『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)。各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクトだ。
本連載では、キュレーターと選出されたアーティストとの対談を行い、HEATがどのような内容なのか、またキュレーターがどのような思いでアーティストを選び、アーティストはそれにどう応じるのかをお届けする。
第19回目は『森、道、市場』のブッキングを担当するjellyfishのokaが気鋭シンガーソングライター・作家のmekakusheをキュレーション。HEATの企画趣旨を聞いたうえで楽曲の内容を考え制作したという「恋する女の子」について、2人はどうHEATに向き合いながらプロジェクトを進めていったのかを聞く。
Curator_oka(jellyfish), Artist_mekakushe
HEATの企画的な面白みも考慮した人選を心がけた
ーまずはキュレーターでもあるokaさんご自身について教えてください。
oka:名古屋でイベント企画などを行なっているjellyfishのクルーです。その一環で『森、道、市場』というマーケットと音楽ステージが同居したイベントの音楽アーティストのブッキングも行っています。jellyfishには、所属してもう13、4年ほどになりますね。mekakusheさんとの面識はまったくなくて、ブッキングの参考にサブスクで色々と聴き漁る中、昨年の春頃に何の予備知識もないままに聴いて一発でファンになったんです。ちょうどその時期にHEATのキュレーターのお話をいただいて、彼女の名前を挙げさせてもらいました。
mekakushe:だから出会ってそこまで時間が経っていないというか。こうしてお話するのも3回目ですよね。私が弾き語りで出演しているイベントにokaさんが遊びに来てくれたんですけど、okaさんはSNSも活発にやっているわけでもないですし、最初は一体どういう方なんだろう? と気になっていました。HEATでお声がけいただいたのも「なんで私なんだろう?」って思ったんですよ。
ーokaさんとしては、ちょうどmekakusheさんを知ったときでタイミングが良かったから誘ったということになりますか?
oka:それもあるんですが、僕がHEATに誘われたのは、多分最後の方である程度キュレーターのラインナップが出揃っている状況だったんですよね。その段階で自分には何が求められているんだろうってことを色々と考えたんです。『森、道、市場』は出来る限りボーダーレスなブッキングを心がけているので、自分だったらHEATにどういうピースをはめればいいのかってところはけっこう考えました。そこでmekakusheさんみたいにポップに突き抜けている音楽性のアーティストが入ったら企画としても広がるし面白いんじゃないかと思って。そういう目線もあったんです。
mekakushe:そういうokaさんのお考えもありましたし、実際にラインナップにはHIPHOPアーティストやトラックメイカーの方々も多かったので自分のような宅録のシンガーソングライターは少しだけ浮いている感じがしました。
今回の企画だからこそストリングスを曲に入れたかった
ーお2人が仰る通り、mekakusheさんの参加によってHEATがよりバラエティ豊かな内容になったと思いますね。お2人にとってHEATはどんなプロジェクトだと思いましたか?
oka:HEATではインディーズで活動しているアーティストに予算を渡して草の根的に音楽シーンをフックアップするというコンセプトがありますけど、何の制約もなく自由に制作していいよって名目で予算を渡すなんてなかなか出来ないことだと思いますね。プロジェクトとして参加アーティストの作家性やクリエイションを重んじているということだと思いますし、アーティスト側は経験値とレベルを格段に上げる機会になると思っているんです。その中で、mekakusheさんは今回の楽曲で新機軸の編曲家を入れたり新たなチャレンジを実践しているので、しっかりとビジョンを描いたうえで、HEATの主旨に沿ってすごく良い予算の使い方をしたんじゃないかと個人的に感じました。
mekakushe:最初にHEATの概要をお伺いしたときに思い浮かんだのがストリングスを曲に入れるということでした。私のようなインディーズで活動しているアーティスト1人の力では、なかなか出来ないことですし、ストリングスの録音はすごくお金がかかるので、そこに予算を投じたいと考えたんです。そこでずっとお願いしたいと考えていた、室屋光一郎ストリングスというカルテット集団に知り合いの伝手を辿ってお願いして、スタジオも知り合いが紹介してくれたり助けてくれて最高の環境でストリングスを録音できるところを見つけることができて。そういう意味では今作「恋する女の子」の制作を通じて、インディーズの世界の温かさを感じることができましたし、同時にしっかりと予算をかけることができればインディーズであってもメジャー並みのことができるんだなって体感できました。
oka:しかも、mekakusheさんの個人的なご配慮で楽曲が出来ていく段階を、弾き語りのデモから編曲のデモ、完パケと聴かせていただけて。その過程が見れたのはすごく新鮮で喜ばしい体験でした。
ー普段、デモから曲が進化していく過程なんて聴けないですもんね。
oka:それもあって、すごく思い入れのある曲になりました。特にアレンジが出来上がった段階のデモを送ってもらったときなんて、少し凹む出来事のあった日でしたが、曲を聴いたお陰でブチ上がれて。早くこの感動を世の中と共有したかったので、本当にリリースが楽しみです。
ー改めて、今回のHEATに向けて制作していただいた「恋する女の子」がどんな曲なのか教えていただけますか?
mekakushe:ストリングスを基調とした編曲だけれど、しっとり壮大なバラードにはしたくなかったので、平熱感やポップネスを保ったまま、エレクトロ的なビート感を意識したり、普段の自分らしさを表現できるように配慮しましたね。ストリングスが入ることでバランス感が大きく崩れないように、mekakusheの楽曲としての在り方を意識しました。
oka:すごくわかります。今までの曲よりもビート感が現代的なテクスチャーだった気がして、そこにJ-POPが掛け合わされるように作られているので、そこも新機軸だったんじゃないですか?
mekakushe:そうですね、新しいバランス感だと思います。編曲はストリングスも綺麗にまとめてくださる釣俊輔さんという作家の方にお願いしたんですけど、釣さんだからこそ実現できるポップさがあったと思います。ストリングスのポップネスなフレーズをしっかり聴かせつつ、ビートはエレクトロでちょっとノイズっぽくというのを事前に伝えて作ってもらいました。
ー今回は初ジョイントワークだったと思うのですが、今後両者で一緒にやることなどはありますか?
oka:今回のご縁で今年の『森、道、市場』に出演していただくことが決定しています。
mekakushe:ありがとうございます。ラインナップ的にまだまだ無名の私がいていいんだろうかってくらいなんですけど、せっかくokaさんからいただいたチャンスいなので楽しみつつ頑張りたいと思います。「恋する女の子」もストリングスが入っていますけど、どうバンドアレンジしてライブでやろうかなって最近考えているんですよ。
oka:楽曲を聴いてバンドアレンジも合う編曲になっていると感じましたし、すごく楽しみにしています!
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