうだとしても、おかしい。俺は反論した。
「それでも買取額が安すぎます。氷川さん、もしかして何かご存知じゃないですか?」
「何も知らないわよ!」
「売った先はどこの中古レコード屋さんですか?」
「神保町のミヤモトレコードってところ。父の行きつけだったから、ちゃんとしたところよ」
「いいえ、ちゃんとしていません。氷川さんはそのレコード屋に騙されたんですよ。訴えなきゃダメです!」
「うるさいわね! ……別に犯罪じゃないから、話してあげるわよ」
 俺の陽動作戦に引っかかった氷川久美子が、真相を告白しはじめた。
「父さんの遺産はどうせ母さんと私で折半することになるから、最初からそうしようと思って、領収証を2枚にわけてもらって母さんには買取額の半分を渡したのよ」
「ということは、本当の買取額は32万円ってことですか。それでも安すぎますね」
「わかったわよ、うるさいわね。レコード屋さんを手配した手数料として少し多めに貰ったの。本当の買取額は100万円。別にいいでしょ! 母さんに処分を任せたら、バザーで二束三文で売って終わりだったろうし。あの人はいくらお金があったって溜め込むだけの人なんだから。このことは母さんには絶対言わないでよね」
「……わかりました」
 氷川久美子は「別に犯罪じゃない」とは言うけれど、正しく定義すれば犯罪だ。でも俺の仕事は飲み代のツケの回収。正義の鉄槌を下すなんてガラじゃない。それにいかにも戦中派らしい質素な暮らしをしていた向原節子と比べると、バブル世代の氷川久美子はファッションからして、生活費がかかりそうだ。  それにしても100万円という金額は予想外だった。
 俺たちふたりはホテルの外に出た。氷川久美子はタクシーを拾おうとしたが広尾病院同様、タクシーがなかなか来ない。彼女は間をもたせようとして話しかけてきた。
「どうしてここにいるって分かったのよ? しかも私が誰なのかすぐにわかったの」
 フェイスブックをハッキングしましたとは、とても言えないので、嘘と真実を織り交ぜながら答えた。
「お母様がよくあなたとこのホテルでお茶をするっておっしゃっていたので、一か八かで行ってみたんです。そうしたら仏壇の写真で拝見したお父様と顔立ちがよく似ている人が座っていたから、話しかけてみたんですよ」
 氷川久美子は苦笑いした。
「父さんにそっくりって未だに言われるのよね。この前のお葬式でも言われちゃった。でもあんな変人と似ているなんて、イヤなのよね」
「変人?」
「だって生涯唯一の海外旅行で夢にまで見ていたニューヨークに行ったと思ったらあの人、実際には行っていなかったんだから」
「ニューヨークに行っていない?」
「自由の女神もエンパイアステートビルにも登らずに、川向こうの町をずっとほっつき歩いていたみたい」
 そう言い終えた瞬間、タクシーがやってきた。氷川久美子は俺にむかって軽く会釈するとそれに乗り込んで広尾病院へと走り去っていった。
 タクシーが見えなくなったのを見届けると、俺は楽さんからのメールをもう一度読み直した。
「ブルーノートの1500番台と4000番台がオリジナル盤でぜんぶ揃っていたとしたら、コンディションにもよるけど、少なく見積もっても買取額は2000万円以上だって」
 一見、姑息な悪人に見えた氷川久美子は被害者でもあった。彼女のネコババを手伝うフリをして、2000万円以上の価値があるレコード・コレクションを100万円で手に入れたミヤモトレコードこそが事件の黒幕だったのだ。
 マップアプリをタップする。シェラトン都ホテル東京の最寄駅は、白金高輪駅。そこから都営三田線に乗って、神保町に行ってみるか。俺はそう思い立った。


『インナー・シティ・ブルース』発売記念

『インナー・シティ・ブルース』発売記念・長谷川町蔵1万字インタビュー:前編
『インナー・シティ・ブルース』発売記念・長谷川町蔵1万字インタビュー:後編

PROFILE

長谷川町蔵

文筆業。最新刊は大和田俊之氏との共著『文化系のためのヒップホップ入門3』。ほかに『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』、『あたしたちの未来はきっと』など。

https://machizo3000.blogspot.jp/
Twitter : @machizo3000

『インナー・シティ・ブルース』
Inner City Blues : The Kakoima Sisters

2019年3月28日(木)発売
本体 1,600+税

著者:長谷川町蔵
体裁:四六判 224 ページ 並製
ISBN: 978-4-909087-39-3
発行:スペースシャワーネットワーク


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